リースの大手、三井住友ファイナンス&リース(株)(東京都千代田区丸の内1-3-2、Tel.03-5219-6400)は、不動産リース事業を通じて商業施設開発をサポートする。その立ち位置はあくまでも「黒子」という。同社不動産営業第一部長の山崎秀之氏に聞いた。
―― 貴社の不動産リースの概要から。
山崎 不動産営業第一部で不動産リースを扱い、二部でSPC向けのローンやエイクイティを担当している。不動産リースは借地または土地を購入したうえで建屋を建設し、所有する。リース会社はテナントありき。テナントを決めてからBTSで開発するのが基本だ。大型商業施設ではキーテナントからの依頼で、サブテナントを誘致することもある。
不動産流動化によるセールス&リースバックの引合いも多い。近年増えているのがプロ向けの「ブリッジリース」。REITやファンドが取得するまでのつなぎのリースで、IPO、POのタイミングに合わせる取得時期の調整や、ターゲットとするキャップレート水準まで償却を進めた上で譲渡する価格の調整機能が好評だ。期間としては1年ないしは2年。キャップ調整のケースは3~5年必要となる。
―― 保有期間中に市況も変わる。
山崎 「市況の変化を直に受けてリファイナンスできずに売却」というようなことがないのがリースのメリット。我々はマーケットの多少の変動ではびくともしないし、売却できなくなったとしても通常のテナント向けの不動産リースとして扱える案件を対象にしている。
―― 事業に占める形態は。
山崎 開発型が全体の4割、流動化が4割を占めるが、ブリッジ案件がシェアを拡大している。アセットタイプでは、5000億円の資産のうち6割が商業施設で、このほかにオフィスや物流施設、ホテルがある。
商業施設のトレンドは単独出店よりも複合、GMSよりもモールということになるので、核になるところと一緒に開発のお手伝いをする。大型開発では、大手デベロッパーと組むことも多い。場合によっては、キーテナントにお声掛けして当社が全体をアレンジすることもある。
―― 出店傾向は。
山崎 ドラッグ、ホームセンター業界の出店意欲が高い。店舗面積の大型化に伴い、食品売り場の占める割合が大きくなり、食品スーパーなどとのボーダレス化も顕著になっている。
―― 改めて強みは。
山崎 当社の不動産リースは25年の歴史を持つ。当社はいち早く不動産リースに特化した営業部隊を作り、ここに10年以上従事している営業部員が多い。ここが一番の強みで、それぞれがネットワークとスキルを有している。担当営業マンは、店舗開発セクションには物件情報の提供、経理財務ラインには税務会計ルールに適合したスキーム提案、経営者には株価、相続対策などのアドバイスも必要になってくる。それに対応できるスタッフが多いのは非常に強い。加えて、リスク管理の体制、ルール作りが格段に進歩した。これは営業上の足枷になることではなく、案件審議のスピードアップにつながっている。
―― ケネディクス商業REITのサポート会社になっているが。
山崎 同REITには立ち上げ時に9物件を売却した。今後も継続的な双方向の取引を考えている。私募を含め、他のREITとの協働も増えており、物件を共有するケースもある。REIT各社がお客様であるから、自らREITを立ち上げることは考えていない。
―― 今後の事業展開は。
山崎 国交省は、不動産投資市場を倍増させたいとしているが、当社は良質な物件をより円滑にマーケットに供給する役割を担うことができる。ポートフォリオをにらみつつ、開発段階を経て安定稼働した物件は、顧客の同意を得た上で、市場に出していこうと思う。
―― マーケットの状況は。
山崎 踊り場はすぐそばに来ていると実感する。リース会社の真の役割はその時。思うようにことが進まなくなった時、踊り場の局面こそリース会社の出番だ。市況が悪化したから買えなくなったということはない。あくまでも安定したインカムが入ってくるかどうかが取り組みの目線だからだ。リーマンショック時も、長期の不動産リースはデフォルトゼロであった。
不動産マーケットで、大手リース会社が主体的な役割を果たそうとする動きもあるが、我々はテナント、デベロッパーの陰で、それぞれのニーズに応える調整役として黒子に徹する。入り口、出口で大きく儲けるようなビジネスモデルではなく、安定的なインカム収入を期待しつつ、幅広いマーケットプレーヤーとのウイン・ウインの関係を重視するのが当社の考えだ。
(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2169号(2016年11月22日)(6面)