かつて「街づくりは道づくり」という言葉を聞いて、合点がいったものである。街には住宅、オフィス、ホテル、そして商業施設など様々な機能がある。これらが融合してこそ街であり、融合しなければただオフィスビル、ホテルが入居するビル、単一の商業施設である。こうした様々な建物・機能を結ぶのが道であり、通りたくなる道があると各機能が結びつきやすい。また、良い道が長く伸びれば隣の街との融合も可能だ。「街づくりは道づくり」という言葉を聞いたのは2015年ごろだったと記録しているが、その後訪れたニューヨークのハイラインには感銘を受けた。植栽、建物壁面のアート、周辺の街並みを眺められる椅子などもあり、いつまでも歩いていられる気分だった。渋谷ストリームを起点に「渋谷リバーストリート」として代官山方面に続く遊歩道が整備されたが、個人的に良い取り組みだと思っている。
話は変わって、少し前に公園や、公園と商業施設が融合している案件を取材した。公園は多様な人が集い、イベントなどで賑わいも作る。道とは違う性質もあるが、こちらも街づくりに欠かせない要素だ。様々な公園を勉強がてら視察に行ったり、もちろんいくつか取材をさせてもらった。そうした中で、賑わう公園の共通点として『良き留まる場所』があることに気が付いた。例えば整った芝生広場、様々な椅子があるほか、アウトドア用の椅子を貸し出すなどしていた。そこで来園した人が腰を下ろし、読書、会話など思い思いの時間を過ごすことができ、滞在する価値が生まれるのだ。そこで気づいたのが、そういえばハイラインにも時折、腰を下ろすところがあった。国内の“良き道”として知られる「丸の内仲通り」でも、こじゃれたテーブルと椅子が置かれている。
ということは、「良い椅子があると良い公園・道になる。街づくりとは椅子づくりである!」というのはさすがに言い過ぎか。ただ、最近できた公園には面白い椅子があることが多い。「ひろしまゲートパーク」にあった「ユニバーサルリボン」もその一つ。椅子として使えるが、アートのようでもあるため風景に溶け込んでいる。「これは椅子です!」という強い主張はなく、自然な形で公園に馴染んでいるのが良い。こうした面白い椅子が道沿いにあっても面白い。なんだか歩くのが楽しくなりそうだ。商業施設内でも様々な広場が整備されることが増えてきた。魅力的な椅子・ベンチを置くだけでもずいぶん雰囲気が変わるかもしれない。