オランダ・アムステルダム発のデニムブランド「DENHAM(デンハム)」は日本に上陸して6年、国内20店を展開する。主力のデニムは3万~5万円台で、決して安くはないが、手作業で細かい表情やディテールをつけたデニムには、多くのファンがいる。商品力に加え、長く履いてもらえる付加価値の高いサービスや接客で、買い物して終わりではなく、“買ってから始まる”仕組みを作り、右肩上がりに業績を伸ばしている。同ブランドの日本での運営を行う(株)デンハム・ジャパン(東京都目黒区青葉台1-15-1、Tel.03-3496-1086)リテール事業部 部長の橋口秀樹氏に同社の展望を伺った。
―― ブランドの歴史から。
橋口 2008年にデニム職人のジェイソン・デンハムが設立した「伝統と革新」をコンセプトに、立体裁断やダーツ処理を駆使し、高いデザイン性と履き心地の良さを両立した大人のデニムブランド。主力のデニムのほか、メンズ・レディスのカジュアルウェアまで幅広くラインアップし、現在は24カ国で販売、売上高は43億円にのぼる。日本には10年に出店し、首都圏を中心に展開してきた。構成は、メンズ7割、レディス3割で、今春からキッズラインが新しく加わった。
―― 4月から(株)ルックと提携を開始しました。
橋口 ルックは、様々な海外ブランドを手がけ、ブランドを成長させた実績と、百貨店、ファッションビルなどの商業施設との強固な信頼関係がある。また、バッグやアクセサリーなど小物類のモノづくり、ミセス分野にも定評があるので、これまで手薄だった小物類を拡充することで、コレクションを広げ、レディスも強化することで、ブランドのトータル化を図っていく。ルックの強みにデンハムの企画力・商品力をオンすることで、事業の拡大を目指す。
―― 「現場第一主義」という信念も合致しますね。
橋口 それも大きかった。当社は、店舗の声をMDに反映できる仕組みを採用するなど、現場を大切にしている。店舗スタッフだけでなく、本社の人間も積極的に店頭に立つ。CEOの根岸は常に各店を回り、つい先日も本部スタッフとともに什器の入れ替え、店頭の清掃から商品の陳列などを行った。こうやってブランドのDNAを共有することで、密度を濃くしている。求心力を失わず展開できているのは、この現場第一主義にほかならない。
―― 今春開店した「マリン&ウォーク横浜店」が話題になっています。
橋口 当社のリピートにつながる店作りの要素を詰め込んだ。1階はレディスとキッズコーナー、2階がメンズというレイアウトの2フロア構成、総面積208m²で、国内最大店となった。まず、入り口には「洗い場」を設置。「色落ち」はデニムの魅力のひとつだが、履きこんだデニムを手洗いする「ウォッシュサービス」を行う。スタッフによる洗いパフォーマンスを見ることができるだけでなく、顧客とのコミュニケーションの場所となっている。
なお、キッズコレクションを世界に先駆けて展開。キッズコーナーには子ども用のカットソーやデニムだけでなく、お絵かきテーブルやチェアなどプレイゾーンを設置し、明るくカラフルな空間に仕上げた。これが集客装置になり、ベビーカーのお客様やファミリー連れにも気軽にご利用いただいている。30~40代がターゲットだったが客層が広がった。子どもが安心して遊べる場所は同施設には少なく、差別化もできている。
―― 一番店は。
橋口 1号店は東京・代官山の路面店、都内最大店は表参道ヒルズ店、一躍知名度を上げた店といえば伊勢丹新宿店、フルコンテンツが揃う店はマリン&ウォーク横浜店。どこを一番店と表現すればいいのか難しいほどに、各店ともそれぞれの役割を持っている。店によっては、メンズ、レディスを単体、もしくは複合で展開しており、面積も様々、立地も百貨店からファッションビル、SCなど多岐にわたる。
―― フォーマットは。
橋口 シンボリックにディスプレイしたアイコンのハサミ、白を基調とした壁、木もしくはコンクリートの床に、ヴィンテージの小物や什器でアクセントを効かせる、というのが共通フォーマットだが、店ごとに個性ある店作りを行っているのも特徴だ。引き渡しからオープンするまでの間、毎日通い、自分たちの手でビルドアップを施し、図面どおりではなく、創意工夫にあふれた空間を作り上げる。現場第一主義は店作りにも表れている。
―― 目標を。
橋口 20年に50店体制とし、売り上げでは卸を合わせ40億円を目指す。主要都市に店舗を構えているが、北日本など空白エリアはまだある。現在、都内に10店弱あるが、20年のオリンピックを見据え、都内でも特色のある面白い施設があれば狙っていく。来春開業する銀座6丁目の商業施設にも出店を控えており、フルラインアップで、洗い場やデニムラボを備えた最新の店舗となる予定だ。
―― 抱負を。
橋口 当社は3つの“P”を大切にしている。ひとつはプロダクト=商品、2つ目がプレゼンテーション=店舗でどうやって面白く魅せるか、3つ目がピープル=人だ。ブランドを広め、ともに成長していくために一番重要なのは、やはり「人」。この3つの“P”を守り続けたい。
(聞き手・大塚麻衣子記者)
※商業施設新聞2151号(2016年7月19日)(5面)
商業施設の元気テナント No.195