商業施設新聞
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第42回

京浜急行電鉄(株) 取締役 生活事業創造本部 統括管理部長 川俣幸宏氏


35年度までの経営計画策定
核は品川駅周辺の大型開発

2016/8/30

京浜急行電鉄(株) 取締役 生活事業創造本部 統括管理部長 川俣幸宏氏
 東京・品川や羽田空港から、神奈川県・三浦半島まで海沿いを走る京浜急行電鉄(株)。品川の大規模開発に参画しており、これを契機に沿線の街づくりを加速する。都心ターミナルから国際空港、そして自然・観光を切り口にどのような街づくりをするのか。京浜急行電鉄(株) 取締役 生活事業創造本部 統括管理部長 川俣幸宏氏に聞いた。

―― 貴社の事業エリアから。
 川俣 日本の玄関口の羽田空港、東京五輪やリニア中央新幹線開業で発展が見込まれる東京の南側の玄関口・品川の2つの拠点を持つ。加えて川崎、横浜、三浦半島が事業エリアとなる。

―― 中計を策定しました。
 川俣 2035年度までの経営計画を策定し、『品川・羽田を玄関口として、国内外の多くの人々が集う、豊かな沿線を実現する』を長期ビジョンとした。東京五輪、品川開発の流れに合わせ、最初の5年、次の5年、最後の10年の3つに区切り、品川の開発や羽田の基盤づくりを推進する。
 また、沿線として「行ってみよう」「住んでみよう」と言っていただくにはどう仕立てていくか。川崎、横浜やみなとみらい、港南区や金沢区など横浜南部の街づくり。そして横須賀、三浦、逗子、葉山といった三浦半島の創生が柱で、これをエリアと事業を区切って進める。併せて鉄道、バス、タクシーなども組み合わせてエリアの回遊性を考えた街づくり・街の活性化を通じて地域とともに歩み、沿線の魅力付けをしていく。これが最大の目標であり課題である。

―― 貴社最大事業と位置づける品川開発の概要は。
 川俣 国家戦略特区に指定され「グローバルゲートウェイ」とされる東京南側の玄関口にふさわしい街づくりをJRなどと連携して行う。
 品川駅の問題は東西の分断だ。さらに高架の当社の駅が分断の要因になっている。行政と連携して交通インフラ整備を行う。具体的には当社の駅を地平化し、JR線と並べるとともに、ホームを整備して2線4面とする。新幹線からJR在来線や当社線への乗り換えがわかりやすくスムーズに移動できる利便性の高いインフラ整備を行う。東西自由通路で結びバスターミナルなどの整備も行う。
 2つ目は、オフィス、ホテルや商業、住宅、MICEなどを整備する。京急グループは品川駅周辺に6万m²の土地を有しているが、まだ容積率には余裕があり、品川グースなどは最大3倍程度まで規模を拡大できる。品川駅との連続性を図りながら前述の機能を有した複合開発を実施する。

―― 羽田については。
 川俣 羽田周辺にあるグループの土地・建物を活用する。最近ではNTTグループと物流センターを開発したほか、駅ナカ商業施設「ウィングエアポート羽田」を昨年10月に開業した。
 また東京都の「都市計画事業」である「京急蒲田駅付近連続立体交差事業」により京急蒲田駅の高架化が完了、それに伴い創出した高架下を商業施設「ウィングキッチン京急蒲田」とした。今後は、ホテル「(仮称)京急EXイン羽田」の開業や羽田空港就業者向け賃貸マンションの開発、京急蒲田駅周辺で高架下開発、糀谷駅高架下開発などが控えている。平和島ではエンターテインメントを切り口にした展開なども考えられる。

―― ウィングシリーズの拡大計画は。
 川俣 久里浜、新橋、高輪、上大岡、羽田、京急蒲田、京急川崎にあり、来夏に京急鶴見に開業する。目標は定めていないが、当社の商業ブランドとして今後も展開したい。

―― 川崎の展開は。
 川俣 短期的には川崎大師の誘客がテーマだ。浅草は訪日客でオーバーフロー気味。川崎大師は羽田空港からも近いので、訪日客を呼び込みたい。その一環として商業施設とホテルを一体的に展開した京急川崎駅直結の「ウィング川崎」をオープンした。
 一方で、川崎臨海部が変貌している。研究所や物流センターの集積が進んでいる。ここへのアクセスは当社グループが担当しているし、さらには京急川崎駅北側周辺で再開発を予定しており、様々な機能を盛り込みたい。

―― みなとみらいに本社を移転します。その横浜は。
 川俣 横浜市内には京急の駅が23カ所あるし、バス網も整備済みだ。本社が移ることで横浜の企業というイメージが強くなるのではないか。また横浜駅では東口の地下街「ポルタ」から「横浜そごう」が入るビルを展開する横浜新都市センター(株)、スカイビルを運営する(株)横浜スカイビルにも出資している。みなとみらいの玄関口である横浜駅東口も将来的には整備することになり、これらの連携が見込まれる。
 さらに統合型リゾート(IR)事業の参画を検討しており、専門部門も整備している。法案可決など時間を要するが、IRが横浜に決定すれば、その波及効果は極めて大きいので、当社としても注視している。

―― 三浦半島は。
 川俣 半島西側は逗子や葉山など高級リゾートが広がり、富士山も望める。さらに漁業や農業が盛んなので、食の魅力もアピールできる。恵まれた景観を生かして、エリア全体の回遊性、そして都心に近いといった魅力をどう組み立てていくか。例えばCCRCなどで、優雅に過ごしていただくことも考えている。

―― 最後に抱負をお願いします。
 川俣 長期ビジョンを「豊かな沿線を目指す」から「実現する」に変え、具体的にやるという強い意志を示した。品川、羽田を中心にその効果を沿線に波及させる。

(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2152号(2016年7月26日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.202

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