食というシーンを通じて、良質なライフスタイルを発信し続ける、食のセレクトショップ「DEAN&DELUCA」(DD)。1977年に米・ニューヨークで誕生した同ブランドは、2003年に東京・丸の内に1号店をオープンし、現在、国内では26店を展開する。それまで、日本にはデザイン、ファッション性に長けた食ブランドは少なく、食とデザインを両立した同ブランドは、必然的に他社と差別化を図ってきた。今期からカフェ形態の出店を加速し、日本での15周年に向け、さらにブランドを進化させる計画だ。(株)ディーンアンドデルーカジャパン(東京都渋谷区神宮前2-4-11、Tel.03-5771-0460)代表取締役の横川正紀氏に今後の展開についてお話を伺った。
東京ガーデンテラス紀尾井町のカフェでは
開放的なテラス席を設けた
―― カフェの展開を進めます。
横川 DDは「マーケット大型店」「マーケット小型店」「マーケット&レストラン」「カフェ」の4形態で展開してきたが、今春はカフェ形態で新宿ニュウマン、赤坂アークヒルズ、東京ガーデンテラス紀尾井町の3店を新規出店した。これを皮切りに、20年に向けて首都圏で50店、名古屋、京都、大阪、福岡といった地方の大都市圏では20店を目指している。
なお、マーケットのあるところにカフェを出すのが原則で、まずブランドの真髄を伝えることのできるマーケット大型店を核とし、ドミナント形成していく。例えば福岡エリアでは、まず15年4月にソラリアプラザ(福岡市中央区)にエリア旗艦店となるマーケット大型店を開店。定着が見えた16年4月にマーケット小型店をアミュプラザ博多(福岡市博多区)にオープンした。今後このエリアには、マーケット小型店、カフェを数店出す予定だ。このような流れで展開していきたい。
―― カフェのフォーマットも様々です。
横川 立地や営業時間、周辺のニーズによって使い分け、30坪以下でクイックな需要に対応する「エキスプレス型」、30~50坪のカジュアルな中に居心地の良さを兼ね備えた「スタンダード型」、60坪程度でベーカリー機能を備え、上質な空間を提供する「ラウンジ型」の3形態を揃えた。主流はスタンダードタイプになるだろう。立地はターミナル駅に加え、大学や美術館、公園などのパブリックな場所も視野に入れている。首都圏で50店は一見多いように見えるが、様々なフォーマットを組み合わせることで近い商圏でも十分に成立するだろう。実際、東京ミッドタウンではカフェとマーケットが別々に店を構えているが、それぞれに使われ方も異なり、同一施設内でも成り立っている。
―― カフェ事業を分社化したのは。
横川 日本では07年までにカフェを5店出店したが、それ以来、出店は止めていた。DDのコアはグロサリーであるため、まずはブランドの世界観を伝えることができるマーケット形態に集中したためだ。なお、本国でも2000年にカフェの出店はいったん封印し、グロサリーに専念した。十分に認知度を上げ、15年にベーカリーの設備を持ったカフェをたまプラーザ(横浜市青葉区)に開店した。検証を重ね、かつ業績も好調であったため、カフェの出店を再開。よりスムーズな出店を進めるため、4月に(株)ディーンアンドデルーカカフェジャパンの立ち上げに至った。
―― 他形態の展開は。
横川 積極的にカフェを出店しつつ、もちろんマーケット形態でも広げていく。両軸での成長が基本だ。特に、ターミナル駅におけるマーケット小型店のポテンシャルはある。新宿や恵比寿などの大規模商圏に年に1店程度は出していきたい。
―― 新業態の構想もあるそうですね。
横川 マーケットは次のステージを見据え、現状の大型マーケット形態を超える「グランドマーケット」を考えている。これは、グロサリーとレストランを融合した300~500坪程度の面積を有する超大型店だ。その原型となる店舗を15年4月に開店した。福岡・天神のソラリアプラザ店はレストランやイベントスペースを併設した国内最大店で、新業態の布石となる。ここをブラッシュアップし、都心での展開も想定している。
また、以前は、都心ほど生活感度が高い傾向にあったが、世田谷や吉祥寺など、住宅エリアのある準都心も非常に感度が高く、ここではゆったりとした上質な空間を提供する、既存業態とはしつらえの異なるカフェやレストランなどの構想もある。首都圏は多様なニーズがあるので、ポテンシャルが大きい。
―― 抱負を。
横川 現状は100億円程度で9割がマーケットを占めるが、20年には200億円を目指し、カフェとマーケット事業で半々の比率にまで高めていきたい。
急速に拡大していくが、これまで同様、金太郎飴的な出店は絶対にしない。一店一店に一期一会でそれぞれに出会いがあり、引き続きそれを大切にし、量と質を両立させる。そのため、立地や形態によって店舗デザインや商品を変えるなど、よりクリエイティブな取り組みも必要になるだろう。
また、ファン層の広がりに伴い、さらに嗜好性の高い商品の比率を増やし奥行も広げ、使い方を深めていってもらいたい。
(聞き手・編集長 松本顕介/大塚麻衣子記者)
※商業施設新聞2159号(2016年9月13日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー