旧(株)丹青モールマネジメントは2016年12月、ジョーンズ ラング ラサール(以下JLL)の完全グループ会社となり、「JLLモールマネジメント(株)」として新体制になった。JLLリテールグループを含めると独立系商業PM会社では圧倒的なシェア1位となり、様々なプロジェクトを控える。JLLモールマネジメント(株)代表取締役社長の飯尾太一氏に今後の展開などを聞いた。
―― JLLの完全グループ会社となった背景は。
飯尾 旧丹青モールマネジメントは一般企業や官公庁などを主なクライアント、JLLは外資系ファンドやリートなどを得意先とし、双方の長所、弱点を補完し合えると感じた。また、旧丹青モールマネジメントは店舗で働いていた専門性の高い従業員がいるほか、セールスプロモーションのチームがあり、JLLとしてもシナジーを期待できると考えた。
―― 運営施設数は。
飯尾 常駐型が13棟、非常駐型が12棟、計25棟を展開している。SCやGMSなど様々な施設があるが、郊外型のSCが収益の多くを占める。
―― 昨今、GMSの厳しさが目立ちます。貴社の施設ではどうですか。
飯尾 衣料品、玩具などで専門店が台頭しており、厳しい状況だ。一方で、当社ではそのような施設は区画数を増やしてSC化することで、賑わいの創出を図っている。SC化によりサービスゾーン、アパレル雑貨ゾーンなどテナントミックスが発生するので、我々のプランニング力など専門性を生かせる。
―― 商業施設全体の不振も懸念されています。
飯尾 女性向けアパレルの不振やネットショッピングの普及など全国的に小売業界は厳しい。百貨店の閉鎖や縮小も報じられているが、16年は当社に都心の百貨店から運営に関する相談が来るようになった。テナントに賃貸する相談など様々で、現在具体的に提案しているものもある。
―― 最近のプロジェクトについて教えてください。
飯尾 JLLリテールグループは、2月1日から「キラリト銀座」(東京都中央区)のPMを受託した。立地柄、多くの外国人客を見込める。14年に開業した時と比べるとインバウンドの消費動向は変わっているが、やはり「世界の銀座」であり有望な立地だ。
当社は、販売促進業務を担うことになるが、同施設は中央通り沿いの一等地であるため、色々なことにチャレンジしたい。まずは各テナントの収益の向上を目指したい。また、テナント区画移動などのリニューアルに合わせて積極的に国内外へ発信していくことも検討していく。
また、実は銀座の中央通りは夜9時ごろになると多くの店舗が閉店し、通行量が減る。訪日客が夜でも利用できる飲食店や、遊べる場所の導入を検討し夜のニーズの認知度向上にも努めたい。
―― 福岡でも事業を進めるようです。
飯尾 福岡アイランドシティ地区内に建設予定の商業施設やホテルを含む複合施設に関する総合プロデュース、開発コンサルティング、ならびにテナント誘致を含む運営業務をJLLグループとして受託した。
19年に開業する計画で、400室近いホテル、免税店を含む商業施設を整備する。
同施設の事業主であるHEARTS社は福岡空港や博多駅からのバスを運行している企業だ。福岡アイランドシティ行きのバスを運行するなどしてインバウンドを集客したい。
さらに施設の目の前に国際大会に使用できる規模の総合体育館を開発している。当社は市からの要望もあって近接にMICE施設の開発も視野に入れて検討しており、今後はより多くの人が訪れる。
―― 福岡アイランドシティの商業エリアのMDは。
飯尾 福岡の商業地と言えば天神と博多が人気だが、各ビルがコンパクトにまとまっていることもあり天神から9km圏内に家具などの大型商品を扱う専門店は少ない。福岡アイランドシティは大型区画を天神エリアと比較すると低価格で賃し出し、インテリアやスーツケース・住関連商品などの大型商品を販売する店舗や、大型免税店を核としてインバウンドの集客に力を入れていく。アイランドシティは今後の訪問者、居住者の増加に対して、飲食店の供給が極端に不足している。夜もアイランドシティ、および本施設内で過ごして頂ける飲食店を集約し、大型スーパーマーケットなど地元客も集客できる店舗を誘致していく。
―― ところでPM会社としてはユニークな取り組みを始めたそうですね。
飯尾 JLLがPMを担当する「千歳アウトレットモール・レラ」で、JLLモールマネジメントがテナント空き区画の運営を始めた。16年末にオープンし、外資系の衣料品ブランドを販売している。将来的には他社が運営する施設に出店したり、別のブランドを展開する可能性もある。JLLモールマネジメントには店舗で働いていた従業員がおり、豊富な人材を活用できた。
―― 17年の抱負は。
飯尾 JLLとJLLモールマネジメントのシェアを合わせると、独立系商業PM会社のシェアとしては圧倒的な1位となる。ここをさらに確立し、2社のPM事業を合わせて30億円規模の売り上げを目指したい。
(聞き手・編集長 松本顕介/副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2181号(2017年2月21日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.218