商業施設新聞
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No.995

韓国で就職氷河期が深刻化


嚴 在漢

2025/2/25

 韓国における若者の就職氷河期が深刻化している。韓国統計庁国家統計ポータル(KOSIS)の資料によれば、2024年12月に15歳以上の就業者は2804.1万人(総人口5130万人)と、前年比で5万2000人減少している。韓国の若者は、兵役義務や就職浪人などで労働市場への参入年齢が遅くなり、就職を諦める事例が続出している。一方、リタイアした高齢者は、再雇用の競争が激しくなり、低い賃金で生活苦を強いられている。

 特に、製造業分野では雇用の寒波が吹き荒れる。長期化した景気低迷により、韓国製造業の生産拠点が海外に移り、雇用創出の基盤が崩れてしまったのだ。さらに、公共機関の新規採用も大きく減っている。韓国公共機関経営情報公開システム「アリオ」によると、24年に339カ所の公共機関が採用した一般正規職(以下、無期契約と役員は除外)は1万9920人であった。新規の一般正規職の採用は19年の4万116人から20年は2万9480人と減り、24年は2万人台を割り込んだ。

ソウルのある区立図書館で就職のための勉強に励む人々
ソウルのある区立図書館で就職のための勉強に励む人々
 求職期間が長期化することで、求職を断念し「ただ休んでいる」若者も増えている。韓国経済活動人口の調査では「ただ休んでいる」と答えた青年は前年比2万1000人増の42万1000人(24年末時点)となった。つまりは、42万人超の若者が求職市場から離脱したことを意味する。これは関連統計を開始した03年以降、コロナ禍の只中にあった20年に次ぐ過去最多の数値だ。

 韓国では1000万人の第1次ベビーブーマー(1955~63年生まれ)が引退後に再就職市場に参画し、25年からは954万人に達する第2次ベビーブーマー(1964~74年生まれ)が引退年齢に入る。一方、韓国労働情報の資料によれば、45歳以降に退職を経験した労働者は、再就職まで平均15.6カ月を要しており、青年の労働市場への参入時間(平均11.5カ月)より長いという。また、韓国雇用情報院によれば、中高齢者のうち10年以上の勤続者が再就職する場合、以前の職場と比べて賃金水準は約70%になるという。

 こうした就職市場はさらに険しい道が待ち受けている。韓国では労働者10人のうち3人はAIの台頭により、職場を失ったり所得が減少する可能性が高いという研究結果が出ている。韓国銀行がこのほど発表した「AIと韓国経済」のレポートでは「全体労働者のうち、51%がAI導入に大きな影響を受ける」とした。

 24年に韓国の1人当たり総所得(GNI)は3万6194ドル(約557万円)となり、史上初めて日本(3万5793ドル)を追い越した。また、ソウルと東京の消費者物価はソウルのほうが2割ほど高く(交通費除く)、日韓の大卒初任給は、韓国のほうが3割強高い(大手企業平均653万円)というデータもある。韓国が豊かな先進国になったこととは裏腹に、就職を諦めた若者が溢れているという逆説的な状態が生まれているのだ。
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