京阪ホールディングス(株)の100%子会社である(株)京阪流通システムズは、京阪沿線内外で5つの商業施設(京阪シティモール、京阪モール、枚方モール、くずはモール、京都タワーサンド)を運営し、20件超のプロパティマネジメントを手がける。テナントリーシングはほぼ自社で行い、リニューアルすることに強みを持つ同社は、個性溢れるショッピングセンターを作ることに注力する。今回は成長推進室の副室長を務める林英生氏に話を聞いた。
―― 成長推進室の役割について。
林 元々は営業本部だったが、3年前に新しく設立され、現在は全社の経営方針を策定するとともに、5つの商業施設を様々な面でサポートする立場にある。これまでは各施設の館長が定点観測やテナントリーシングを行ってきたが、組織としての仕組みを作るために結成された。成長推進室では既存施設の定点観測、テナントリーシング、沿線外の商業活性化の3つに取り組んでいる。
―― 5施設の近況は。
林 2025年度は総じて売り上げが好調に推移しており、特にくずはモールと京阪シティモールが数字を牽引している。くずはモールは23~24年に改装を実施し、非飲食に代わり、飲食や食物販が集積する環境を作った。目的型のテナントを増やし、それが定着したことで利用頻度が高まった。特に映画のヒット作が多く、シネコンが活況を呈したのに加え、シネコン利用者が飲食店や食物販店を訪れたため、相乗効果を生み出した。また、樟葉駅前広場活性化協議会を立ち上げて実証実験を繰り返すことにより、24年5月に天然の芝生広場「ハピネスパーク KUZUHA グラススクエア」が供用を開始し、クリスマスマーケットやくずは夜市ヨイノクチなどの盛り上がるイベントを実施したのも、集客に大きく貢献した。
―― 京阪シティモールは。
林 当初はオフィスワーカー向けのMDを組んでいたが、コンセプトを一新し、SCを都心で縦積みにしたMDを構築した。その例が2階に導入した「アカチャンホンポ」である。コロナ前から近隣にマンションが増加していたが、アカチャンホンポを入れたことで、ニューファミリー層を取り込めた。これで施設の集客力が増し、25年には同じ2階に「マツモトキヨシ」と「3COINS+plus」の誘致に成功している。
―― 施設づくりの考え方について。
林 当社は沿線の街を活性化するためにシンボルとなる商業施設を作っている。開発にあたっては個性が際立つようなブランディングを実施し、テナントリーシングはほぼ自社で行う。過去に実施したくずはモールの改装では、ダイニングストリートにSC初出店の「鶏soba座銀」や「牛萬」など評判の高い店舗を誘致し、成功したこともある。当社は昔から「ホークスタウンモール」や「BIGHOPガーデンモール印西」など様々なPM案件を手がけ、既存施設のリニューアルに強みを持つ。この既存施設やPMで培ったノウハウを生かし、それぞれの個性を発揮しつつ、街の思いや要素を加えていく、これが当社の施設づくりとなる。
―― 最近の顧客動向を。
林 コロナ禍を経て、ECの普及などにより、顧客の買い物の仕方が大きく変化した。商業施設は買い物をする場からタッチポイントを構築する場へと移り変わっており、行政機能や銀行といったライフライン系のテナントも包含し、街にとって必要な機能を付加していく。具体例として、くずはモールではハナノモール3階に「りそな!n」を導入し、枚方モールでは5階に行政のサービス機能や図書館を配置するなどの取り組みを行った。
―― 注目するテナントは。
林 サービス業態は顧客とのタッチポイントを増やす意味でも、住民が必要な街の機能としても、物販や飲食に代わる業態として注目している。このサービス業態に加え、フードコートのあり方も再検討しなければならない。工場機能を併設したような飲食店や食物販店など、シズル感を出すテナントも貴重だ。リアルの体験価値として、飲食機能の見せ方にはまだまだ可能性があると思う。
―― PM事業は。
林 かなりのスキルを要求されるため、それに見合う人材が必要だ。現在、PM事業の受託件数は20件超で、今後も受託を拡大していきたい。当社は24年に「ゼスト御池地下街」のPM業務を受託したが、同地下街は現在空き区画がゼロで、施設売上高も前年度比10%増と好調に推移している。
―― 今後の展望を。
林 新規開発では京阪ホールディングスが推進する「(仮称)三条駅周辺プロジェクト」がある。既存の施設も近年での改装は考えていないが、京阪モールは老朽化が著しく、今後建て替えや拡張が必要になるだろう。
当社は数ある商業デベの中でも、街づくりの一環で商業開発に取り組んでいる。街を活性化するためのお手伝いとして、沿線に個性溢れるSCを作ることが当社の使命でもある。鉄道会社の沿線を活性化する意義は変わらないが、京都タワーサンドのように、観光地における商業開発も今後ノウハウを蓄積させていきたい。
(聞き手・副編集長 岡田光)
商業施設新聞2638号(2026年3月17日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.474