小田急電鉄(株)は、新宿を起点に小田急小田原線、同江ノ島線、同多摩線の3路線・計120.5kmからなる鉄道部門の運営のほか、不動産賃貸事業や開発事業などにも取り組み、沿線の価値向上を推進している。その中でも、2002年の「ビナウォーク」開業を皮切りに、神奈川県・海老名駅周辺では商業開発が活況を呈している。いずれは県央地区の中核駅となるポテンシャルを持つ同駅周辺の開発計画などを、同社生活創造事業本部 開発推進部 海老名担当 課長代理の浜田健太郎氏に聞いた。
―― 海老名駅の位置づけは。
浜田 小田急線、相鉄線、JR相模線が走る県央地区のターミナル駅で、圏央道も開通し、ますます交通利便性が向上した。駅周辺は西口を中心に新規開発の余地があり、さらなる成長が見込めるエリアだ。
また、15年4月に「長期ビジョン2020」を策定し、その中で海老名駅、新百合ヶ丘駅、藤沢駅、町田駅の4駅を「沿線中核駅」として新たに位置づけた。中でも海老名駅周辺は自社所有の土地が多いため、主体的に開発を進めることができる。直近では3月26日に特急ロマンスカーが停車するようになり、今後も様々な形で街づくりを後押ししていきたい。
―― 15年10月開業のららぽーと海老名の影響は。
浜田 当社施設については、想定よりも客足に影響はない。むしろ、ららぽーとを訪れる客により、一部飲食店部門の売り上げが増加するなど相乗効果も出ている。また、ららぽーと効果によって駅の乗降客数が大きく増加しており、街全体が開業以前よりも賑わっている。
商業施設同士で競い合うことも大切だが、それ以上にららぽーとやイオンなども含めて一体となって成長していくことが街全体の発展に必要だと考えている。
―― ビナウォークなどの改装は。
浜田 ビナウォークでは、14年にフードコートの大規模リニューアルを実施し、現在も随時テナントの入れ替えは行っている。今後は隣接する海老名中央公園やシネコンなど、ほかの商業施設にはない機能を活かし差別化を図っていく。
―― 現在進行中の駅間地区開発計画について。
浜田 駅間地区開発計画は、小田急線海老名駅とJR相模線海老名駅の両駅間に広がる事業用地約3万5000m²に、10棟・総延べ17万5000m²の規模で商業施設やマンション、サービス施設、オフィスなどを整備する大規模な計画だ。
インフラ整備は今夏には完了し、今秋から1期工事として個性的な飲食店をメーンとした商業施設、コンビニエンスストア、マンション1棟を建設する。商業施設とコンビニエンスストアは17年度中には開業する予定だ。
2期以降も、マンション2棟、サ高住やホテル、コンシェルジュを配したサービスアパートメント、フィットネス、カルチャー施設などで構成するサービス施設、オフィスなどを整備し、全体の竣工は25年度を見込んでいる。
―― 海老名駅周辺に不足していると思う機能は。
浜田 居住機能とオフィス機能が不足していると考えている。オフィス機能に関しては、核としてのオフィス機能がないのが隣の本厚木駅との違いだ。
居住機能では、駅間地区開発で高層分譲マンションや賃貸住宅を整備するが、17年度には世田谷代田駅~東北沢駅間の複々線化が完了し、新宿駅までの時間が最大12分短縮されるため、海老名に住居を構える人も増加するだろう。神奈川県央の核となるポテンシャルのある街であり、分譲マンションも今後の人口動態の変化の中で、ファミリー層だけでなく、多様な世代のニーズに対応する構成にしたいと考えている。
オフィス機能も、駅間地区計画でオフィスを整備することで、県央エリアにおける営業拠点の集積を想定している。特急停車や複々線化でアクセスは向上するため、拠点を構える企業も増える見込みだ。
―― 最後に意気込みを。
浜田 駅の東西と市の文化施設をつなぐ位置にあり、街の中心、広場としての役割を果たす駅間地区開発を実現することで、「お客さまの『かけがえのない時間』と『ゆたかなくらし』を実現する」というグループの経営理念を達成できればと考えている。
(聞き手・編集長 松本顕介/玄行力記者)
※商業施設新聞2142号(2016年5月17日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.194