国土交通省 住宅局 安心居住推進課長(現国土交通省住宅局住宅政策課長)の和田康紀氏が行ったJPI(日本計画研究所)主催による特別セミナー“国交省が取組む新たな「高齢者居住支援」施策”を紹介する連載2回目は、サービス付き高齢者向け住宅制度が発足して5年が経過した現在の課題と対応策について伝える。
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◆要介護の重度化対応などに課題
和田氏は、国交省や厚生労働省などがオブザーバーとなり、2014年9月に設置された「サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会」の取りまとめを報告した。
サ高住を取り巻く背景、現状と課題を整理し、今後の方向性を取りまとめたもので、現状・課題として、(1)供給状況・立地、(2)空間の質、(3)サービス、(4)運営の3点を掲げ、例えば運営面でサ高住の基本的な性格・多様性が理解されていないことや、事業者の廃業時には居住継続が図られない恐れがあることを挙げ、サービス面では将来的な入居者の要介護の重度化などへの対応に課題があるなど、とりまとめ内容の一部を説明した。
◆サ高住は「地域包括ケア」を担う存在
これらの課題を受け、高齢者の住まいと医療・介護などのサービスが適切に提供される体制の実現、サ高住を単なる住まいではなく「地域包括ケア」を担う存在として捉え、まちづくり全体の中で位置づけることを今後の方向性とした。これを踏まえて今後のサ高住は、(1)適切な立地の推進、(2)空間の質の向上、(3)サービスの質の確保・向上、(4)医療・介護サービスが利用できる地域コミュニティの形成、(5)適切な競争や選択がなされる環境の実現、(6)低所得の高齢者の住まいの確保の6点を推進する構えだ。
◆30m²以上や地域サービス併設に補助額上乗せ
これらの促進策もあり、15年度はサ高住の整備を補正予算で拡充しており、1戸あたり100万円の補助限度額を120万円、居住面積30m²以上の夫婦にも対応した住宅はさらに引き上げて135万円、既存ストックの活用には150万円と、補助額を拡充している。併設の拠点施設についても、地域サービス拠点は1000万円から1200万円に上乗せし、16年度予算ではサ高住を含めたスマートウェルネス住宅等推進事業予算に320億円を確保しており、引き続き補助の拡充を進めることとなった。16年度は、4月から各自治体の意見聴取を開始しており、市町村が関与するまちづくり施策との連携を確保する新たな取り組みを開始した。
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