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第568回

24年上期の新車販売は米中欧が1桁成長


日本は登録車・軽自動車ともにマイナス

2024/9/6

 中国における2024年6月の新車販売台数(中国自動車工業協会:CAAM発表)は、前年同月比2.7%減の255.2万台。前年を下回るのは春節で販売店の休業が通常よりも多いという特殊要因で2桁減となった2月以来4カ月ぶり。景気の冷え込みに加え、値下がりが進むとの期待から、買い控えが広がったことが背景にある。なお、上期(1~6月)の販売台数は前年同期比6.1%増の1404.7万台。

 中国ではEV最大手のBYDが2月に主力車種の値下げに踏み切ったことをきっかけに価格競争が激化。競合他社からは「3割ほど値引きしたが、売れ行きは芳しくない」との声が聞こえてきているもよう。新車販売のうち、政府が普及を支援するNEVは、前年同月比30.1%増の104.9万台。好調に見えるが、伸びは前月の33.3%から鈍化傾向にある。

 一方、米国市場における6月の新車販売台数は、前年同月比3.0%減の134.4万台となった(マークラインズ調べ)。米国ではディーラー向けに幅広い管理システムを提供しているCDKグローバル(イリノイ州)が、6月19日に身代金要求を伴うサイバー攻撃を受け、約1.5万店のディーラーの販売業務に影響が発生。7月2日にコア部分の復旧は完了したが、6月の販売の一部が7月へ後ろ倒しとなったことが響いたもよう。なお、上期(1~6月)における乗用車・小型トラック合計の新車販売台数は、前年同期比2.3%増の771.5万台。

 そのほか、日本市場での6月の新車販売台数は登録車、軽自動車合計で前年同月比4.9%減の37.3万台(日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会発表)。上期(1~6月)の登録車・軽自動車合計の販売台数は前年同期比13.2%減の212.7万台と振るわず、2年振りのマイナス成長となった。また、欧州における24年上期の新車販売台数は、前年同期4.5%増の568.4万台としている(欧州自動車工業会発表)。

日系OEMの販売動向

■トヨタ自動車
 4~6月期の連結販売台数は前年同期比3.2%減の225.2万台、トヨタ・レクサスの販売台数は同1.9%減の249.1万台にとどまった。

 足場固めや認証問題、リコールなどを受け、日本での販売台数が同20.8%減と大きく落ち込んだことが背景にある。日本以外の北米や欧州、アジアでは1桁成長のプラス成長を記録している。

 トヨタ・レクサスの販売台数における電動化率は前年同期の34.2%から9ポイント増の43.2%。主な内訳は、海外で好調なHEVが同23.8%増の99.8万台、PHEVが同8.5%増の3.4万台、BEVが同49.5%増の4.3万台など。

■日産自動車
 4~6月期のグローバル販売台数は、前年同期比0.2%減の78.7万台。中国で同3.3%増、欧州で同7.6%増、その他で同1.0%増のプラス成長となったものの、日本が同8.0%減、北米で同1.7%減のマイナス成長となった。全体需要が同6.8%減となった日本市場では、23年にマイナーチェンジした軽自動車「デイズ」と「ルークス」の販売が好調に推移。4~6月期末には生産が追いつき、受注が伸びた。

 なお、第1四半期を踏まえ、24年度通期の販売台数見通しを、期初の370万台から5万台減の365万台へ下方修正した。中国での販売台数は、前年同期比3.8%減を見込むものの、中国を除いた販売台数は、ほぼ横ばいとなる見通し。

 内田誠社長兼CEOは、「4~6月期に在庫調整の適正化が不十分であったことを踏まえ、7~9月期は生産調整による在庫の適正化を図る。今後投入する新型車については、モデルごとに最適な販売計画で進めていく」と語った。

■ホンダ
24年上期 軽自動車販売台数No.1のホンダ「N-BOX」
24年上期 軽自動車販売台数No.1のホンダ「N-BOX」
 4~6月の四輪車販売台数は、前年同期比3.6%減の86.9万台。日本・米国ではHEVが好調に推移し販売台数が増加したものの、中国でのNEV市場の拡大や価格競争の激化の影響により、全体としては前年を下回った。

 執行役常務CFOの藤村英司氏は、「アジアでの四輪車販売は、中国市場において、中国OEMとの競合に加えて、ICE車の中でも競争が激化し減少。それを日本や北米でカバーしている状況にある。中国は非常に先を読むのが難しい。我々が見立てているレベルからNEVの比率は少し上回り、斜め上をいっている。今期中にNEV比率が50%いくかどうかと思っていたところ、すでに50%に達してしまった。加えて、他社の値引きが想定を超えており、これらが懸念要因」と語った。

 24年度通期のグループ販売台数見通しについては、特に中国での減少などを反映して、390万台に下方修正。地域別では、日本が68万台(前回見通し比1.5万台増)、北米が167.5万台(据え置き)、欧州が10.5万台(同5000台増)、アジアが128万台(同24.5万台減:このうち中国が22万台減)、その他が16万台(同5000台増)。

■スズキ
 4~6月期における販売台数実績は、前年同期比7.1%増の78.4万台。日本では、安定した生産とスペーシアやスイフトなどの新車効果により、同14.8%増の17.00万台と2桁成長を記録。特に新型スペーシアは、5月の車名別販売台数が1位になるなど、ミックス改善に寄与した。主戦場のインドでは、選挙や天候不順があったことを受け、市場在庫が増加し、生産調整を行ったことから、販売台数は同1.2%増の42.7万台と前年並みにとどまった。

 そのほか、欧州では新型スイフトの投入により前年同期比22.1%増の6.5万台と好調な滑り出し。また、インド以外のアジアとしては、パキスタンにおいて、前年同期に外貨規制により輸入が困難な状況で販売が急激に落ち込んだが、現在は緩和されたされたことで、同2.7倍の1.9万台と大きく回復している。

 なお、インドで販売が好調な環境対応車については、「BEVは、25年1月に正式にインドのオートエキスポで発表し、同年の早い時期に市場投入をしていきたい。まず欧州を優先しながら、インド、日本へ展開していく。HEVについては、既にトヨタ自動車からTHSモデルの供給を受けているが、我々としても適切なモデルのバランスを取りながら、独自のストロングHEV、またはマイルドHEVを使いながら対応をしていく」と取締役常務役員の岡島有孝氏は語った。

■マツダ
 4~6月期の世界販売台数は、前年並みの30.9万台。地域別では、北米市場でCX-50やCX-90の好調な販売を受け、前年同期比14%増の14.6万台と2桁成長を記録した。一方、日本市場では、CX-8の販売終了やCX-60の新車効果の一巡などを受け、同31%減の2.9万台と大幅なマイナス成長を余儀なくされた。

 グローバル販売の24年度通期見通し(140万台)に対する4~6月期時点での進捗率は22%。HEVモデルのCX-80やCX-50など市場投入を24年後半に予定していることから、おおむね計画通りの進捗としている。

 現在同社では、トップラインの成長に向けた取り組みに注力している。米国市場では4~6月期として過去最高のシェアを達成、また7月のシェアは単月として過去最高の3.1%を達成した。米国の次世代型店舗数は300店舗以上を達成し、ディーラーのマツダビジネスに対するコミットメントレベルと期待感は高い状態が続いている。

 北米市場では24年後半にCX-50のHEVモデルを投入し、北米市場として初の年間60万台の販売を目標としていく。好調な北米市場と、ラージ商品をテコに、トップライン成長を実現し、通期のグローバル販売140万台を目指す。

■三菱自動車
三菱自動車が4~6月期に上市したASEAN地域戦略車「トライトン」
三菱自動車が4~6月期に上市したASEAN地域戦略車「トライトン」
 4~6月期の世界販売台数は、北米ならびに中国他でのマイナス成長を受け、前年同期比0.5%減の19.4万台。主要地域別に見ると、日本では、一部OEMの出荷停止の影響もあり、自動車需要は前年同期に比べて減少したが、同社はデリカミニの好調な販売を維持し、販売台数が増加。今後は、アウトランダーPHEVやデリカミニの特別仕様車投入に加え、新型トライトンの拡販に注力していく構え。

 北米では、米国・カナダで、高金利・インフレの影響で小売販売環境が悪化する中、引き続き、値引きには走らず、販売の質を向上させていく取り組みに注力。加えて、6月下旬に発生したディーラー用ITシステム大手へのサイバー攻撃が、同社ディーラーの約3分の1のオペレーションに多大な影響を与え、販売台数の減少を余儀なくされた。欧州では、競争は依然として厳しい状況だが、同社はルノーからのOEMモデルであるASXやCOLTが寄与し、前年同期比で販売台数が増加した。今後は、新型ASXの拡販を進めると同時に、24年度の終盤に予定しているアウトランダー PHEVのローンチに備える。

 なお、三菱自動車では、ASEANでの戦略車であるトライトン、エクスフォースのグローバル展開を本格始動。4~6月期にASEAN各国ならびに中南米などに投入したが、7~9月期以降は、中東・アフリカ各国へも展開し、さらなるブランドの浸透、強化につなげていく方針。

■SUBARU
 4~6月期の生産台数は、2月に発生した労働災害に伴い、従業員の安全・安心の確保を第一として4月まで国内での生産ペースを落としていたことから、前年同期から4000台減の23.9万台。また、グローバル販売台数は、前年同期比9.0%減の21.2万台となった。主要市場である米国では、「小売台数は7月まで24カ月連続で前年超えを達成している。競争が激しいなかでも、当社製品に魅力を感じていている結果だと捉えている。通期は過去最高水準の68万台の販売計画を掲げているが、達成に向けて取り組んでいく」とCFOの水間克之氏は語った。

 一方、米国市場における4~6月期の販売奨励金は、競争環境が厳しくなってきていることに加え、旧型フォレスターの売り切りに向けた対応と高金利により1976ドルに上昇したが、業界平均の3143ドルに比べると低位にある。

 なお、24年度通期のグローバル販売台数は、期初計画の98万台を据え置いた。米国市場は4~6月期にマイナス成長となったが、今後挽回して前年度比5000台増の70万台の達成に取り組んでいく。


電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡

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