電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第649回

「ゴムは夢の始まりかもしれない」というユニーク企業が長崎にある!


半導体向け試作で頑張る津野田ゴム加工所の代表取締役の言葉

2025/11/28

 1978年のことである。長崎市本尾町の一角にゴム加工を営む小さな企業が創業する。91年には長与町に工場を移転し、油圧プレス機(2面式)を導入。1995年にはカッティングプロッターを導入し、2DCAD/CAMシステムを導入する。造船パッキンなどで頭角を表わし、原発向けパッキンでも実績を積み、マシニングセンタ、油圧裁断機などの設備を導入し、「ゴム試作のプロフェッショナル」を標榜していく。

 その会社の名前は津野田ゴム加工所(長崎県西彼杵郡長与町平木場郷609)という。「ウチがやっていることは、ロボット、医療品、建築資材、車/バイク、船/飛行機などに向けた様々なゴムパッキンの製作です。築50年以上の邸宅のサッシのゴムパッキンの破損については、リバースエンジニアリングをお勧めしています。通常サッシ取り換えは300万円以上かかりますが、津野田ゴムの場合は、10分の1の30万円でやれるのです。」

津野田幹太氏
津野田幹太氏
 こう語るのは、津野田ゴム加工所の3代目社長、津野田幹太氏である。津野田氏は19歳で家業に就き、工場長として現場で培ってきた技術と強調力を活かし、新しいゴム加工の時代を切り開こうとしているのだ。

 「ゴム切削加工はウチの得意技ですが、ゴムシートやブロックを自在に切削するノウハウを持っており、金型製作が不要なのでコストが削減できます。1個からのオーダーも可能であり、カスタム・少量に対応しています」(津野田氏)

 さらに注型成型加工についても3Dプリンターで樹脂製シリコンゴム部品を作成するため、低コストで手軽に作れるのが強みであるという。また、CADからマシニングセンタでの金型製作までワンストップで行う。安いアルミ材料を使ってスピーディに製作できる簡易金型成型加工にも取り組んでいるのだ。

 「ここに来て、売り上げの40%は半導体製造装置向けとなっており、さらにこの分野が増えていく見込みです。1日に250件のバラバラのものを作るというカスタマイズが我が社の売りであり、これが半導体関連のユーザーの皆様に受けているのだと思います」(津野田氏)

 九州にも拠点を有する半導体製造装置大手のメーカーと取引があるほか、長崎に量産拠点のある地場の半導体製造装置関連企業とも長い取引関係にあるという。

 「シリコンウェハーを支えるゴム加工にチャレンジしていきます。横に0.6mmの溝を作るのですが、プラスマイナス0.1の誤差という難しさであり、ウチのノウハウを全力駆使してやっていきたいと思っています」(津野田氏)

 津野田ゴム加工が目指しているのは、ゴム全般素材を使って、顧客の「試してみたい」「作ってみたい」という挑戦に寄りそうことだと言ってよいだろう。前例のないもの、未知の業種に対しても、顧客と一緒になって挑戦していくことは楽しい、ともいうのだ。

 「どこにもないミライのものを作ることに生きがいを感じます。世界でただ一つしかない技術への挑戦はこれからも続きます。ゴムは夢の始まりかもしれないと真剣に考えているのです」(津野田氏)

 現在の年商は1億5000万円程度であるが、まずは倍増の3億円を狙っていく構えだ。そして、「何よりも人財が大切」という津野田氏は、自らが匠の技を持つ熟練工であり、若い人たちを育てることに全力を挙げていく、ともいうのである。

 「半導体に賭けるモノ造りの世界」は、長崎のユニークカンパニー、津野田ゴム加工所にあっても、挑戦する価値のあることなのだろう。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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