「アミュプラザ博多」「博多阪急」「アミュエスト」「博多デイトス」などの商業施設が集積する「JR博多シティ」は九州最大のターミナルビル、博多駅の駅ビルである。同駅ビルを運営する(株)JR博多シティは、駅にとどまらず駅ソトも視野に入れる。常務取締役の小池洋輝氏に今後の展開などを聞いた。
―― JR博多シティ開業から5年が経ちました。
小池 右肩上がりで推移してきている。メーンのアミュプラザを随時リニューアルしているし、筑紫口にアミュエストをオープンするなど、開業当初からスピード感をもって取り組み、駅全体をバージョンアップしてきた。これに業績もついてきていると思う。
15年度売り上げは博多シティ全体で1000億円を超えた。内訳はアミュプラザが382億円、アミュエストおよびデイトスで151億円、残りはコンコースの売店や博多阪急で計1035億円である。
―― 16年度の見通しは。
小池 16年春にKITTE博多が開業した。あれだけの売り場が隣接して誕生したので、今期は初めてダウンを予想していたが、アミュプラザは17年1月現在で売り上げは前年比101%と過去最高の昨年を上回るペースで推移している。特に12月は過去最高の単月売上を記録した。
競合している面もあるが、集客効果も大きい。商業施設としての床面積の広がりで博多駅自体のポテンシャルはさらに高まり、入館者自体は前年比106%。まさに相乗効果だ。
また、日本郵便とJR九州がオフィスビル「JRJP博多ビル」を開発し、地下1~2階に飲食ゾーンを設け、地下1階に「駅から三〇〇歩横丁」をつくった。ここは当社の運営だ。売り上げは計画比130%で推移しており、この分が上積みされるだろう。
―― 食が充実しました。
小池 三〇〇歩横丁に出店した居酒屋「二〇加屋長介」は「中目黒高架下」にも出店した。そういう動きが福岡外食企業に多く、アジア進出も少なくない。三〇〇歩横丁ではグローバルでも戦えるブランドを集めた。福岡、九州の「食」の強さを改めて感じ、よそでも十分通用することから、このような九州の「食」テーマを今後他の商業施設にも広げても面白いだろう。
―― インバウンドについては。
小池 元々インバウンド需要を強く求めていた館ではないので、その影響はない。
―― アパレル業界の不振については。
小池 今日アパレルはダウントレンドにあるが、博多マルイがファッション比率を下げているので、その分アミュプラザや阪急で取り込めている。アミュプラザのアパレル売り上げは16年度累計で104%と好調、12月は114%とこれも過去最高の月売上を記録した。
―― 17年は外への展開が1つのテーマになりますか。
小池 新規事業部を立ち上げ、ショッピングセンター、駅ビルのノウハウをどう生かして外に展開していくかの勉強を始めている。従来型の管理運営だけにとどまらない。九州というフィールドを舞台に、いかに街中に出て行けるか。駅と離れている商店街など中小商業地で何ができるか。
―― 具体例は。
小池 佐賀県が所有している昭和初期の建物をリノベーションして、街のにぎわいをつくっていく事業を検討しているし、福岡市の旧大名小学校跡開発コンペで名乗りを上げている。外部からメンバーを招聘して、福岡という街を世界に発信できる新しい都市機能を作っていこうということを議論している。福岡市はコンパクトシティの強みがあり、住みやすい街として評価されているので、行政と連携しながら勉強している。
また、九州外の商業施設からリニューアルなどの相談が来ている。こうしたケースも検討している。
―― 「アミュ」はやりつくしたのでしょうか。
小池 常に進化していかなければならない。次の手は考えている。物販は3年定借なので、少しずつ顔を変えていく。
―― 商業施設にロボットなど新たなテクノロジーの導入機運が高まっています。
小池 当社では具体化はしていないが、中国のアリペイやアップルペイに見られるスマホ決済など、決済手段や顧客データ管理をもう一歩踏み込んでいく必要がある。加えて業界自体が問われるのがオムニチャネル。答えを出していかなければいけない。
―― デベロッパーもその対応が必要になりますか。
小池 間違いなく求められる。リアルモールのあり方や、お客様のニーズが変わってくるだろう。我々のような不動産ビジネスは売り上げに応じた家賃をいただいているが、『ここでネットで買われては困ります』というような規制はお客様にとっても不便。腰を据えて研究していかなければならない。
―― 最後に一言を。
小池 街が少しずつ広がっていることに注目している。大型開発が天神エリアを中心に動き出そうとしているが、博多も同じように競争原理が働いている。先行したのがJRJP博多ビルであり、開業から満室になっている。ライン福岡が本社を構えるなど、次世代の若い企業が博多という街を選択し集まってきており、おもしろい街になってきている。今までの博多地区になかった要素がどんどん集結しており、チャンスが広がっている。
(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2180号(2017年2月14日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.217