東京コスモス電機(株)は、1957年に産業機器用可変抵抗器の専門メーカーとして操業を開始。76年には自動車用電装品の量産にも着手した。また、2002年には中国工場も稼働するなど、電子部品メーカーとして着実な成長の軌跡を描いてきた。主力の可変抵抗器は従来の汎用品から車載、通信機、電源、空気清浄機向けなどへと需要が変化。もう1つの主力である車載用電装品では、環境や安全対策関連で非接触センサーなどの需要が高まってきている。次代を見据えた今後の事業戦略を代表取締役社長の高橋秀実氏に伺った。
―― 15年度の業績見通しと16年度の展望について。
高橋 14年度は売上高が76億円であったが、15年度は前年度を若干下回る見込み。これは、中国や東南アジアにおける景気の減速を背景に、主力の可変抵抗器が電源向けなどで伸び悩み、また、車載用電装部品も新製品投入の端境期で減収となることが原因である。16年度に関しても、売上高は15年度比で5%程度の増収にとどまる見通しだ。
17年度以降をにらんでは、少なくとも3年間、年率10~20%の増収を計画している。すでに大型案件の内定を受けていることがその理由。過半の案件について、量産は17年度から始まるため、今年度を含む2年間は、大型案件量産対応のための研究開発、設備投資など、仕込みの時期と位置づけている。
―― 具体的な大型案件とは。
高橋 まず車載用電装部品で2製品の受注があった。1つは非接触式位置センサーで、四輪車などの吸気系や冷却系部品に組み込まれるものを中心に、開発を鋭意推進中である。同センサーは燃費改善に寄与するため、環境規制が強まるなか、需要は大きく拡大するであろう。
そして、もう1つが面状発熱体(ヒーター)である。同製品は画像センサーへの組み込み用を開発中で、事故防止強化の観点から、非接触式位置センサーとともに需要拡大が期待できる。また将来、自動運転車用に使うことを視野に入れ、開発したいと考えている。
従来の主力である可変抵抗器に関しては、無線機用などで受注を得た。当社独自開発のクリック構造の採用により、高トルクで長寿命、好感触を達成。この製品の特徴が評価され、チャネル切り替え操作用のコードスイッチやエンコーダー(商品名P, GRID)の増産に入る。また新製品として、非接触式のエンコーダーボリュームの開発にも着手した。小型半固定抵抗器は従来の電源向けに加え、車載関連や通信インフラ向けに需要が高まっているため、15年度に生産ラインを増設した。
―― 大型案件増産に向けた生産体制の構築は。
高橋 神奈川県座間市に本社機構があり、技術開発や生産管理、品質保証などのヘッドクォーターになっている。生産子会社は国内3カ所に保有している。可変抵抗器、面状発熱体、車載用電装品の生産を担うのが会津コスモス電機。ここに画像センサー用ヒーターの生産ラインを投入する。投資額は約1億8000万円。中津コスモス電機は半固定可変抵抗器の主力工場で、車載用電装部品の生産も担う。15年度に約2億5000万円を投入し、小型半固定抵抗器の生産ラインを増強した。白河コスモス電機は車載用電装部品の主力工場で、非接触センサーの大口受注を受け、15年末に専用工場と新事務棟を建設した。16年春から生産設備の導入を行い、17年より量産開始となる見込み。総投資額は約3億円である。
海外では、中国の広州と煙台に工場を持っている。広州では主に民生用可変抵抗器、煙台では車載用電装部品や面状発熱体を生産している。15年4月、新たに独資の広州東高志電子を立ち上げ、16年末には車載用電装部品の生産を開始する。燃費改善のための角度センサー関連部品であり、排ガス規制が強化される中国や東南アジアの需要増加を見込んでの投資である。
―― 総投資額の規模は。
高橋 14年度の設備投資額と研究開発費はそれぞれ4億円弱。15年度と16年度の2年間で、設備投資総額は20億円規模になる予定だ。また、投資内容は新規ライン構築のみでなく、省力化にも力を入れる。研究開発費も従来比30~40%引き上げる計画だ。
―― 積極投資に対するリスクはないのか。
高橋 量産に突入する製品群が環境対策や安全対策用途。規制を背景に、売上高が見込みを下回ることはないと判断している。また、大型案件の発注元が確定しており、そのユーザー各社が各業界においてトップクラスのメーカーであることも、リスクが低いと判断した理由である。当社技術開発部隊の士気も高まっており、17年度以降をにらんだ事業戦略は、必ず成功すると確信している。
(聞き手・松下晋司記者)
(本紙2016年2月4日号10面 掲載)