電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第156回

(株)村田製作所 代表取締役社長 村田恒夫氏


18年まで年5~10%成長
スマホ向け部品需要は拡大続く
車載/医療/IoTを強化

2016/2/5

(株)村田製作所 代表取締役社長 村田恒夫氏
 (株)村田製作所(京都府長岡京市東神足1-10-1、Tel.075-951-9111)は、2018年度までの中期目標を明らかにした。売上高の年5~10%成長の持続、営業利益率20%達成などの数値目標を掲げている。市場としてはスマートフォン(スマホ)の高機能化にフォーカスするとともに、車載分野など新市場の拡大を目指す。今後の市場の見通しや事業戦略について、村田恒夫社長に話を聞いた。

―― 中国スマホ市場の鈍化が懸念されていますが、今後をどう見ていますか。
 村田 中国スマホ市場におけるLTE比率は、14年の30%から15年は60%に拡大すると見込まれている。これは予想を上回るスピードだ。3モードから5モードへのシフトも進んでいる。これに伴い、最先端積層セラミックコンデンサー(MLCC)、SAWデバイスや通信モジュールなどの高付加価値部品の需要は今後も高まると予想される。
 また、中国スマホメーカーはインドや東南アジアへの輸出を伸ばしており、それらの市場における端末のハイエンド化も進んでいる。中国国内市場だけに関して言えば台数の成長率は鈍化しているが、全体的には拡大が続くと見ている。
 当社はこれらのハイエンドスマホのニーズに対応した高付加価値部品の供給により、スマホ向け売り上げの拡大を図っていく。

―― 車載市場向けの売り上げが成長を続けています。
 村田 近年の自動車の電装化進展が追い風になっている。ここ5年間、車載向けは年率10%以上の成長を続けており、売上高は倍増した。パワートレインや情報通信、走行安全、制御の各用途において電子化が進み、ECU搭載数が増加している。今後は燃費および排ガス規制の強化によってエンジン回りのECU数がさらに増大し、高信頼性MLCC、ノイズ対策部品、インダクターの需要拡大が見込まれる。
 また、安全運転支援機能の拡充によるセンサー需要の増加や、次世代交通通信システムの実現による通信用デバイス、モジュール需要の立ち上がりにも期待している。

―― 医療・ヘルスケアやIoTに向けた取り組みも進めている。
 村田 医療分野では低侵襲(身体を傷つけることを低減)およびネットワーク化がトレンドになっており、当社の小型化、通信、センシング技術を活用する。インプラント医療機器用のMLCCや、心弾動検知用のワイヤレスベッドセンサーを製品化している。
 IoT市場は20年に500億台規模に拡大するとされているが、まとまった需要としてとらえることが難しく、「価値」が明白に定まっていない。当社は幅広い規格に対応した無線通信モジュールをラインアップするとともに、ファームウエア、ゲートウェイを含めたトータルでのサポート体制に強みを持っている。この強みを活かし、今後様々な産業分野で立ち上がるIoT関連のニーズに対応し、事業拡大を図っていく。

―― 設備投資計画について教えて下さい。
 村田 15年度は1500億円を計画している。MLCCとSAWデバイスを中心に生産能力を増強する。福井村田製作所(福井県越前市)でMLCCの新生産棟を建設し、15年9月に完成させた。また、15年には出雲村田製作所(島根県出雲市)でもMLCCの新生産棟建設に着手し、16年秋にかけて2棟を建設する。15年11月には、金沢村田製作所(福井県白山市)で新棟建設に着工した。SAWデバイスやセンサーの生産能力を増強する。16年度の具体的な投資計画は未定だが、年率5~10%の成長に向けて必要な供給能力を確保するため高水準の投資を行う方針だ。

―― 近年、積極的にM&Aを実施されましたが、今後の方向性を。
 村田 12年度にルネサス エレクトロニクスのPA事業を買収、13年度に水晶デバイスの東京電波の完全子会社化、コイルの東光の連結子会社化などを実施した。14年度には半導体RF部品メーカーの米ペレグリンを買収した。
 今後も自社で保有していない技術や市場の獲得を視野に、M&Aを進めていく。例えば、医療・ヘルスケア分野に進出するうえでの地盤となる販売チャネルなどが候補として挙げられる。技術面において必要になるのは、パワーエレクトロニクスだ。エネルギー分野において事業の柱を立てたいと考えているが、そのために不可欠な技術だ。自社開発だけでなく、M&Aを視野に入れて獲得を目指す。

―― 中期経営目標の詳細を教えて下さい。
 村田 売上高は18年度までに年率5~10%の持続的成長を目標とする。営業利益率は20%以上、新商品売上高比率は40%以上の達成をそれぞれ掲げている。営業利益率、新商品売上高比率はどちらもすでに達成している数値だが、18年度まで継続して維持することを目指す。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉/中村剛記者)
(本紙2016年2月4日号1面 掲載)

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