電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第658回

「上ぶれ余地大きい」26年度の国内半導体製造装置業界


足元の装置受注は高水準

2026/6/19

 半導体製造装置業界は先端プロセスを中心とするグローバル半導体メーカーの投資拡大を受けて、活況が続く。2026年だけでなく、27~28年についても顧客の投資フォーキャストの確度が高まっており、業界内では、「この需要増にどう応えていくか」といった供給面での話題が目立つ。

 こうしたなか、半導体製造装置国内主要各社の2026年度業績予想は、増収率として2割台の企業が目立つ。TSMCの先端ロジック投資ならびに需給の逼迫が続くDRAMへの投資が牽引役となる。26年(暦年)のWFE(Wafer Fab Equipment)市場予想が前年比15~25%増の水準と見込まれるなか、各社業績予想もこれに沿ったものとなるが、足元の受注水準から下期(26年10月~27年3月)は売上高の上ぶれ余地が多く残されているとみられており、今後の決算発表では上方修正が十分期待できる環境にあるといえそうだ。

 26年の半導体設備投資は、TSMCの先端ロジック投資とDRAMの積極投資に支えられて、WFEベースで前年比20%前後の成長、実額ベースで1400億~1500億ドルの市場規模が想定されている。TSMCは26年通年の設備投資計画として540億~560億ドルの投資を計画。3nm世代の需要がAI半導体を中心に好調で、台湾に加えて日米で新ファブ投資を行っている。また、並行してCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)をはじめとする先端パッケージ分野への投資も積極的に行っていく。

 DRAMは周知のとおり、データセンター向けでの需要の急増に伴い、クリーンルーム(CR)を含めて生産が逼迫。サムスン、SKハイニックス、マイクロンの大手3社が各地で新規投資を進めている状況だ。サムスンは平澤第4工場(P4)、SKは清州の「M15X」の新棟立ち上げを進めるほか、マイクロンは本社のあるボイジで「ID1」の建設を進めている。

 一方、NANDフラッシュは足元で推論シフトに伴い需要が急拡大しているものの、設備投資に関してはDRAMほどの勢いがない。韓国2社がDRAM投資に傾注しているため、新設CRをDRAMに割り当てる方針をとっていることも影響する。専業のキオクシアも四日市や北上などの遊休フロアに製造装置の導入を進めるが、期待したほど投資額が増えていないのが実態だ。キオクシアは26年度設備投資額として約4500億円を計画、26~28年度の向こう3年間の年平均投資額も約4700億円とDRAMに比べると小規模なものと言わざるを得ない。

■下期の動向ポイントに

 26年度決算を見るうえでポイントとなりそうなのが、下期の動向だ。前工程主要各社では26年1~3月期における受注高が想定以上に好調で、これが期中に売り上げにつながれば通期売上高の上方修正が行われる可能性が高い。

 SCREENは1~3月期のSPE(半導体製造装置)の受注高が四半期ベースで過去最高を記録。KOKUSAIも1~3月期受注高が1040億円と、通期受注高は想定から300億円程度上ぶれた。同社の場合は下期売上高が上期比で減収の予想となっているが、1~3月期の受注実績を勘案すると、下期売上高のアップサイドは十分期待してよい状況といえる。

 国内最大手の東京エレクトロンは今回初めて通期予想の開示を取りやめて、上期のみの業績開示を行った。上期売上高は25年度下期比24%増の1兆5700億円を予想。下期は非開示ながらも上期比で増収を想定しており、通期売上高は3兆円を優に超える見通しだ。同社もSCREENやKOKUSAI同様に1~3月期の受注は高い水準であったことが予想され、下期の力強い見通しにつながっている。

レーザーテックは受注予想引き上げ
レーザーテックは受注予想引き上げ
 前工程関連では、マスク・ブランクス検査装置などを手がけるレーザーテックの復調が印象的だった。26年度(26年6月期)通期の受注高が2000億~2400億円になるとして、従来予想を引き上げた。ACTISなどアクティニック検査装置の引き合いなどが増えた。26年度第2四半期(25年10~12月)決算発表時点で、26年度通期の受注高を1700億~2200億円と想定していたが、今回これを引き上げた。

 TSMCを除くロジックメーカーの業績不振、DRAM分野での導入先送りなどが重なり、業界全体のEUV投資に対するトーンも低下していたが、ここにきて風向きが変化。N3需要拡大を背景としたTSMCの大型投資、さらにはDRAMもEUV導入によって、現在供給制約の要因となっているクリーンルームのフロアを有効活用できる(ArFマルチパターニングの場合、初期投資は安価で済むが、必要な装置台数が増えてフロアの占有面積が増える)ため、DRAM勢のEUV導入に対するハードルがかなり低くなっている。

 実際、DRAMメーカーは需給逼迫に伴い価格高騰によって、驚異的な利益率を足元で達成。EUV投資に対する負担も昔に比べて重荷に感じておらず、マイクロンも直近の決算で「DRAMスケーリングにおいて、(EUVが)CRのスペース効率最適化に貢献できる」と言及。EUVへの投資を積極的に行っていく姿勢を示している。

■先端後工程も成長ドライバー

 先端後工程分野も引き続き、各社における成長ドライバーとなっている。CoWoSをはじめとする先端チップレットを筆頭に、足元ではパネルレベルパッケージに向けた投資が拡大基調にある。東京エレクトロンは25年度に先端パッケージング部門(ボンダー、プローバーなどで構成)で売上高2000億円以上を達成。26年度は前年度比60%以上の増収を見込む。芝浦メカトロニクスは、先端パッケージ向けFCボンダーで26年度に売上高340億円(前年度実績266億円)と高い増収幅を計画。

 ディスコは例年、通期ガイダンスを公表していないが、直近の4~6月期出荷高見通しは、前四半期比9%増の1320億円と引き続き過去最高の更新を見込む。生産工場もフル操業が続いており、同社では主力拠点の桑畑工場(広島県呉市)に対して、他拠点からの人員派遣を通じた製造支援を現在進めている。

アドバンテストは26年度に売り上げ1.4兆円計画
アドバンテストは26年度に売り上げ1.4兆円計画
 パッケージング分野同様に、テスト分野もAI半導体でのニーズ拡大を受けて、高い成長を見込む。25年度に売上高1兆円を突破したアドバンテストは26年度に売上高1.4兆円(前年度比26%増)を計画。GPU大手のエヌビディア向けを主力に、26年度からはハイパースケーラー向けASIC向けのテスター投資も貢献度が高くなっている。


 東京精密も、高精度温度制御技術などを搭載した高性能プローバーなどが牽引役となり、26年度(27年3月期)通期業績のうち、半導体製造装置は売上高が前年度比11%増の1415億円を見込む。旺盛な装置需要を受けて、プローバーの主力生産拠点となっている飯能工場(埼玉県飯能市)では、非常に高い稼働率をキープしている。短期的な対応として、既存の八王子工場や土浦工場の敷地を活用することで出荷対応を強化。中期的には、飯能工場に隣接した用地の活用も視野に入れる。部材保管などの倉庫機能だけでなく、一部の基幹部品の生産・出荷が行える建屋の建設を目指しており、27年の稼働開始を目指す。

 中国投資が一服するなか、26年度はグローバル半導体メーカーを中心とした先端プロセス投資の比重が高まる。27年度も今のところ、高い成長が見込まれるなか、製造装置各社は今後の需要を見据えた生産、そして調達体制の整備が強く求められることになる。

電子デバイス産業新聞 編集長 稲葉雅巳

サイト内検索