2025年は何かと節目を迎える事柄が多い。阪神・淡路大震災から30年、終戦から80年など様々だ。イベントも多く、50年前の1975年に沖縄国際海洋博覧会、(沖縄海洋博)、40年前の1985年に国際科学技術博覧会(つくば博)、20年前の2005年に日本国際博覧会(愛・地球博)が開催され、そして今年、大阪・関西万博が控える。
翻って、東京商工リサーチによると、25年に100周年の節目を迎える企業は全国で2000社もあるそうだ。三菱食品、中外製薬、日本放送協会(NHK)、野村ホールディングス、雪印メグミルクなど各業界を代表する企業が並ぶ。そのなかにあって(株)新宿高野(東京都新宿区)は今年創業140年を迎える。創業の1885年は明治18年にあたる。この年は何があったかと調べてみると伊藤博文が初代内閣総理大臣に就任した。同社は今でこそ老舗フルーツ専門店として、高品質で美味しいフルーツを使用したオリジナルフード・ギフトの販売や、フルーツパーラーなど飲食店の経営、豊かなフルーツライフを実践できるカルチャースクールなどの事業を展開しているが、創業当時は新進気鋭のベンチャー「高野商店」として、近代を迎えライフスタイルが大きく変化中の日本人に向けてフルーツを提供していたのではないかと思いを馳せてしまう。
奈良県産の「コットンベリー」。フルーティな香りとトロピカルで濃厚な味わいが特徴だ
今は2月。2月の旬のフルーツといえば「苺」である。スーパーや量販店に並ぶが、全国のイチゴ収穫量は栃木県、福岡県、熊本県で国内生産量の3割を超える。以下、愛知県、静岡、長崎、茨城、千葉、佐賀、宮城県と続き、上位10県で生産量全体の7割以上を占める。ちなみに新宿高野本店(東京都新宿区新宿3-26-11)では旬を楽しむ「苺」フェアを4月まで開催している。だが、老舗・新宿高野本店が推す苺は、トップ10にランクインしていない大分県の「ベリーツ」、奈良県の「古都華」「古都姫」「コットンベリー」、滋賀県の「みおしずく」だ。去る1月20日、新宿高野本店で試食会が催された。
いずれも食べ比べてみたがみずみずしく、甘さと酸味が絶妙なバランスにあり、後味にも主張が感じられることに驚いた。それぞれに個性があり、日本の農業技術の底力を感じたのだ。また、苺フェアにあえてランクインしていない県産のイチゴを提案するというあたり、さすが創業140年が誇る目利き力の自信の表れだと腑に落ちた。
6階に構える「高野フルーツパーラー新宿本店」でも4月30日まで「苺」グランドメニューを展開している。「苺のパフェ」「意義とのプレートデザート」「苺のワッフル」「シーズナルトライフル苺」が楽しめる。さらに前述の奈良県産「古都華」や大分県産「ベリーツのパフェ」が本店限定で楽しめる。
こうした日本の高級フルーツの体験を目当てに多くのインバウンドが訪れるという。特に欧米系の富裕層が目立つようになったという。最近では近隣にラグジュアリーホテルが開業したことも遠因だろう。2月11日は建国記念日。季節でいえば立春で、春の足音がまもなく聞こえる。ぶらり新宿を訪れて、個性の強い苺たちに出会うのも一興かもしれない。