商業施設新聞
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第528回

(株)温故知新 代表取締役 松山知樹氏


地域の良さを生かす施設展開
31年に40施設体制構築へ

2026/6/30

(株)温故知新 代表取締役 松山知樹氏
 (株)温故知新(東京都新宿区)は、「他社がやっていないことをやる」と、「ローカルの良さを伝える」ことをモットーに、全国で個性的な宿泊施設を展開している。施設は今後も増やす方針で、2031年に40施設体制の構築を目指しているという。ホテル開発におけるこだわりなどを、同社代表取締役の松山知樹氏に聞いた。

―― 貴社の概要から。
 松山 当社は11年に創業し、15年から宿泊施設の運営事業へ本格的に参入した。地域の個性を生かした施設開発を心がけており、2月時点で宿泊施設11施設とレストラン4店を運営する。ホテルブランドは、「RETREAT SELECTION(リトリートセレクション)」「CRAFT SELECTION(クラフトセレクション)」「GATEWAY SELECTION(ゲートウェイセレクション)」の3つに分類している。
 RETREAT SELECTIONは、非日常的な空間で心身ともに充電できる空間をテーマに設計する。CRAFT SELECTIONは、職人に焦点を当てて、職人のこだわりを再発見してもらうことを主眼に開発している。GATEWAY SELECTIONは、ホテルを地域の玄関口であると位置づけ、ホテル内でその地域ならではの体験の提供や、お客様にホテルを拠点に街を散策してもらい、その地域を堪能してもらうことをテーマに整備している。
 これらのブランドカテゴリーは、お客様がそれぞれの施設に期待できる体験をあらかじめイメージしやすくするための整理だ。価格帯だけでなく、旅のスタイルや目的に応じて最適な施設を選んでいただけるよう、カテゴリーを設けている。全体としては「旅の目的地となる宿をつくる」ということをモットーに開発している。その結果、今までその地域を訪れたことがなかった人を呼び寄せ、地域活性化につながる。宿泊施設の開発を通じて、地域に新たな人の流れを生み出すことも目指している。

―― 個性的なコンセプトのホテルも多いですね。
玉野競輪場に併設した「KEIRIN HOTEL10 by 温故知新」
玉野競輪場に併設した「KEIRIN HOTEL10 by 温故知新」
 松山 岡山県玉野市にある「KEIRIN HOTEL10 by 温故知新」は、玉野競輪場に併設したホテルで、世界で唯一無二の施設になるだろうと思い開発した。競輪ファンや試合があるときは、選手たちの宿舎としても稼働する。ただ運営してみると、競輪ファンにとどまらない集客を模索する中で、子どもたちに自転車の楽しさを伝える体験プログラムなどを通じ、幅広い層へ競技を身近に感じてもらえる取り組みを行っている。
 大阪市の心斎橋エリアでは11のシャンパンメゾンと提携し、それぞれのフロアをデザインした、「Cuvee J2 Hotel Osaka by 温故知新」をオープンした。通称シャンパンホテルの名で親しまれており、ここはシャンパンが好きなお客様に加え、心斎橋エリアという立地からインバウンドの人々やデザインホテルと捉えて利用してくれるお客様もおり、シャンパンに関係なく幅広い層を取り込めている。

―― 新規出店で意識していることは。
 松山 他社がやっていないことをやるというのが当社の基本的な考え方だ。新規出店の際は競合調査を行い、同様のコンセプトの施設がないことを確認した上で開発を進める。個性的なコンセプトはあくまで入り口だが、人々に興味や関心を持たせることができる。その結果、雑誌などのメディアに取り上げられ、シャンパンや競輪に関する趣味の有無にかかわらず、幅広い層に施設を認知・利用してもらえるようになる。

―― 25年には野村不動産との資本業務提携を発表されました。
 松山 収益力強化策の一環として、野村不動産と共同でホテル開発案件に出資し、所有者としての利益も取り込みながら、運営事業以外での成長も図っていく。不動産投資の知見と信用力を持つ野村不動産とパートナーシップを結ぶことで、開発の質とスピードをさらに高められると判断し、今回の資本業務提携に至った。

―― 今後の展開について。
 松山 31年時点で宿泊施設のみで40施設体制の構築を目指しているので、年間5施設ペースで拡大を図っていく。26年は熊本県南阿蘇村で新規出店を予定する。そのほか、愛知県の知多半島や京都、長野県小諸市や軽井沢町、富山県の高岡市での新設も計画している。
 日本では近年、外資系ラグジュアリーホテルが増えている。ローカルの良さを伝えていくということがラグジュアリー系宿泊施設の役割のひとつだとしたら、外資系よりも日本のプレイヤーがきちんと伝えるほうが望ましいと思う。当社は今後も、各地域の人々と協力しながら、ローカルの良さや価値を提供する施設開発にチャレンジしていくつもりだ。


(聞き手・北田啓貴記者)
商業施設新聞2644号(2026年4月28日)(7面)

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