住友商事(株)(東京都中央区晴海1-8-11、Tel.03-5166-5000)ビル事業部は2015年5月、東京・神田錦町で博報堂ら5社と共同開発した「テラススクエア」を開業した。住友商事はテラススクエアを皮切りに、神田錦町を中心に神田エリアで街づくりを推進する。ビル事業部神田街づくり推進チームリーダー 新規開発チームリーダー リーシング推進チームリーダーの平松潤一氏に新しい神田錦町のイメージなどを聞いた。
―― テラススクエア開業から1年。
平松 おかげさまでテナント、オフィスも満室だ。大手町と御茶ノ水の中間に位置する神田錦町はそれまで“空白地帯”だったが、テラススクエアでは緑溢れる広場やテラス席など集える機能を入れた。これにより、ここを起点に神保町駅との回遊動線が生まれた。集客力のある飲食店舗もあるので、大手町や丸の内からも来られる。少しずつだが、南北の回遊が始まってきた感触だ。
―― 電機大跡開発もあるなどエリア開発が広がる。
平松 具体化はこれからだが、大型複合ビルを建設予定で、隣接する神田警察署旧庁舎の解体工事が先ごろ完了し、着工に向けて準備中である。
また、千代田区が神田警察通り沿道を整備する。千代田区が策定した整備ガイドラインに則りながら、賑わい創出に寄与していく。
千代田区はビルを建設すると住宅を整備するルールがあるため、テラススクエアの開発時にも、内神田にマンションを開発した。現在、3棟目をつくるなど、このエリアでの住宅開発も積極的に行っている。
―― このエリアの街づくりのイメージは。
平松 神田錦町エリア開発のキーワードは、「行きたい街、住みたい街、働きたい街」。この3つのコンセプトで具体的なビジョンに落とし込み、半年くらいかけて整理していく。このエリアは“色がついていない”。ゆえに目的性のある機能が必要と考える。
―― 地域の特色が強い。
平松 小学館や集英社など出版社や、以前には博報堂といったクリエイティブな企業が集まっている歴史がある。さらに近くには毎日新聞社、読売新聞社、日本経済新聞社もある。
またこのエリアは秋葉原にも近く、アプリ開発企業が点在するが、さらに集積するポテンシャルがある。
そして息抜きにぶらりとすれば、書店や古本屋、楽器店やスポーツ店がある。さらに皇居はランニングのメッカ。食べるところも豊富だ。加えて元々喫茶店が多く、最近はサードウェーブコーヒー系が増えている。「職住近接」の点でもマンションが増えている。
サードウェーブコーヒーのイベントであるコーヒーコレクションを、近隣に店舗があるグリッチコーヒーが企画して春・秋にテラススクエアのエントランスロビーで開催し、普段このエリアに来ない層を大量に呼び込んでいる。今春のイベントでは約4000人が来場した。
―― 改めて今後の計画を。
平松 テラススクエアを含め3件の大規模開発と、マンション開発も行っている。さらに中型ビル開発も行っていて、“ぴりっとかっこいいビル”をいくつか計画中だ。大型ビルから中型まで手がける。
一方で、このエリアには古いビルが多く、1階に空き区画が多い。1階部分をリノベーションしてカフェやレストランが集まり始めている。このように自然発生的に増えてくれることに期待する。大規模開発だけでは街の良さが出ない。
―― そういう考えは米国のポートランドの街づくりと共通しています。
平松 まさに。このあたりはポートランドのパール街区と同じサイズ。クラフトビールやサードウェーブコーヒーがあり、最近米国大手シューズメーカーの日本法人が本社を移してきた。心地よい街というところでも共通点が多い。
(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2145号(2016年6月7日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.197