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Report18

宇治徳洲会病院、220億円で移転開院、高度急性期から福祉までカバー


2015/6/9

5月31日に診療を開始した新病院
5月31日に診療を開始した新病院
 (医)徳洲会 宇治徳洲会病院(京都府宇治市槙島町石橋145、Tel.0774-20-1111)は、移転新築工事を行い、5月31日に新病院で診療を開始した。規模はRC造り地下1階地上10階建て延べ5万6913m²で、総事業費は220億円。従来の高度急性期医療機能を大幅に強化するとともに、回復期リハビリテーション病棟や緩和ケア病棟を新規に整備し、総合医療センターに生まれ変わった。さらに、特養ホームや老人保健施設を併せ備えており、救命救急センター、がん診療連携病院、災害拠点病院、地域周産期母子医療センターとして、京都府南部の地域包括ケア体制における中核施設の機能を担う。
 新病院は(1)急性期医療、(2)がん診療、(3)周産期母子医療、(4)利便性の確保、の4つの特徴を持つ。(1)では屋上に救急ヘリポートを整備したほか、救命救急センターに脳血管センター、熱傷センター、ECMOセンター(重症呼吸不全に対する膜型人工肺治療)の機能を付加。心臓センターも機能が拡充され、手術室は14室となり、そのうち1室はハイブリッド手術室を整備した。
 (2)では放射線治療装置が最新鋭の「トゥルービーム」に更新され、定位放射線治療や強度変調放射線治療などの高精度な治療を、短時間で施術できるようになったほか、通院化学療法センターも拡充している。(3)では、NICUの設備および出産の設備を一新。そして、(4)では近鉄「小倉駅」などへの無料送迎バスが整備され、携帯電話による外来予約や、メールでの受診呼び出しが可能なEPARKシステムも導入している。
地下1階に導入されたトゥルービーム
地下1階に導入されたトゥルービーム
 フロア構成として、地下1階には放射線治療センターや核医学検査、高気圧酸素治療室を設置。放射線治療センターにはトゥルービームが設置されており、現行機種の5倍の出力が出せるため、治療時間は10~20分で終わるという。固定具も患者一人ひとりに作る予定で、脳に転移したがんの治療に役立つとしている。トゥルービームは同病院や吹田徳洲会病院など、徳洲会グループ全体で5台が稼働しており、京都府内では京都大学医学部附属病院に次ぐ2台目となる。
 地上1階は、救急エリア(救急外来、救急病棟、救急室)のほか、中央受付、採血コーナー、画像診断センター、外来部門(小、内、外、呼外、整)、患者相談室、薬局などを配置し、コンビニエンスストア(ローソン)やカフェ(タリーズコーヒー)も導入している。救急エリアでは、ER部門(救急初期診療)に隣接して入院部門を整備し、2台のエレベーターも新設。ER部門には手術室の機能を入れ、感染症用の個室も用意したほか、内視鏡機器や透視診断装置も導入。入院部門には個室(2室)も含めて、12床のスペースを用意している。そして、エレベーターはICUや手術室、屋上のヘリポートに直結する。
 同じフロアに設置された画像診断センターでは、GEヘルスケア製の超伝導磁石式全身用MR装置「Optima MR360 Advance 1.5T」を導入。頭部領域の小さな疾患や整形外科の領域、さらには腹部領域などの全身各部位の診断に役立つという。同病院は10年前に1.5テスラMRI装置を、3年前に3.0テスラMRI装置をそれぞれ導入したが、既存の1.5テスラMRI装置が機能的に限界を迎えたことから、今回の移転新築に伴い、1.5テスラMRI装置のみ更新を図った。
 2階は手術室を整備したほか、ICU、内視鏡センター、中央検査室、外来部門(脳外、皮、耳咽、歯口、眼、形外、泌、専外)などを設けている。手術室には、泌尿器外科が前立腺関連の手術に使用する、da Vinciサージカルシステム手術ロボットを導入した専用室を用意。また、動脈瘤や血管瘤の手術を素早く行うことができる、血管撮影装置((株)島津製作所製)を配置したハイブリッド手術室も整備している。このハイブリッド手術室は、開院当初は1室のみであるが、将来的には2室に増やす方針だ。同フロアにはICU(8床)も整備されており、個室は5室を用意している。
3階に整備したNICU
3階に整備したNICU
 3階には心臓センター、心臓カテーテルユニット、HCU、NICU、産婦人科病棟、通院化学療法センター、外来部門(血内、血外、産婦)を配置。心臓センターは、心臓血管内科と心臓血管外科が合同で運営する循環器疾患の診療センターであり、24時間・365日の体制で院内スタッフが常駐する。また、HCUは8床を、NICUは9床を整備。4階には、救命救急センター、脳血管センター、熱傷センター、ECMOセンターが設けられ、救命救急センター用として、病床数は24床を用意している。
 5階以上は病棟となり、5~6階は東病棟と西病棟の2つに区分。7階は東病棟と回復期リハビリテーション病棟、8階は東病棟と西病棟に加え、リハビリテーションセンターも設けている。そして、9階に介護老人保健施設「宇治徳洲苑」(定員は100床)が導入され、10階には透析センターを配置している。
 医療機器では、64列マルチスライスCT装置や320列マルチスライスCT装置などは、旧病院から移設した。
 新病院の規模は、地下1階地上10階建て延べ5万6913m²。病床数は473床で、その内訳は一般(7:1)が361床、HCUは8床、ICUは8床、NICUは9床、救命救急センターは24床、回復期リハビリテーションは47床、緩和ケアは16床となっている。診療科目は現行の30科目に、緩和ケア内科と内視鏡外科を新設し、放射線科を放射線診断科と放射線治療科に分けたため、33科目を標榜している。
敷地内で先行オープンした「特別養護老人ホーム 宇治愛の郷」
敷地内で先行オープンした
「特別養護老人ホーム 宇治愛の郷」
 また、新病院の敷地内には「特別養護老人ホーム 宇治愛の郷」(定員は80人、ショートステイは20人)も4月1日に先行オープンしている。総事業費は220億円。新病院の数値目標としては、外来患者数を現在の1010人から1300~1500人に、入院患者数を現在の350人から435人に増やすことを掲げている。なお、旧病院(宇治市小倉町春日森86)は解体工事を行い、売却する方向で話を進めているという。
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