商業施設新聞
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第3回

京王電鉄(株) 常務取締役開発企画部長 仲岡一紀氏


調布駅前で大型商業を開発
将来は新宿周辺の再整備も

2015/11/17

京王電鉄(株) 常務取締役開発企画部長 仲岡一紀氏
―― 調布駅前で大型開発を計画しています。
 仲岡 3年前に駅舎を地下化しており、駅跡地に商業施設を開発する。これから建設を始め、2017年度に完成する計画だ。駅前広場を挟んで東西に分かれる敷地に設置し、3つの敷地で構成する施設となる。東西でどのように連携をとっていくかがポイントになるだろう。
 実は調布駅は当社の主要駅の一つでありながら、駅周辺には京王グループの店舗が少なく、当社にとって満を持しての開発となる。

―― 調布駅周辺はどのような街ですか。
 仲岡 調布駅は、当社の駅の中でも乗降客、乗り換え客の数が多い。また、周辺にはオフィス、大学などがあるため、昼間の人口も多いのが特徴だ。周辺住民は所得の高い方が多く、魅力的な商圏だ。
 さらにエリアとして味の素スタジアム、深大寺、映画の撮影所など様々なコンテンツがある。街としてポテンシャルが高い。一方でこれらコンテンツはまだまだ認知度が足りない。言われてから「そういえば調布にあったね」と気づく方も多い。調布駅の商業施設開発ではこれらの魅力を発信したい。

―― どのような施設になりそうでしょうか。
 仲岡 テナントの目玉はシネコンだ。これまで調布周辺にはシネコンがなかったが、11スクリーン・2100席程度のシネコンを導入する。調布は古くから映画の街としての側面があり、エリアの魅力の発信にも一役買ってくれるだろう。
 その他の業態では、日常の生活に利用できつつも、高感度な商材を揃えたい。基本的に、調布駅の施設では日々の生活が楽しくなるような業態を入れたい。また、調布市が鉄道跡地に緑道を整備する計画がある。

―― 高尾山口でも新しい施設を開発します。
 岡 高尾山口駅の隣接地に温泉施設を作っており、10月下旬にオープンする。この施設により登山客が少ない時期でもより多くの方に訪れていただけるエリアにしたい。また、登山客だけでなく、地域の方々にも使っていただけるようにしたい。

―― 高尾山口駅は駅舎を改装しました。
 仲岡 隈研吾さんのデザインで4月に駅舎をリニューアルオープンした。高尾山はミシュランガイドで3つ星を獲得したこともあり、ここ数年非常に盛り上がっている。国内外から訪れる人が増えており、10年前と比べて登山客は倍増した。
 さらに、八王子市は「TAKAO599MUSEUM」という観光拠点を作っており、市としてもエリアを活性化している。高尾山エリアは全国各地の桜がある多摩森林科学園、キャンプ場など多くのコンテンツがある。こちらもエリアの魅力を積極的に発信していきたい。

―― 中長期では新宿駅周辺の開発構想も盛り込んでいます。
 仲岡 新宿駅エリアは様々な開発構想を進めている。動き出すのはまだ先の話になるが、現在の新宿駅は車社会を前提とした作りになっているが、これからは人に優しく、回遊することが楽しめるような街にしたい。
 新宿駅は1日約350万人の乗降客がいる世界一の駅だが、最近は渋谷の再開発や大丸有エリア(大手町、丸の内、有楽町エリア)が脚光を浴びており、少し新宿の影が薄くなっている。新宿はインバウンドの宿泊が非常に多く、中央環状線が開通したことで羽田空港のアクセスが改善するなど伸びしろがある街だ。他の鉄道事業者と連携した上で、エリア一体を盛り上げていき、地域間競争に勝ち抜いていきたい。

―― 新宿エリアは本当にインバウンドが目立ちます。
 仲岡 当社も西口方面にある京王百貨店や京王プラザホテルで恩恵を受けている。特に京王プラザホテルは約1500室あるうち、10年ごろまでは外国人の宿泊率は60%程度だったが、最近は80%を超えている。インバウンドの戦略は会社全体で進めていきたい。

―― ホテル事業としての開発も計画しています。
 仲岡 インバウンドの効果もあって有望な市場であり、開発を進めている。今年7月には東京・赤坂で宿泊特化型の「京王プレッソイン」を開業したが、17年夏には東京・八重洲、17年冬には東京・浜松町で京王プレッソインを開業する。京王プレッソインはおおよそ250室程度のホテルであり、京王プラザホテルのような大型シティホテルよりも開発がしやすい。浜松町の開業で11施設、計2800室程度となり、3000室体制を目指している。
 今後はホステルのような新業態などメニューを増やして展開していく。ただ、ホテル事業は景気の影響を受けやすい。拡大路線にはあるが、慎重に動向を見極めたいと思う。

―― 中長期的には京王線(笹塚駅~仙川駅間)の連続立体交差事業も計画しています。
 仲岡 踏み切りがなくなることで渋滞の解消につながるほか、追い越し用の路線を増やし、柔軟なダイヤ設定ができるようになる。さらに高架下を利用した施設を作り、街を元気にすることも可能だろう。具体的な構想はこれからだが、当社はこれまで高架下を活用した施設を多く開発しているので、様々な取り組みをしていきたい。

(聞き手・副編集長 高橋直也)

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