岡山県(保健福祉部医療推進課、岡山市北区内山下2-4-6、Tel.086-224-2111)は、少子高齢化が進み社会保障制度の維持存続が問題となる中で、医療・介護制度の改革として地域医療構想を進めている。2015年度中に策定作業を終え、現在実施を進めているこの地域医療構想について、岡山県保健福祉部医療福祉課課長の則安俊明氏は、JPI特別セミナーの「岡山県が策定した《地域医療構想》における入院医療全体の強化・医療機能の分化と連携について」と題して講演した。この講演で則安氏は、地域医療構想の内容や、策定段階における関係者との合意形成プロセスなどについて語った。同セミナーを紹介する第1回は、国の医療制度改革と地域医療構想の関係、地域医療構想策定における病床機能の分化と在宅医療へのシフトなどについて紹介する。
◆医療社会保障制度見直しの背景
昨今の医療社会保険制度見直しの背景として、近年の平均寿命の増加と死亡率の低下による少子高齢化がある。社会保障費が増大し、20~64歳の現役世代が減少し負担も増加していくという状況があり、財政的な基盤も消費税増税据え置きなどで厳しくなってきている。そしてこれらを前提として、則安氏は「社会保障の安定化」とは、今の制度を手厚くしていくのではなく、余計な持ち出しを減らして制度を維持していくものだとした。
◆国の医療制度改革と地域医療構想のつながり
こうした背景を基に、現在国が進めている医療制度改革の概要を見ていく。この改革の核として掲げられている「効率的かつ質の高い医療提供体制の構築」と「地域包括ケアシステムの構築」を通して、社会保障費の適正化を図っていく方針がある。また25年の医療別必要病床数の推計結果について、高齢化などを織り込んだ必要病床予想数は152万床だが、この数字を病床の機能分化・相互連携と介護施設・在宅医療などの活用により115万~119万床程度にまで減らしていくビジョンが存在している。
このビジョンによると、高度急性期病床が13万床程度、急性期病床が40.1万床程度、回復期病床が37.5万床程度、慢性期病床が24.2万~28.5万床程度となっている。また、病床を利用する患者とは別に、29.7万~33.7万人程度を介護施設や高齢者住宅、在宅医療などで対応していく。
こうした病床の機能分化・連携を進めていく上で重要になるのが地域医療構想となる。同構想は25年に向けて、医療機能ごとに25年時点での医療需要と病床の必要量を推計し定めるもので、厚労省が作成したガイドラインを基に各都道府県が策定する。
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