電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第158回

東京エレクトロン(株) 社長 河合利樹氏


先端とレガシー、プロセス二極化に対応
M&A「否定はしないが慎重」

2016/2/19

東京エレクトロン(株) 社長 河合利樹氏
 東京エレクトロン(株)は2016年1月1日付で、河合利樹代表取締役副社長兼COOが東哲郎氏(現・取締役相談役)からバトンを引き継ぎ、トップを務める新体制に移行した。米アプライド マテリアルズとの経営統合が白紙になったなか、河合氏には「新生TEL」を内外に示すことが求められている。15年7月に発表された中期経営計画では、5年以内に売上高9000億円、営業利益率25%(WFE市場370億ドル想定)の達成を目標に掲げており、主力の半導体製造装置(SPE)に傾注していく姿勢を鮮明した。河合新社長に今後の方向性、16年の展望について伺った。

―― 新体制のもと組織改革に取り組んでいます。
 河合 開発、顧客対応、管理部門の三位一体のオペレーションを推進できる体制づくりを目指している。半導体産業はムーアの法則に沿って、先端では10nmを切る加工領域に突入しようとしているが、一方でIoTに代表されるように、半導体へのニーズも多様化している。こうした局面では市場にしっかりと目線を移していかなければならず、組織を見直す必要がある。

―― アカウント体制の強化もその一環ですか。
 河合 プロダクトベースのビジネスユニット(BU)はもちろん大事だ。一方で、今後の10年、20年を考えると、プロダクトに集中していたら、ビジネスモデルを変えることはできない。だからこそ、顧客の方向性をしっかりと把握するためにアカウントセールスに注力し、さらに開発生産本部の一元化も同時に進めることにした。こうしたIoTの分野などでは先端プロセスなどではなく、レガシー技術に対するニーズが強まっており、プロセスの二極化に対応した体制が求められてくる。

―― こうした分野ではポストセールスが重要になると思います。
 河合 当社のFS(フィールドサポート)BUが手がけていくことになる。当社はグローバルに5.7万台の納入実績があり、これら装置の延命化や生産性向上、アップグレードなどの要求は着実に増えている。しかし、一方で200mm対応の中古装置が不足しているという現状も徐々に表面化してきている。

―― 200mm対応装置を新規投入していく考えは。
 河合 私の頭のなかにアイデアはあるが、まだお答えすることができない。200mm装置なので、市場に投入しようと思えば、すぐできる。しかし、200mm分野はご存知のように価格的に厳しいところもあり、しっかりとしたビジネスモデルの構築が必要になってくる。

―― わかりました。16年のWFE市場の見通しを教えて下さい。
 河合 前年と同等規模を見込んでいる。DRAMは投資一巡で減少するが、フラッシュとロジック/ファンドリーがこれをカバーするかたちになる。フラッシュは3D-NANDが牽引材料になり、3D-NANDだけでみれば、前年に比べて3割程度の増加が期待できるはずだ。

―― SPEの各事業戦略について教えて下さい。
 河合 SPEに関しては、高いシェアを誇るコーター&デベロッパーをベースに、エッチャー、洗浄、ALDに引き続き注力していく。エッチャーは酸化膜用途で6割超のシェアを有しており、ロジックのパターニング用途で工程数増加の恩恵を受けて、まだまだ上昇余地は残っていると思っている。ポリエッチは3D-NAND向けに高生産性エッチャーを投入して、シェアを取っていくつもりだ。

―― 今年、来年からポリエッチのシェア上昇が期待できますか。
 河合 3D-NAND向けに関しては、今年というよりも、次の世代でPOR(Process of Record)を取れているという状況だ。PORの獲得数が将来のシェアを決めるので、ポリエッチに関しては4~5年後のところに照準を合わせている。

―― 洗浄装置は。
 河合 枚葉洗浄装置は15年のシェアが確実に数ポイント上がっており、16年ももう一段の上昇が見込める。メモリー、ロジック、ファンドリーと主要分野すべてに入り込むことができており、25~30%のシェアも見えてきた。

―― SPEのなかで欠けている製品群はありますか。
 河合 考え方として、SAM(Served Available Market)を広げることが重要で、プロダクト目線になってしまうとSAMを広げにくくなってしまう。組織体制を見直したのも、こうした狙いがあってのことだ。

―― SAMを広げる手段としてM&Aも選択肢の1つです。
 河合 M&Aについては、否定はしないが慎重だ。技術革新を行っていくなかで、ボトルネックになりそうなところにニーズがある。そこに当社の技術を持ち寄って期待値以上のものを提供していくのが基本的な考え方で、そのなかで補完し合えるものがあれば、M&Aも選択肢の1つだ。ただ単純に足りないから買ってしまおう、ということは絶対にしない。


(聞き手・編集長 津村明宏/副編集長 稲葉雅巳)
(本紙2016年2月18日号1面 掲載)

サイト内検索