商業施設新聞
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第442回

(株)横浜岡田屋 代表取締役社長 岡田伸浩氏


5つの館ごとに個性打ち出す
横浜モアーズは今秋低層階を改装

2024/8/6

(株)横浜岡田屋 代表取締役社長 岡田伸浩氏
 神奈川県内で商業施設「モアーズ」を中心に5館を運営する(株)横浜岡田屋(横浜市西区)は、「変わらないのは、変わること。」を掲げ、変化と個性ある施設づくりを進める。各施設で施設の顔やキャラクターをつくり出すべく様々な取り組みを実施し、横浜では今秋に低層階の改装も計画する。今後の展開を代表取締役社長の岡田伸浩氏に聞いた。

―― 最近の状況から。
 岡田 2023年度(24年5月期)は増収増益だった。横浜モアーズの9階飲食フロアは、大規模リニューアルで半年ほど閉めており、大幅な減収を予想していたが、全体として前年を割ることはなかった。コロナ禍でも売り上げは落としたが、赤字になることはなかった。

―― その9階のリニューアルの状況は。
 岡田 テーマは「ちょっとリッチな飲食」。以前は“夜の食事の店”が多かったが、昼もしっかり食事ができる店舗を集めたことで、昼の来館が増えているし、夜は会食でも選んでいただける店を誘致できた。カウンター中心の6店を集めた「おいしいカウンター」はアクセントになっている。開業後の売り上げは改装前比140%で推移し、手応えを感じているが、これからが勝負。ファンをつくり、リピーターを増やしていく。お客様の様々なニーズに合わせて、いかに使っていただけるようにするかがカギだ。

―― コロナ禍を経て、今後の方向性は。
 岡田 モアーズの館はすべて異なる。場所ごとに個性、キャラを立てている。ずっと同じキャラでは通用しないため、常に変化が必要だ。08年に横浜モアーズで耐震補強や外壁の付け替えを行った際、内部は開放感をつくるため、吹き抜けを設けたり、通路幅を広げた分、売り場面積を約5%減らした。売り場が減っても施設の価値を上げるべくキャラを打ち出すために、1階はメンズファッションの2店を軸に顔を作った。案外、横浜駅周辺でビルに“顔”があるところは少ない。そして今秋、1~3階が変わる。横浜駅の中で一段とキャラを立てるため、改装を行う。
 横浜駅周辺には10以上の商業施設がある。ある調査によれば、横浜を訪れた際、立ち寄る商業施設は2カ所、正確には1.96カ所だという。激戦の選挙区のようなもので、2人しか当選しない。選んでもらうには付加価値を高めることだ。

―― その他のモアーズは。
 岡田 川崎モアーズは1フロア1テナント型の“駅前立体商店街”と位置づけており、ディスカウント店などそれぞれ強みを発揮している。川崎駅前でありながら小商圏で、お客様の中心はご年配者であり、地下2階の食料品売り場を16年に大きく入れ替えており、当面は大きな改装は考えていない。
 相模大野モアーズは「ジョイモアーズ」にリブランドした。駅前立地の特性を鑑み、物販よりもアミューズメントやシェアオフィスに舵を切った。外観も刷新し、リフレッシュした。

―― 横須賀モアーズシティは。
 岡田 この館は地域密着性が高く、7割がポイントカードのお客様で、まるで全館会員制ショッピングセンターのようでもある。リピート率も高い。横須賀は商圏人口が多くないのでターゲットを絞らずに、オールターゲットを包み込むリピート戦略を徹底してきた。毎週金曜日にポイントを3倍付与するため、金曜日は最も売り上げが高い。7年前に食料品売り場をリフレッシュしたほか、雑貨を充実させた。今秋に新店を誘致するなど常にリニューアルを行っている。

―― 横浜ハンマーヘッドは開業5年目に入りました。
 岡田 19年にオープンした翌年にコロナが蔓延した。正直、運も尽きたと思ったが、横浜市からワクチン会場の依頼があり、それまで施設のことを誰も知らなかったのが、コロナワクチン会場になったことで多くの横浜市民に認知された。開業3年目までの目標はハンマーヘッドの知名度向上だったが、おかげさまで達成できた。

―― リニューアルは。
 岡田 ハンマーヘッドはもっと楽しくなる。少しずつ手を入れており、今秋ユニークな店舗がオープンする予定で、もっと楽しくなるだろう。

―― 新しい商業施設は。
 岡田 当社にやって欲しいという要請は多い。ただ「規模は規模に負ける」と思っており、規模拡大は目的ではなく、横浜の開発でお役に立ちたいと思っている。ハンマーヘッドはそのチャレンジといえる。

―― 今後の抱負を。
 岡田 3つ掲げている。1つは社是でもある「変わらないのは、変わること。」にもあるように、できる範囲で常にリフレッシュを行っている。2つ目はハンマーヘッドをひとつのモデルとして、商業施設がどれだけ街を変えられるか、街を素敵にできるかにチャレンジしている。3つ目はリアル以外の道はあるのかを探りたい。リアル店舗の意味がなくなることはなく、リアルを追求していくことが大前提にある。来期から構想などに着手をする。


(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2556号(2024年7月30日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.442

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