シューズメーカーの(株)ムーンスター(東京本社=東京都中央区八丁堀2-12-7、Tel.03-6385-4192)が運営する子ども靴専門店「ゲンキキッズ」は、この2年間で20店を出店し拡大基調にある。好調の理由は、足の計測結果を元にしたきめ細やかな接客で「子どもの足に合っているかどうか分からない」というパパ・ママたちの悩みに応え、安心して買い物ができる店作りを徹底している点だ。既存店売り上げも右肩上がりで、少子化の影響で縮小傾向にある国内子ども靴市場において異彩を放つ。将来的には100店体制を目指しており、今後の戦略について、執行役員 営業推進・FC事業担当の松岡英典氏にお話を伺った。
――積極出店が続きます。
松岡 2015年は10店、16年は秋冬にオープンする3店を含め10店で着地し、59店となる。06年に横浜の港北モザイクモールに1号店を出し、それから4~5年は種まきの時期が続いたが、ここ数年は認知度の拡大もあり、オファーも多く積極的な出店につながっている。やみくもに数字を拡大する計画ではないが、第一目標は中長期的に100店体制を目指している。
――業態開発したきっかけは。
松岡 当社は元々子ども靴に強いメーカーで、メーカーだからこそできることを追求した結果、直営店の開発につながった。サイズの合わない靴を履くことで幼少期から外反足、偏平足、外反母趾など、足の変形が増えており、親からは悩みを寄せられることが多く、その声に対応したいと考えていた。
また、メーカーとして子どもの足に合った正しい靴選びを啓蒙したいという想いもあった。子どもの足は年間に0.8~2cm程度伸びるため、3~4カ月に一度は靴のサイズを考える必要があるが、こういったことは意外と知られていない。店頭で得た生の情報や要望を靴作りにフィードバックし、元々の主軸である卸売り事業にも生かしている。
――強みは。
松岡 足長だけでなく、足幅、足囲を瞬時に計測できる足型計測器「フッ撮る」を導入している点。計測を経て、まず正しいサイズを知ってもらう。結果は印刷して渡すので、成長記録として保存するお客様も多い。この結果を活用し、専門知識の豊富なスタッフが正しい靴選びのアドバイスを行っている。
例えば、デザイン性の高い靴が増えているが、デザインを重視するあまり、足に合っているかどうかという重要な点がおざなりになっていたりもする。サイズが合わなくても、子どもは痛みや違和感を言葉で表すことができない。さらに、小さい靴であっても足囲が細いと履けてしまうケースなどもある。コンサルティングし、きちんとした説明をするには最低でも20分は要する。このきめ細やかな接客が信頼につながり、リピートを生んでいる。
――接客力の高さは他社に真似できない点ですね。
松岡 そのとおり。久留米本社でキッズ・シューズ・アドバイザー研修という商品研修を行っており、全スタッフが受講する。2日間におよぶ研修後、試験に合格したスタッフには認定証を発行している。認定証は店頭に貼り出し、顧客の安心感につながっている。
GMSや量販店などの自前のセルフ式の靴売り場を置くショッピングモールと一線を画しており、引き合いも多い。
――商品について。
松岡 約350SKUを揃え、ほぼ100%が当社のライセンス商品となる。子ども靴をここまで集積している店は他店にはないだろう。当店では、長さだけではなく、幅サイズのバリエーションも豊富で、高機能品もラインアップする。
エントリー層となるベビーシューズやファーストシューズの比率も高め、長くファンでいただくための品揃えも行っている。
――店舗フォーマットは。
松岡 標準店舗面積は20~25坪ほどで、子ども関連の集積のあるフロアに開店している。ベビーカーでの来店が多いため、導線を確保する必要があり、双方向から入れる区画や横へ広い区画が理想的だ。
――立地について。
松岡 子どもの需要があることが必須条件。ファミリーで来店するケースがほとんどなので、遠くからも集客できるモールや百貨店の立地にこだわっている。特に三世代で足を運んでいただける大型のモールは非常に魅力的な場所だ。今後もこういった場所を狙っていきたい。
――課題は。
松岡 全国で展開しているが、ニーズに対して都内の店舗が少ない点だ。特に山手線内に店舗はなく、いずれはこのエリアにも店舗を作っていけたらと思っている。関東や東海、関西ではある程度の店舗網を築けているが、まだ未進出のエリアも多々ある。メーカーとして正しい靴選びを啓蒙したいという原点を伝えるため、全国に店舗を作っていきたい。
――今後の展望を。
松岡 認知度の高まりもあり、年々出店ペースは上がっており、今後も同程度で出店を進めたい。店舗数も50店を超えたので、ゲンキキッズオリジナル商品の比率も高めていく。これをさらなる差別化につながる武器にしたい。
また、館内共有スペースで足型計測会を年に数回実施し、家族を含めると5000人を集客している。最近は、専門の先生を招いて「かけっこ教室」といったイベントも開始している。堅実な店づくりに「コト提案」を交えることで、新規顧客に足を運んでもらえるきっかけとなっており、100店体制につなげていきたい。
(聞き手・大塚麻衣子記者)
※商業施設新聞2162号(2016年10月4日)(5面)
商業施設の元気テナント No.203