広島地下街開発(株)(広島市中区)は、広島初の地下街開発にあたり、広島市を中心に県や民間企業が出資した第三セクターとして発足した。2001年4月、「紙屋町シャレオ」が開業し、管理・運営している。24年6月、新たに同社の代表取締役社長に就任した長光信治氏は、前広島市安芸区長という経歴を持ち、これまで官民一体のまちづくりを推進してきた。紙屋町シャレオにおいても、そのまちづくりの手腕が期待されている。長光社長に施設の取り組みや展望など話を聞いた。
―― 紙屋町シャレオの概要と足元の状況から。
長光 紙屋町交差点の地下に位置し、東西南北に十字に延びる地下街で、店舗面積7120m²に現在約60店が出店する。7つの広場と地下歩道1万2480m²を有していることが特徴だ。
24年3月期のテナント売上高は前期比4.2%増の約41億円で、コロナ禍前の水準には及ばないが、売上高は上昇傾向にある。また、中央広場のイベント利用も堅調に増加している。
―― 客層の変化は。
長光 開業当初は20代後半から30代前半の女性が購買層の中心だったが、現在その方たちの年齢がそのまま上がり、40~50代の女性が中心だ。広島の中心部に若者の流入が減っていることもあるが、次世代の取り込みは近年の課題と認識している。
―― ゾーニングについて。
長光 施設内の南北通りは、アストラムラインの県庁前駅(北)、本通駅(南)が通りの先にあり、特に通勤で利用する方が多いメーン通りだ。ここには施設のキーテナントを配置し、ドラッグストアやコンビニなど利便性の高いテナントもある。東通りはオフィス街に面しているため、クリニックやリラクゼーションなどのサービス業態が自然と多くなっているほか、中央広場付近はアパレルや服飾雑貨など彩りを与えるテナントが出店している。西通りは重飲食も配置できる設備を整えている。
―― 近年の取り組みを。
長光 22年春に南北通りの柱回りに「シャレオ シェアカウンター」を設置した。ちょっとしたテーブルにコンセントやUSBポートのある充電設備を整備し、スマホなどの充電を気軽にしていただける。お客様からも好評で、さらに施設の滞留時間が長くなり、コンビニではテイクアウト需要で売り上げが伸びたという。今後は各テナントへのさらなる効果を期待している。
また、23年春に西通りの奥の区画に、シェアキッチンを完備したイベントスペース「紙屋町スウィング」を設置した。経済産業省の商業活性化に関する補助金を活用し、空き区画対策として設置したが、地域交流や街歩きのとまり木となることを目指している。これから飲食店創業を目指す方や週末だけカフェを開催したい方、ワークショップなどあらゆるニーズに対応する。利用のない時は休憩スペースとして利用いただいており、憩いの場となっている。ほかにも、個展などが行える多目的スペース「紙屋町ベース」も設置した。
―― 中央広場も憩いや集客装置として効果がありそうです。
長光 中央広場のイベント稼働率は90%以上を維持し、施設の顔として定着している。ポップアップショップや催事、社会的な課題に関する啓発活動など利用は多岐にわたる。最近では作家や手作り系のアクセサリーや古本などの催事が人気となっている。
―― 直近では西通り出入り口付近の地上にひろしまゲートパークが開業したが、効果は。
長光 市民球場が移転した後は西通りの集客に苦戦したと聞いているが、ひろしまゲートパークでイベントが開催されている時は1割程度だが当施設の客数や売上がアップしている。ただ、西通りの向こうの市街地にはすぐ川があり、川より向こうからも人を呼び込むには、さらなる工夫が必要である。前述の「紙屋町スウィング」の活用を促したり、目的来店のできるテナントを誘致するなどし、より魅力的なエリアにしていきたい。
―― 今後の展望をお聞かせ下さい。
長光 24年4月からリーシング活動の強化として、社内の組織体制の改善を行った。一例では、今までになかったエンタメ性のある業態のリーシングなど、毎日訪れても飽きない人を惹きつける業態を取り入れていく。
―― 最後に周辺まちづくりとの関わりや施設の位置づけなど。
長光 様々な再開発が進む場所の中心地にあるため、人々の回遊のハブにあると考えており、周辺の様々なエリアマネジメントと関わっていく。それだけでなく当施設は公共性の高い性格を持ち合わせているため、交流、休憩、暑寒対策など多様なニーズを踏まえた環境を整えていることをアピールし、多くの人々が気軽に訪れ、憩いの場となる施設づくりを行っていきたい。
(聞き手・今村香里記者)
商業施設新聞2572号(2024年11月19日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.453