電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第169回

Rappa(株) 代表取締役社長 斎藤匠氏


AI搭載の会話ロボを16年に投入
高い情報提供機能を装備

2016/5/6

Rappa(株) 代表取締役社長 斎藤匠氏
 Rappa(株)(東京都港区港南2-12-23、Tel.03-5463-6331)は、人工知能(AI)を駆使したビッグデータ解析事業を手がける(株)UBIC(東京都港区)の100%子会社として2015年9月に設立された。UBICのAI技術を活用したデジタルマーケティングなどに加え、AI搭載のコミュニケーションロボット「Kibiro(キビロ)」の開発も進めている。代表取締役社長の斎藤匠氏に話を伺った。

―― 貴社の概要から。
 斎藤 当社の親会社であるUBICは、独自のAIエンジン「KIBIT(キビット)」を活用した解析技術で、主に国際訴訟や不正調査の支援で高い成果を上げてきた。そして近年、そのキビットを別分野にも活用する取り組みを進めている。その1つとしてキビットを活用したデジタルキュレーションサービス、つまりはインターネット上の口コミやコメントなどの大量の情報をAIで解析し、利用者の好みに合った商品や店舗情報を提供する事業を開始し、その事業を専門的に行う企業として15年9月に設立したのが当社Rappaである。

―― ロボット開発の経緯は。
 斎藤 様々な実証を進めた結果、キビットを活用することで利用者の趣味・嗜好などを考慮した価値の高い情報を提供できることが証明できた。しかし、スマートフォン(スマホ)やタブレットなどの画面に解析した文字情報が表示されると、評価点数や購買・行動パターンなどで解析した従来の情報との差が見えにくく、利用者にキビットによる解析情報の価値が伝わりきれていないことも分かった。そこで情報を伝える新しいインターフェースが必要だと考えて着目したのがロボットで、コミュニケーションロボットの開発を手がけるヴイストン(株)(大阪市西淀川区)と共同で開発したのが「Kibiro(キビロ)」である。

―― キビロについて。
キビロとはスマホでもコミュニケーションが可能
キビロとはスマホでもコミュニケーションが可能
 斎藤 高さ約28.5cm、幅約14cmのロボットで、会話のやりとりや顔の識別などの基本コミュニケーションを行うほか、キビットとネットワーク経由でつながり、毎日のコミュニケーションで生み出される情報を収集し、キビロが利用者自身も気づいていない好みや感覚を日々学習する。音声認識はもちろんのこと、スマホやタブレットを使ったテキスト情報でもコミュニケーションができ、学習した情報をもとに利用者にとって最適な商品・店舗情報の提供を行う「レコメンデーション」の能力が高いロボットだ。

―― 直近の取り組みについて。
 斎藤 15年11月に製品を発表し、16年前半から公共/民間施設用向けへの展開を進めていく予定だ。現在、様々な企業からお話をいただいているが、ホテル、レストラン、書店などにまずは展開していく。これらの分野は、一般の方とコミュニケーションを取りながら、ホテル周辺の観光地の案内、おすすめのメニューや書籍の紹介など、キビロが持つレコメンデーション機能が活かせる分野だと考えている。そして16年内には一般消費者向けの販売も行っていく方針だ。

―― 開発面について。
 斎藤 特徴であるレコメンデーションの機能拡充を進めている。現在は利用者に合った情報を提供するだけだが、今後はその情報を選んだ理由などもキビロが説明するように改良する予定で、キビロが利用者に寄り添い、好みを理解したうえで情報を提示していることをより感じていただけるようにしていく。16年内の完成を目指して開発を進めており、一般消費者向けの製品にはこの機能を搭載できると思う。
 多言語対応も強化していきたい。搭載されているAIは日英韓中の4カ国語を解析できるが、キビロの音声認識は日本語しか対応していない。公共/民間施設では訪日外国人対応のニーズも高いことから、当社としてもしっかりと対応していく考えだ。

―― 搭載する電子デバイスについて。
 斎藤 AIを活用するため重要になるのはCPUで、相当の処理はクラウドで行うため必ずしも高性能である必要はないが、音声認識や音声合成など負荷がかかる作業も多い。また今後、新たなセンサーやカメラを搭載することも考えられるので、処理能力やコストパフォーマンスが高い製品に常に期待を寄せている。

―― 今後の抱負を。
 斎藤 キビロを通じて家庭、店舗・施設、そしてインターネットサイトが様々なかたちで有機的に結びつき、リアルとバーチャルが融合したプラットフォームの形成を最終的には目指している。その実現のためにも、まずはキビロの持つ性能をしっかりと市場に示し、施設や家庭向けに普及させていきたい。キビロのようなコミュニケーションロボットは20年に国内だけで年間200万台の市場になると予測されており、当社はそのなかでトップシェアを得られるように事業スピードを加速していければと思う。

(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2016年5月5日号9面 掲載)

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