商業施設新聞
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第446回

三菱地所・サイモン(株) 代表取締役社長 山岸正紀氏


23年度は施設売上高4000億円超
新規計画の可能性も

2024/9/3

三菱地所・サイモン(株) 代表取締役社長 山岸正紀氏
 三菱地所・サイモン(株)(東京都千代田区)が運営する「プレミアム・アウトレット(PO)」が好調だ。2023年度の施設売り上げは合計で4000億円を超え、過去最高となった。24年度は新増設計画がなく現体制で臨むが、プラス成長を見込む。また、新たに策定した中期経営計画では、新規や増床計画立案の可能性も示唆しており、さらなる成長を目指す。代表取締役社長の山岸正紀氏に聞いた。

―― 23年度を振り返って。
初のアウトレットモール施設売上高1000億円を突破した御殿場PO
初のアウトレットモール施設売上高1000億円を
突破した御殿場PO
 山岸 5年ぶりにコロナの影響を受けなかったことから、施設売り上げは前年度比17%増の4069億円で、4000億円を突破した。過去最高だったコロナ前の18年度実績の3535億円を大幅に超えた。要因は人流の回復が大きく、インバウンド需要が急回復するなか、インバウンド需要に強い御殿場POとりんくうPOが力を発揮した。
 18年度以降、御殿場PO4期増床など増床を3カ所で実施した。また、22年10月にはふかや花園POを新設し計10施設となった。18年度実績とは単純比較はできないが、実力を示せた。
 特筆すべきは御殿場POの23年度売り上げは1240億円となったことで、悲願だったアウトレット施設初の1000億円を達成した。また、神戸三田POは近年増床していないが、過去最高の売り上げの674億円を叩き出した。

―― ふかや花園POは。
 山岸 開業から2年弱が経ち、想定どおり地域のお客様が高い頻度で来館している。狙いは当たっているが、コロナが落ち着き、人流や長距離移動の制約がなくなった。いかに広域からお客様にお越しいただくかが課題だ。

―― 課題に対しては。
 山岸 テナントのラインアップを強化する。期間限定店の入れ替えを行っている。また、当社の施設で1日を過ごすだけではなく、秩父エリアなど周辺地区を周遊していただくべく、施設を立案・実施している。エリアの中でハブになる施設となる施策を今後も強化していく。これは10施設共通した特徴だ。

―― 24年度の戦略について。
 山岸 営業面積が増えるプラス効果はないが、既存施設の魅力を磨き、集客増、売上増につながるあらゆる手段を総動員する。引き続きインバウンドへの認知度やアクセス手段の向上、国内のお客様に向けては体験価値向上などを強化する。また、若いスタッフや現場の柔軟な発想を活かしてお客様が来たくなる施策も色々仕掛けている。御殿場POで行っている花火は年々進化し集客につながっているし、他施設では大型ブランコの導入や、アスレチック施設を期間限定で導入した。もちろん、テナントミックスを充実させる我々本来の強みも強化する。

―― 24年度の売り上げは。
 山岸 大きな伸長を見込んでいるわけではないが、足元は好調で、確実にプラスは見込める。実はアウトレットに行ったことがないお客様は当社調べでは20~40代のコア層で15%程度いる。そういった人が一度訪れていただければ、リピーターになる余地がある。

―― 城陽市に新規施設を計画中ですが、それ以外でもありますか。
 山岸 今期から5カ年の中期経営計画がスタートした。その中で(仮称)京都城陽POの新設が確定しているが、これ以外の新設や増設計画も出てくるだろう。具体化はしていないが、現在の10施設にとどまることはない。また、デジタル戦略室も設けており、IT・DXを活用していく。業務の効率化のほか、ITを使ってお買い物のユーザーエクスペリエンスを一層上げていく考えだ。

―― 中期計画最終年度の施設売上高の目標は。
 山岸 4000億円半ばは達成できるだろう。決定したものではないが、新設や増設が加わってくると、5000億円近くを目指せる立ち位置になってきたことを実感する。

―― (仮称)京都城陽POの開業時期は。
 山岸 (仮称)京都城陽POは延伸する新名神高速道路のスマートIC付近に立地するが、高速道路の開通時期が示されていないので未定だ。だが、国内の大商圏を掴める国内向けの強みと、京都というインバウンドの聖地に至近なことから、国内顧客とインバウンド客両方狙える施設として非常に期待しており、DXなどの新しい取り組みを導入したい。

―― 今後の抱負を。
 山岸 アウトレットの市場規模は9000億円台に回復し、1兆円を狙える規模に達した。当社は4割以上を占めるトップシェアを握る企業として成長してきた。一方で、社会的な責任も大きくなってきており、SDGsやESGなどにも取り組んでいきたい。人手不足が深刻な中、当社の社員だけでなく、当社の施設で働いている従業員や管理会社などステークホルダーにとっても誇りを持って働ける施設としたい。
 当社は、利益や売り上げが拡大してきているが、社員数は約180人で、いい意味でのベンチャー感がある。ユニークなアイデアや柔軟性を維持していき、重厚長大な企業ではなく果敢に色々チャレンジできるような企業を目指していく。

(聞き手・新井谷千恵子記者)
商業施設新聞2560号(2024年8月27日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.443

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