半導体の後工程を重視する動きは、ここにきて急速に拡大してきたのだ。国内におけるOSAT連合の結成、さらには福岡の半導体研究所に後工程先端技術開発のための装置導入、北海道ラピダスのチップレット立ち上げなど、まさに後工程ウェーブともいうべき現象になっている。
電子デバイス産業協会が開催した「NEDIA Day東北あおもり2025」の中で、アオイ電子の執行役員である澤本修一氏は、日本OSAT連合の必要性についてこう語っていたのである。
「OSATは半導体パッケージングサービスのことを表す言葉であるが、国内におけるOSAT企業は著しく衰退しており、今や外国勢にはまったく勝てない。こうなれば、一致団結して戦うしかない。その意味で、この5月に結成された日本OSAT連合会の動きには注目してもらいたい」
一般社団法人日本OSAT連合会は、2025年5月に設立された。国内に開発拠点または生産拠点を有する半導体後工程受託企業が連合を組んだものであり、現在26社が加盟している。正会員にはアオイ電子、アムコー・テクノロジー・ジャパン、大分デバイステクノロジー、大分電子工業、新光電気工業、テラプローブ、デンケン、菱進テックなどの注目企業の名前が連なっている。
国内OSATの状況は、30社があるが9割弱が中小企業なのである。従業員数はトータルで1万5000人と少ない。そしてまた、最終市場は車載が4割、産業機械が4割と偏っており、現在の半導体の主流であるスマホやパソコン向けはほとんどない。ちなみに、30社トータルの月産パッケージ能力は11億個、月産ウエハーテスト能力は35万枚となっている。
ちなみに、アオイ電子は香川県高松市に本社・工場があり、同県の観音寺市にも工場を持っているが、ここにきては三重県などにも工場展開しており、東北の青森にも拠点を持つなど多角展開を図っている。同社の動きにも注目する必要がありそうなのである。
福岡県においても、半導体後工程の新たな研究機関が立ち上がる。福岡半導体研究所は、後工程の先端技術の開発に必要な装置導入を断行する。そして何と、この装置導入を企業版のふるさと納税の寄付金で賄うという。25年度は5億円が目標で、みずほ銀行やJTBといった大手企業が顧客のネットワークを活かして、寄付する企業探しを支援する。官民が連携して資金を集め、技術発展が見込める後工程の先端研究を加速させるのである。
そしてまた、国内初の巨大ファンドリー工場建設で注目されるラピダスにおいても、後工程重視の方向性は出ている。チップレットを徹底的に強化する方向であり、同社の専務執行役員である折井靖光氏は、こう語るのである。
「前工程と後工程の融合を図っていく。ハイブリッドボンディングの3Dパッケージが重要だ。ラピダスにおいては、設計から前工程、さらには後工程と一気通貫のプロセスが1カ所にあり、これは世界でも稀なことであろう。これを武器に戦っていく」
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。