湘南ステーションビル(株)(神奈川県平塚市宝町1-1、Tel.0463-22-0236)は、湘南エリアを中心に4駅で駅ビルを展開する。一方で周辺は大型商業施設開発が活発で、顧客争奪激化が予想される。そのなかでどう存在感を発揮するのか。代表取締役社長の栗田勝氏に聞いた。
―― 貴社の概要から。
栗田 2005年に駅ビル運営3社が合併して、ブランドを「ラスカ」に統一した。「茅ヶ崎」「平塚」「小田原」で展開している。現在、当社はJR東日本と共同で熱海の駅ビルを老朽化のため建て替え工事中で、16年度に開業予定だ。
―― 昨年11月、ラスカ茅ヶ崎を増床オープンしましたが、その後は。
栗田 6900m²から1万2300m²に増床し、店舗数も132店と増えた。以前から食品を充実させており、足元商圏の来館者が多かった。リニューアル後は、小さいお子さんを連れたファミリーが増えるなど客層が広がった。また、藤沢や大船、西の平塚や大磯、北に位置する海老名駅からの来館も増えている。2km圏の足元商圏を中心にしつつも、予想以上に広域からお越しいただいている。
―― 改装のポイントは。
栗田 従前は1階に食物販を配置していたが、1階は生鮮三品と惣菜を主体としたフロアとし、和洋菓子・スイーツを一層充実させるとともに改札のある3階に移し、贈答用途などでは利便性も増した。
―― ファッションは。
栗田 ファッションは周辺の大型SCや横浜駅があるため、利便性や日常に必要なもの、加えて茅ヶ崎のライフスタイルという観点で構成し、ファッション、雑貨、または一体化したショップを中心に配置した。
―― 周辺はSC開発が過熱しています。それを見据えては。
栗田 地域の居心地のいい場所、生活の一部となる施設を目指し、カフェの充実など物販以外の機能を強化した。今春には認可保育園を開業する。また、ホールの規模を倍増し240人収容にした。多くの問い合わせや申し込みをいただいており、地域コミュニティの場として利用されるなど、我々の思いを実現できた。
―― ラスカ平塚は。
栗田 平塚は古くから商業・工業都市として発展してきたため、食料品だけでなく、ファッションも充実させ、地域ニーズに応えられる館を標榜してきた。一昨年春に、食品フロアを2段階に分けてリニューアルした。
―― 平塚エリアにもららぽーとなど大型開発の波が押し寄せています。
栗田 動向を見ながら手を入れていく。大型SCはファッションが充実するので、すみ分けを念頭に置く。一方でラスカの固定ファンも多く、こうしたニーズを大切にしながら、我々の強みである駅直結という利便性を意識していきたい。そのひとつとしてラスカ茅ヶ崎のような機能を強化する。
―― ラスカ小田原は。
栗田 小田原は観光客も多いエリア。一時期、箱根の噴火警戒レベル上昇で観光客が減少し、ラスカ小田原も影響を受けたが、警戒レベルも下がり、観光客数が戻りつつある。訪日客も増えているので、インバウンド対応にも努めていく。
―― 地下街「ハルネ小田原」について。
栗田 小田原市が事業主体となり、当社とJR東日本が開発をお手伝いし、14年11月にオープンした。また当社が小田原市からPMを受託し、施設運営を行っている。「ラスカ」「ハルネ」を中心に、駅前の商業施設の賑わい、街の顔作りを通じて、小田原の活性化に寄与したい。
―― 駅ソトは稀なケース。難しさもあるのでは。
栗田 駅のソトでPM受託事業を行うケースはJR東日本グループでは初めて。集客は駅ビルと異なるが、商業施設運営で培った強みを活かしている。ハルネ小田原は単なる商業施設ではなく、地域の情報発信機能もあわせ持っているので、観光案内所や地元店舗を集積したゾーンを展開している。こうした開発実績はラスカ茅ヶ崎にも活かされた。
―― 建設中の熱海駅ビルの施設イメージは。
栗田 熱海は国際観光都市で、しかも伊豆エリアの玄関口でもあることから、これらを意識した駅ビルづくりをしたい。
施設は3階建てで商業ゾーンは2600m²と中小規模で、土産品が中心になるが、地域に居住されている方や別荘利用も多い。この双方の需要に応えられるMDを構築していく。例えば小田原で地域の店舗を発掘したノウハウを活かしたい。
―― 最後に今後の抱負を。
栗田 今後も湘南エリアにお住まいのお客さまのライフスタイルをより豊かにしていけるような地域に密着した駅ビルづくり、駅ビル運営を続けていく方針である。
(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2127号(2016年1月26日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.184