北欧発の雑貨「フライングタイガー」の上陸で、「低価格雑貨」ブームとなり、各社が原宿・表参道に旗艦店を構え、雑貨バトルを繰り広げてきた。この数年で多店舗化も進み、商業施設のテナントとしても常連となっている。その中のひとつが輸入雑貨卸の(株)エンポリオ(東京都江戸川区東小岩1-3-1、Tel.03-5693-0002)が運営するスペイン発の雑貨店「muy mucho(ムイムーチョ)」だ。2014年11月に原宿駅前に路面店を開業し、現在直営で6店を展開している。リブランディングも進め、業績は好調だ。代表取締役の鈴木一郎氏に今後の戦略についてお話を伺った。
―― 概要から。
鈴木 雑貨の卸を手がけてきた知見、ノウハウもあり、世界各地のオシャレで可愛いモノを紹介したいという想いがあった。やはりヨーロッパの雑貨は感度が高く、人を惹きつけるものがある。その中で、ヨーロッパ各地で約50店を展開するムイムーチョに目をつけた。ヨーロッパの家をイメージし、ホームウェア、キッチングッズ、アンティーク家具、ファッション雑貨まで幅広くラインアップする。手頃な価格でハイセンスな商品を提供している。
―― 課題もありました。
鈴木 1年くらい運営してみて、日本のマーケットに合わない部分もあると感じた。スペインと日本では、気候、生活様式などが異なるので、当然、売れる商品にも違いが出てくる。例えば、現地ではシャワーカーテンが売れ筋だが、日本ではニーズが少ない。スペインでの主力商品はキッチングッズだが、食器類は重くかさ張るので、日本では難しいと感じた。そこで、リブランディングに着手し、商品構成も見直した。
―― 具体的には。
鈴木 スペインからの商品は6割とし、自主企画の商品を増やした。特に、アクセサリー、帽子、バッグなどの服飾雑貨類を強化し、ホーム、キッチン類を50%、服飾雑貨を50%とした。ホーム、キッチン類もファッション雑貨とリンクさせることで、世界観を表現しやすくなり、購買にもつながった。例えば、バッグと同素材を使用したクッションカバーなどは非常に売れ行きが良い。また、服飾雑貨は季節感を訴求しやすいため、VMDも組みやすくなった。
―― 服飾雑貨で差別化を図っていく。
鈴木 そのとおりだ。雑貨業態の競争は熾烈で、同質化の感は否めない。ブランドの“らしさ”を出すための武器にしていきたい。
また、アパレルの出店意欲が落ち、ファッション雑貨の専門店は減ってきているため、お客様のニーズも高い。
―― 店舗展開は。
鈴木 まず若者への認知を目指し、1号店を原宿にオープンした。話題のエリアだったこともあり、メディアにも多く取り上げられた。15年は首都圏を中心に展開、16年は「博多マルイ」「セブンパークアリオ柏」「ピエリ守山」「博多天神地下街」と地方への出店も果たした。首都圏で集積を作ったことで、関西初出店のピエリ守山でも認知度は非常に高かった。ある一定のブランディングは完了したと思う。
―― 小型フォーマットを開発しました。
鈴木 今までは50坪以上で店舗展開してきたが、16年10月にオープンした「博多天神地下街店」は、面積19坪と小型だったことから、実験的に売れ筋の商品をセレクトした「プチセレクト」と「ギフト」をテーマとしたところ、非常に坪効率の良い店となった。
今後は、スペインに限らず海外で流行っている雑貨を直接買い付け、価格を抑えた「プチセレクト」商品と価格帯1000円程度のギフト商品を中心とした30坪程度の小型店でも出店していく。
―― 今後の出店は。
鈴木 地方出店も積極的に進める。17年はすでに5店の出店が決定しているが、現在交渉している物件などもあり、10店まで上積みできそうだ。小型フォーマットを開発したことで、駅ビルなどでも展開が可能となった。都心では駅ビル中心、地方では大型SCなどを考えている。20年をめどに20店を目指している。
また、当社は韓国発デザートカフェ「ソルビン」を運営しており、カフェ×雑貨をコラボさせたムイムーチョカフェの構想もある。
―― 抱負を。
鈴木 世界にはワクワク、ドキドキさせる面白い雑貨がたくさんあるが、ムイムーチョを通じて紹介していきたい。雑貨に限らず、飲食も含めて、世界で流行しているモノを日本に紹介できる企業を目指す。
当社は16年から韓国発のデザートカフェ「ソルビン」を展開しているが、これもその一環。17年中にはテイクアウト専門のイタリアの揚げピザ業態を都内にオープンする予定だ。1年に1業態ずつ新しいブランドを立ち上げ、5業態で100店の展開を目指している。
(聞き手・大塚麻衣子記者)
※商業施設新聞2180号(2017年2月14日)(5面)
商業施設の元気テナント No.211