電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第611回

エピシルテクノロジーズ/エピシルプレシジョン 董事長 徐建華氏


VISとSiC製造で協業
8インチを26年下期に開始

2025/1/31

エピシルテクノロジーズ/エピシルプレシジョン 董事長 徐建華氏
 台湾のエピシルグループは、1985年に設立されたシリコンおよび化合物半導体のファンドリー。2015年にプレシジョン(嘉晶電子)と合併し、統合後、デバイス事業のエピシルテクノロジーズ(漢磊科技)とエピ事業のエピシルプレシジョン(嘉晶電子)という2つの独立した上場企業となった。両社の董事長を務める徐建華(JHシュー)氏に直近の取り組みを聞いた。

―― ご略歴から。
 徐 86年にUMCに入社し、02年にUMCを退職して中国蘇州に8インチ製造会社「HJTC」を設立した。当時、台湾は中国に半導体工場を設立するのにかなりの制限があったが、最終的にUMCが13年にHJTCを完全買収し、私はシニアVPとしてUMCの経営陣に復帰した。16年にUMCを退職したとき、エピシルの黄民奇会長が私をエピシルグループに招き、現職をお引き受けすることを決めた。

―― エピシルグループの概要について。
 徐 グループの生産拠点は新竹サイエンスパークに集中している。漢磊科技のデバイスファンドリーはSi4/5インチの6A工場とSi/GaN/SiC6インチの6B工場を運営しており、月産約5万枚の能力がある。一方、嘉晶電子のエピウエハーは4/5/6/8インチのSi/GaN/SiCに対応した4工場を有し、月産約40万枚の生産能力を備えている。
 グループの年間売上高は2億~3億ドルで推移している。シリコンから事業を立ち上げ、パワーディスクリートを主力として、09年からは化合物半導体技術の研究開発を開始した。コロナ危機前は厳しい時期だったが、当時は比較的競争が少なかったため、生産拡大への投資を始めて差別化してきた。売上構成比はSiが50%、SiCが40%、GaNが10%である。

―― SiCの状況は。
 徐 漢磊科技の6インチ月産能力は約5000枚、嘉晶電子のSiCエピは6インチが月産5000枚、8インチが同1000枚ある。デバイスの製造プロセスにはSBD、プレーナーおよびトレンチMOSFETが含まれている。
 ここ2年間で中国がSiC産業に多額の投資を行い、EV市場のスローダウンも相まって深刻な供給過剰に陥ったため、業界全体にマイナスの影響を及ぼしている。SiC市場は今後も成長することが確実だが、IDM企業はリスクを考慮して、果たして8インチSiC生産能力を構築し続ける必要があるのか、考え直す時期に来ている。

―― ヴァンガード(VIS)とSiCファンドリー事業で戦略的提携を結びました。
 徐 当社からSiCエピとデバイス技術を提供し、VISの優れた生産能力を活用して、SiCパワー半導体の8インチファンドリー事業を立ち上げる。需要の回復期に向けて8インチ化することが重要だと考えており、VISの既存Si生産ラインを利用してSiCに転換し、26年下期から量産開始を目指す。第1期の月産量は6000枚程度からスタートし、将来的に1万枚以上へ引き上げていくつもりだ。
 26年6月までに製品の検証を完了し、少量試作に入る。技術的には、プレーナーMOSFETのオン抵抗が2.5mΩ/cm²以下に低減できることに加え、セルピッチも4.5μm未満にできる。同時にトレンチMOSFETの開発も進めている。IDM企業にとっては、低リスクおよび高い製造効率でSiCのトータルソリューションを利用できるようになる。同時に、日本のIDM企業が自社開発したSiCプロセスをファンドリー生産モデルに移植することも受け入れている。Win-Winの関係を生み出す機会になるはずだ。

―― GaNについては。
 徐 GaNパワー半導体のファンドリーのニーズには、急速充電器やAI関連製品のニーズについて多くの問い合わせをいただいているが、生産能力の制約により対応できていない。当面はまずSiC事業の拡大に注力する。

―― 日本市場・企業への期待は。
 徐 当社は長年にわたり日本の産業と密接に協力しており、設備や材料の受け入れも行ってきた。そのため、SiC分野で競争優位性を維持している。一方、台湾はファンドリー生産モデルで30年以上の歴史を持ち、IDMやファブレス企業に貢献してきた。
 今回、8インチSiCラインの設立を通じて、日本、欧米のIDM顧客、そして中国のデザインハウスを含む世界中の顧客に最適なソリューションとサポートを提供することを目指している。日本企業は技術流出を懸念し保守的になりがちだが、包括的な知的財産保護システムを通じて、新興のSiC市場を共同で拡大できるパートナーシップを構築したいと考えている。


(聞き手・特別編集委員 津村明宏)
本紙2025年1月30日号1面 掲載

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