(株)マザーハウス(東京都台東区)は、アジアの発展途上国を舞台にものづくりを行い、バッグやシューズなどの革製品をはじめ、アパレルなど、ファッションアイテムを展開する。3月で設立20周年を迎え、店舗数は50店を超えた。業績も伸び続けており、デベロッパーからはサステナブルなだけでなく、商品などブランドそのものの評価が高まっているという。今後も空港隣接の商業施設などで出店計画があり、事業は拡大しそうだ。代表取締役副社長の山崎大祐氏に話を聞いた。
―― 店舗数や、売り上げなど足元の状況は。
山崎 店舗数はジュエリーやフード、メンズの各専門店を含め、国内49店、海外7店の計56店を展開している。店舗形態は、路面店、SC内、百貨店内がそれぞれ3分の1ほどの割合。坪数も7坪から80坪超まで幅広く、店舗によって客層は大きく異なる。来店される世代は20代から50代までまんべんなく、男性も4割ほどいる。
業績は設立時から伸び続けており、客数・客単価も伸びている。コロナ禍での初の減収を除けば右肩上がりだ。インバウンドも増えており、売り上げの約20%を占める。ほぼすべての店舗に英語対応が可能なスタッフがいるほか、京都、銀座、新宿などインバウンドが多いエリアに出店していることが要因だろう。
また海外店舗も直営店のため、日本で購入した商品を台湾やシンガポールなどの店舗でメンテナンスできることも訪日客を取り込めている要因だと思う。
商品面では、バッグやシューズ、動物モチーフの革小物が牽引している。バッグ一辺倒だけではなく、MDに幅を持たせ、高成長している商品を前面に出しながら成長を保っている。
―― 年間出店数はどの程度でしょうか。
山崎 多くても年間6店程度。自社工場で商品を作っているため、生産規模に合わせて出店している。客層面での出店条件は設けていないが、単価が安い場所には出店しない方針だ。
また、同じような店をコピーしたくない思いがあり、商業施設1つ1つとしっかり話し合い、こだわって出店している。そのため、横展開している商業施設にはほとんど出店しておらず、横浜ベイクォーターなど、固有の名前を持つような施設に出店する傾向がある。
―― デベロッパーから期待されている点は。
山崎 昔はサステナビリティなどの社会性を期待されていたが、今ではそのような取り組みは多くの企業が行っており、現在は中価格帯の国内系雑貨ブランドとして、商品を含めてブランド自体の期待が高まっている。成田空港に出店した2店は大成功しており、羽田空港隣接地の羽田エアポートガーデンにも4月下旬に出店する予定だ。
当社で働く従業員は直接雇用の社員が多く、商品やものづくりの背景への想いが強く、力量を含め濃淡がない。新商品を出す際は全社員へ発表会を行い、開発ストーリーを共有する。社会性の高い商品を作っても、その価値がお客様に届かないと意味がないため、接客には注力している。
―― 出店したい地域は。
山崎 まだ出店できていない日本海側や、1店しかない仙台など、地方への出店を進めたい。店舗規模としては20~30坪が多く、10~15坪でもトラフィックが多い場所があれば出店したい。
現在福岡では、アミュプラザ博多店、大丸福岡天神店、ONE FUKUOKA店の3店を近場で構えており、初めて様々な人に届いている実感がある。店同士が近接していても各店が異なる客層・業態でカニバリもなく、むしろシフト組みを共通化できるなどのメリットもある。他の地域でもこうした出店スタイルで展開していきたい。
―― 生産地の拡大は。
山崎 現在、ラオスでラオシルクという生地を生産しており、バングラデシュのバッグ工場で製品化している。このようなスキームのものづくりで生産国を増やすことはやっていきたい。素材を持っているものの、製品として完結させるだけの技術や工場を持たない国は意外とあり、国や大使館を通してお話をいただくケースもある。
―― 海外出店は。
山崎 出店は広げたい。アメリカではECを展開し数字が出てきているが、台湾やシンガポールは家賃が高く収支がトントンの世界だ。香港は、場所も良く売り上げも出ていたが、それ以上に家賃が高く撤退した。
アメリカでも実店舗をつくりたいと思っている。ただ、アメリカは各都市の特徴が別の国と思えるくらい異なり、1つの街で成功しても出店を広げるのが難しい。そのため、まずはECで顧客を作り、客層を見ながら出店地域を検討する。お客様がいらっしゃることはECで手応えがあるので、将来的にはどこかで店舗を構えたい。
―― 今後の中長期的なビジョンは。
山崎 ERIKO YAMAGUCHIなど、マザーハウス以外のブランドを拡大し、より成立させたい。また、もっとお店を体験価値の高い楽しい場所にしたい。DIYなど数多くのイベントを行っているが、これだというものを模索中だ。
モノの買い方が変わる中でも、お出かけ先としての買い物はまだ多い。個人的に小売りにまだまだ可能性を感じており、思い出の一環としての商業の役割は強いと考える。派手ではないが「あそこ行きたいよね」という存在を目指す。
(聞き手・編集長 高橋直也/サリョールサラ記者)
商業施設新聞2639号(2026年3月24日)(5面)
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