商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第495回

(株)New Innovations 代表取締役CEO兼CTO 中尾渓人氏


かき氷調理ロボなどで店舗支援
ハンバーガー分野にも参入へ

2025/9/9

(株)New Innovations 代表取締役CEO兼CTO 中尾渓人氏
 (株)New Innovationsが外食チェーンなどに大きな影響を与えている。『次世代メーカー』を掲げる同社は無人のコーヒースタンドや、かき氷の全自動調理ロボットなどを展開している。5月にハンバーガーを自動調理するロボットを発表し、ホテル業界にも注目しているという。代表取締役CEO兼CTOの中尾渓人氏に会社や製品の特徴など話を聞いた。

―― 貴社は「root C」が知られます。
 中尾 root Cは2021年5月に正式リリースしたスマートコーヒースタンドで、5月時点で19台を稼働している。アプリから時間を指定して注文することで、挽きたて、淹れたてのスペシャルティコーヒーを専用のロッカーから提供する。アプリに加え、KIOSK端末を使ってその場で決済ができるようになったことで利用が大きく伸びた。
 当社は複数の製品を展開しているが、root Cは製品を販売する形ではなく、我々がデベロッパーと賃貸借契約を結ぶなどして直接展開しているのが特徴だ。設置場所は商業施設が多く、デベロッパーは通路などテナント区画ではない床で収益を上げることができる。オフィスの共用部にカフェを誘致したいがスペース的にも予算規模にも合わず、root Cを選んでもらったこともある。

―― root C以外にも製品の拡大が進んでいます。
 中尾 24年6月に既存のかき氷機と自動連携する全自動調理ロボット「Kakigori Maker」の展開を始めた。プロントコーポレーションの「和カフェ Tsumugi 氷室 南町田グランベリーパーク店」に導入したのを皮切りに拡大が進み、大阪・関西万博でサントリーが出店したカフェテリアにも導入している。既存のかき氷機に併設できるため大がかりな工事などは不要で、すでにroot Cよりも多い約30台稼働している。

―― どういった経緯でかき氷に目を付けたのですか。
 中尾 ご縁があってプロントコーポレーションとお話しする機会があったのだが、その中でかき氷は成長率や単価が高い一方で、作るのに手首を痛める、品質の平準化が難しいなど課題もあると知った。こうした課題は当社の既存技術を組み合わせて対応できると考え、開発を始めた。

―― 今後の出荷は。
 中尾 26年夏の出荷が多くなる。24年の夏に導入された機器を見て、現在、多くの会社と商談させていただいているが、25年はゴールデンウィークからすでにかき氷のシーズンに入っており、シーズンに入ってからオペレーションを変えるのは難しいという声をいただいている。商談させていただいている企業は大手も含まれるので、今後拡大していくと思う。大阪・関西万博のサントリーの店舗ではKakigori Makerの動画を流していただいており、海外の方にも広めたい。

―― 次はハンバーガーに乗り出すそうです。
「Burger Cooker」
「Burger Cooker」
 中尾 肉、パン、野菜などの具材や、ソースをセットすると包装まで行う「Burger Cooker」を発表した。大きめの家庭用冷蔵庫ほどのサイズで、肉は焼かず、アッセンブリに絞ったのが特徴。既存のPOSシステムなどとの連携も可能で、1食あたり55秒で提供できる。企業ごとに具材やソースだけでなく、包装も異なるが、これらは企業に合わせてカスタマイズできる。
 多くの企業に興味を持っていただき、現在は先方から原材料を提供いただいて、当社で実証するのを見ていただいている段階。この後、先方のキッチンにBurger Cookerを持っていって実際に作るフェーズに入る。実際に店舗で稼働するのは早くても26年度の終わりごろになると思う。

―― 今、注目している業種などはありますか。
 中尾 新たに着目しているのはホテル業界。清掃ロボットを導入するホテルがあるが、市場にあるものはサイズが大きく、ベッドの足元などは掃除が難しい。何かプロダクトを開発できないかと思っている。もともと小売や飲食に対してオペレーションコンサルも行っており、ホテル業界でもいくつかの会社とご縁ができているので、オペレーションとともにサービスを提供していきたい。

―― ロボットだけでなくオペレーション提案もしているのですね。
 中尾 メーカーに対するイメージを変えていきたいと思っている。例えば、メーカーが省エネ性能を追求する一方、飲食店は生産性の向上をしたいと考え、一致するのは価格感であるなど、双方の間に溝があるのが現状だ。本来、メーカーはお客様がやりたいことを実現することが先にあって、その次に価格があるべき。我々はお客様の事業価値の向上に寄与するメーカーになりたいと思っており、それを次世代メーカーと呼んでいる。

―― 次世代メーカーとして取り組んでいる事例は。
 中尾 例えば飲食店などで何かご相談をいただいたときは店のオープンからクローズまで店まで立たせていただき、カメラも設置させてもらう。何時何分にAさんが食器を取るためこうした動きをして、腰に負担をかけたなど店内の動きを細かく分析させていただく。分析結果として従業員配置をこう変更すればこれだけオペレーション効率が上がり、それを実現するためにうちのプロダクトを導入しませんかと提案する。メーカー部門を持つ戦略コンサルのような存在で、こうした当社ならではの価値を発揮することが重要になる。


(聞き手・編集長 高橋直也/電子デバイス産業新聞副編集長 浮島哲志)
商業施設新聞2608号(2025年8月12日)(6面)

サイト内検索