日本政策投資銀行は、2024年度設備投資計画調査をまとめた。これによると大企業(資本金10億円以上)の2024年度の設備投資は、前年比21.6%の大幅増の計画で、1980年代以降では、2022年度の26.8%増に次いで、18年度に並ぶ高い伸びとなる。
23年度の設備投資は、計画時点の20.7%増からは大幅に下方修正されたものの、EVや半導体関連の開発・増産、都心再開発もあり、6.9%増と2年連続で増加した。製造業の伸びは12.8%増で22年度の11.2%増を上回り、05年度以来の高い伸びとなった。また、非製造業も4.1%増と2年連続で増加した。
24年度は、23年度から先送りされた投資に加え、デジタル化の加速を受けて、半導体関連の能力増強投資が拡大し、EVなど電動化投資も増加する。また、人流拡大やインバウンド増加を受けて、空港機能拡張に向けた投資が増えるほか、都心再開発も継続し、製造業、非製造業ともに高い伸びとなる。
24年度製造業では、AI導入や省人化に伴うデジタル化の加速を受け、電気機械や、化学・非鉄などの素材業種で半導体の製造能力増強が継続。EVをはじめとする自動車の電動化対応により、電池や電磁鋼板なども投資が進む。脱炭素では、再エネや省エネの導入が幅広い業種で継続するほか、再エネ向けの送配電網強化に関する投資がみられる。
非製造業では、人流拡大やインバウンド増加を受けて、空港機能の増強に加えて、ホテルや娯楽施設が増加するほか、都心再開発も継続する。
製造業では、23年度は半導体やEV関連の投資で、非鉄金属、精密機械、輸送用機械が大幅に増加。24年度も幅広い業種で大幅増となり、化学は半導体材料、EV関連、医薬品分野を中心に増加に転じる。非鉄金属は半導体やEV向けが堅調。輸送用機械も電池を含むEV投資が継続する。
非製造業では、23年度は原子力関連投資の先送りや5G投資の一服などで下押しがあったものの、鉄道の安全関連投資や航空機購入など先送りされていた投資の再開や、都心の大型ビジネス拠点開発などがあり、2年連続で増加した。24年度は車両新造やインバウンド需要増による空港機能の拡張がある運輸のほか、大型開発が続く不動産、原子力関連投資や送配電網の維持更新・新設がある電力などで大幅増となる。
物流24年問題への対応としては、幅広い業種で「デジタル活用」と回答する企業が多かったほか、製造業を中心に「機械化・自動化のための設備投資」との回答も多かった。また、食品や化学(日用品メーカー含む)、卸売・小売などで「共同配送の拡大」の割合が高かった。物流24年問題の影響が大きいと考えられる道路貨物運送・倉庫運輸関連では、デジタル活用と機械化・自動化投資の回答が他業種と比べて多かったほか、モーダルシフトの割合も高かった。
23年度のデジタル化投資は、例年同様計画から下方修正されたが、11.1%増と3年連続で増加した。24年度は34.0%増を計画している。幅広い業種で業務効率化のためのシステム投資がみられたほか、製造業では、輸送用機械でデータ一元管理など効率化に向けた投資があり19.5%増、特に伸びを牽引する非製造業では、卸売・小売のECインフラの拡充や、電力・ガスの遠隔保守管理、運輸の顧客対応や倉庫の自動化などにより46.9%増となる。
研究開発費は、23年度は一般機械ではCNに向けた技術開発や高性能・新商品開発が進められ高い伸びとなったものの、その他の業種では計画を下回り、4.2%増にとどまった。24年度は前年比8.7%増と、高い伸びとなる。一般機械は伸び率が高かった23年度から減速するものの、ウエートの高い輸送用機械では電動化をはじめとしたCASE関連開発により23年度並みの伸びが続くほか、化学では高機能品開発、電気機械ではポスト5Gなど高度化により高い伸びとなる。また、幅広い業種で脱炭素関連の研究開発が続く。
カーボンニュートラルの影響では、設備入れ替えの契機になるとの回答が高い割合を維持している。また、長期的な移行戦略の策定・開示の割合が低下する一方で、サプライチェーン全体での対応と事業拡大の契機とする回答の割合が徐々に高まっている。脱炭素の取り組みの課題については、技術的な問題のほか、販売価格への転嫁と開発コストの問題と回答する企業が多く、脱炭素の取り組みを続ける中で開発コストの増加をいかに販売価格に転嫁していくかが課題となっている。24年度の設備投資に占める脱炭素関連投資の割合は、23年度からほぼ変わらず。ただし、22年度と比較すると、「なし」とする割合が低下した。研究開発に占める脱炭素関連の割合は、3年間でほぼ変わらずとなった。
23年度の海外設備投資は、15.4%増の高い伸びとなった。地域別では、中国は成長鈍化や地政学リスクへの考慮などもあり、おおむね横ばいにとどまった。一方で、北米、欧州、中国を除くアジアでは、自動車、化学などが寄与し、大きく増加した。24年度も21.3%増と高い伸びが続く。北米では環境対応もあり自動車が増加するほか、天然ガスや水素などエネルギー関連も高い伸びとなる。中国除くアジアは自動車、不動産により増加するほか、その他の地域は鉱業を中心に大幅増となる。中国では内需の取り込みに向けて不動産などが増加し、伸びがやや拡大する。欧州では素材関連の化学などで引き続き増加するが、不動産などの減少により伸びが鈍化する。海外設備投資は、金融危機後の円高もあり、13年にかけて大きく増加した。その後は、円安や中国の成長鈍化に加え、米中貿易摩擦やコロナもありおおむね横ばいとなったが、21年度以降持ち直し、24年度も大きく増加する。海外設備投資比率は、コロナ以降、国内投資に比べて海外投資が一早く持ち直したため上昇したが、23年度以降は、海外投資の伸びが国内を下回り、低下している。向こう3年の中国拠点の運営方針は、製造業を中心に現状維持とする割合が最も高く、未定とする企業も多かった。また、拡大とする企業が、縮小と回答した企業を上回り、撤退と回答した企業は少なかった。