(株)すかいらーくホールディングス(東京都武蔵野市)は、2025年12月期以降に出店攻勢を強める。5月に公表した新中期事業計画において、25年度(25年12月期)から27年度(27年12月期)までの3年間で国内は約300店、海外では約100店の計400店を新たに出店する目標を掲げた。同社は国内だけでもまだ1000店以上の出店余地があると見ており、今後は商業施設にも積極的に出店していく方針だ。同社執行役員で店舗開発本部 マネージングディレクターの梅木郁男氏に聞いた。
―― 25年度以降の3年間で国内外に計400店を出店します。
梅木 17~19年度にグループ全体で毎年80店程度を出店していたが、コロナ禍で20~22年度は出店を凍結していた。アフターコロナへと移行した23年度に黒字を確保できたこともあり、出店を再開させることとなった。
来期以降の出店数の増加に向け、店舗開発部を増強しており、すでに部署異動や中途採用などを通じて人員は2倍にまで増えた。最終的には3倍程度にまで規模を拡大させたい。
―― どの業態での出店に注力しますか。
梅木 「ガスト」「バーミヤン」、しゃぶしゃぶ食べ放題の「しゃぶ葉」が出店の中心になるが、コロナ禍に成長して出店を増やせるようになった業態がいくつかある。例えば「むさしの森珈琲」は、お客様に喜ばれ、かつ収益を確保できるブランドへと成長した。「とんから亭」や「chawan」といった業態も今後の出店の中核になるだろう。
―― 積極出店を進めていきますが、出店余地はどれくらいありそうですか。
梅木 国内だけで少なくとも1000店の出店余地があると試算している。まず、駅前立地だけで少なくとも400店は出店できる。関東圏や関西圏では私鉄沿線にも出店余地があり、地方ではコンパクトシティ化が進んでいることもあり、市街地周辺の店舗をもっと駅に近い立地に打ち換えることもできるだろう。例えば帯広のように、人口10万人以上・ドライブ商圏20万人程度の地方都市では複数業態を組み合わせることで400店以上は出店できる。
そのほか、新宿・梅田・なんばなどの高度商業集積地でもあと100店は余地がある。そして、年商200億円以上の商業施設だけでも100店以上は候補がある。商業施設はこれまでchawanやグループの「FLO PRESTIGE PARIS」、ニラックス社の運営するブッフェ業態が主な出店業態となっていたが、今後はガストやバーミヤン、しゃぶ葉でも出店したい。すでにお声がけいただいているところもある。
―― なぜガストやバーミヤンは商業施設に出ていなかったのでしょうか。
梅木 ロードサイドという立地を得意としていたというのがあるだろう。ただ、施設のリーシングが日常の業態に変化してきたことに加え、我々がガストやバーミヤンのブランドを磨いてきたことにより、商業施設に出しても受け入れられるようになってきているのではないか。
―― どういった施設を出店ターゲットとしますか。
23年11月にオープンした
「ガスト ららテラス TOKYO-BAY店」
梅木 「年商200億円」というのはあくまでも目安で、そこに該当する施設にだけ出店したいというわけではない。施設の規模というよりも立地を見極めて出店していく。例えば23年11月には、南船橋駅前の「三井ショッピングパーク ららテラス TOKYO-BAY」に出店した。このような大きな駅に直結、あるいは駅前に立地するショッピングセンターは魅力的だ。
―― 退店数はどの程度を見込みますか。
梅木 コロナ禍の3年間で相当数の店舗を閉めたので、不採算店舗の整理はある程度一巡した。今後は例えば道路拡幅や再開発などの外的要因による退店が1年で20~25店程度発生するだろう。加えて、地方中核都市における店舗の打ち換えが年10~15店ほど出てくると見ている。合わせても年間で30~40店程度しか発生しないので、ある程度の純増を確保できる見込みだ。
―― 海外でも3年間で100店を出店しますね。
梅木 台湾、アメリカ、マレーシアを中心とした東南アジア諸国での出店を加速させる。台湾は現在74店だが、23年に工場を新設し、200店までは広げられる体制が整った。SC内やロードサイドの店舗はいずれも好調で、最低でも毎年10店以上を出店していく。
アメリカとマレーシアではしゃぶ葉を展開する。現状、アメリカではシカゴの1店のみだが、27年までにフランチャイズ展開も含めて50店まで増やす予定だ。マレーシアでもしゃぶ葉の店舗を増やし、いずれは東南アジアの他の国にも広げていきたい。新規国への参入よりも、まずは特にアメリカやマレーシア・東南アジアにおいて、店舗を広げられる仕組みや体制を整えることに注力していく。
(聞き手/安田遥香記者)
商業施設新聞2553号(2024年7月9日)(8面)