電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第645回

AI向け半導体に先進的な動きが様々、キオクシアにビッグチャンス!


インテルはPC向け、AMDはChatGPT向け、NANDは供給不足

2025/10/24

 半導体産業の新たな牽引役として注目されるAIではあるが、ここにきて様々な動きが一気に出てきた。インテルはAIPCプラットフォームの2nm世代(Intel 18A)量産を予定する。AMDは、ChatGPTのOpenAIにAI向け半導体を供給する契約を締結した。さらに、AIの加速によりNANDフラッシュが深刻な不足に陥る見込みであり、キオクシアの存在がにわかに注目を浴びてきたのだ。

 インテルは、アリゾナ州で稼働中のFab52で年末にもIntel 18Aの量産を予定する。Intel3と比較すれば1Wあたりの性能を最大15%、チップ密度を30%向上させるのである。AIPCプラットフォームとして、大きな期待を集めている。

 一方、AMDはチャットGPTのOpenAIにAI半導体を供給する複数年契約を締結した。このことにより、AMDは数百億ドル規模の新たな収益が見込まれるわけであり、同社の業績はこのことで大きく上がっていくだろう。OpenAIは今後数年にわたり、合計6GWのAMD製GPUを導入することになる。

 そして、こうしたAIチップが加速する状況の中で、メモリーにも色々な動きが出てきた。OpenAIは、韓国のサムスン、SKハイニックスと月90万枚のDRAMウエハー供給契約を締結した。何と、世界のDRAM生産量の40%に相当するのである。こうしたことで、SKハイニックスやマイクロン、そしてサムスンが新型のDRAMであるHBMに巨額投資を続行している。そのことによって、NANDフラッシュメモリーは投資が減少しているのである。

キオクシアの北上工場
キオクシアの北上工場
 そこでビッグチャンスが巡ってきたのが、NANDフラッシュメモリー専業であるニッポンのキオクシアなのである。同社は、サンディスクと共闘を組んで北上工場第2製造棟を立ち上げていたが、先ごろ稼働を開始した。第8世代となる3次元フラッシュメモリー生産を量産し、26年前半にも本格出荷の構え。この第二製造棟では、AI技術の普及に伴うフラッシュメモリー需要の拡大に備え、218層の3次元タイプを量産するのである。

 このことで、キオクシアの株価は絶好調になってきた。10月7日の株価の終値は5900円となり、8月末に比べて2.3倍も伸びた。市場で注目されるのは大株主の動向であり、投資ファンドなどが保有する株を残り1%強売却すれば、東京証券取引所プライム市場の上場維持基準を満たせることになる。

 AIチップがもたらすインパクトは、バラエティーに富みながら、ひたすら開発加速、設備投資増大という方向に動いてくる。キオクシアの経営がアブナイと一時期言われたが、全くもってそんなことはない。今は株式市場の希望を一手に集めている。これが、半導体産業の恐ろしさ、というものなのである。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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