「九州初!半導体産業に特化した専門展」と銘打った第2回[九州]半導体産業展が2025年10月8日、9日の2日間にわたり、マリンメッセ福岡において開催された。出展者は前回を大幅に上回る400社以上となり、同時開催で第1回九州次世代物流展も開催されたが、ともに大活況であったのだ。
「第1回[九州]半導体産業展も成功裏に終了したが、第2回はこれを大きく上回る動員数になりそうだ。初日だけで7200人となり、2日間で1万4000人以上が見込まれ、九州における半導体産業に関する関心がいやがうえにも高まっているのだと思う。ただ、すべてを手放しでは喜べない。半導体の設計カンパニーの出展が非常に少ない。ここが、今後の課題となるだろう」
レセプションにおいてこうコメントするのは、同展の実行委員長の安浦寛人氏(九州大学名誉教授/国立情報学研究所副所長)である。安浦氏は、半導体設計の分野では国内外に知られる人であり、日本におけるファブレス半導体ベンチャーの活発化を常に唱えているキーパーソンである。たしかに、2000年代の初めにはザインエレクトロニクスなどを筆頭に、ファブレス半導体ベンチャーはかなりの勢いで伸びていった。ところが、ここにきては半導体設計も含めて外国勢に席巻されているのが現状なのだ。
「九州の熱気というものが強く感じられるのが、この[九州]半導体産業展である。会場のあちこちを見ても、熱心な観客たちが来ており、多くの交流が生まれている。熊本においては、TSMC第1工場が稼働したことにより、目に見えるかたちで半導体による経済効果が出てきた」
こうした趣旨で挨拶されたのが熊本県知事の木村敬氏である。熊本はTSMCの第1工場/第2工場が立ち上がるとともに、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの西合志の新工場も計画されていることで、熊本半導体フィーバーともいうべき状況が生まれている。経済効果は11兆円とも言われているのだ。
ちなみに、レセプションの乾杯挨拶をされたのが、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(株)代表取締役社長の山口宜洋氏であり、同氏は九州半導体・デジタルイノベーション協議会(SIIQ)会長の任にもあるだけに、新生シリコンアイランド九州の実現を強く訴えている。筆者も、2日目の午前に講演させていただいたが、聴講者は実に数百人を数え、満席状況であった。ここにおける聴講客の方々も大いに熱気に溢れており、ものすごい勢いで筆者の講演をメモしている方が多かった。
同時開催された第1回九州次世代物流展は、半導体のサプライチェーンやロジスティクスの重要性が高まっているだけに、初回から120社を超える企業が出展したという。そして次世代を担う人材となる学生の方々が多く訪れていることも目についたのだ。
次回の[九州]半導体産業展もさらに拡大していくことは当然のことであり、とりわけ、実装基板を含めた後工程に関するカンパニーが多く増えることが十分に予想されると思えてならない。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。