(株)タカヨシホールディングス(千葉市美浜区)は、近隣の農家や地元の飲食店などに販路を提供する、地域の食の産直プラットフォーム型店舗「わくわく広場」の運営を行っている。最近は「あべのキューズモール」(大阪市阿倍野区)や「コレド室町3」(東京都中央区)といった都市型商業施設に出店し、(株)神戸物産とフランチャイズ契約を結ぶなど、業容を拡大している。わくわく広場の現状や今後の展望について、代表取締役社長の黒田智也氏に話を聞いた。
―― 貴社の沿革を。
黒田 1970年に前身の(有)高芳商事を設立し、事務機器の販売からスタートした。ガソリンスタンド、カラオケ、書店、ホームセンターなど様々な事業を展開し、その中でもホームセンターは数多く出店したが、在庫管理の負担が大きく、2000年に「ホームセンタータカヨシ清見台店」(千葉県木更津市)の一角に農産物の直売所を設けた。これがわくわく広場の始まりである。
清見台店で手応えを感じたことから、01年にわくわく広場の1号店として「八街店」(千葉県八街市)を開店した。当初は路面店を展開していたが、より多くのお客様に知っていただけるよう、09年よりショッピングセンター内への出店を本格化。17年からは店舗数が急増し、現在は「イオンモール」や「ららぽーと」などのSC内を中心に186店(5月末時点)を運営している。
―― わくわく広場の概要について。
黒田 通常は出店できない近隣の農家や地元の飲食店などに対し、販路を提供するプラットフォーマーとして出店している。我々は彼らを登録生産者と呼んでおり、登録生産者が自分で値段を決め、商品を店舗に納品し、陳列まで行うことを基本とする。登録生産者は営業時間内ならいつでも納品することができる。
当社はこの登録生産者に対して一定の手数料を頂戴する。店舗運営では当社がレジ業務や清掃業務を担当するが、包装や運搬も登録生産者が担うため、出店に伴う初期投資が抑えられ、店舗展開を加速できるという強みも持つ。
―― 店舗フォーマットは。
黒田 なるべく広い場所を出店候補地に考えているが、商業施設内店舗の店舗面積は20~100坪と幅広い。最大は「WAKUWAKU HIROBA Sprout ららぽーと立川立飛店」(東京都立川市)の120坪だ。それに対し、路面店は店舗面積が260坪の「鴨川店」(千葉県鴨川市)や390坪の「清見台店」(千葉県木更津市)など、大型店が数多く存在するが、平均店舗面積は300坪となる。路面店ではドラッグストアや100円均一店も併設している。
商品ラインアップは野菜、果実、惣菜、弁当、パン、和洋菓子が中心で、店舗によっては花や加工品を置いたり、肉や魚を扱ったりする場合もある。客層は40代以上の女性が多く来店するが、平日の昼間はサラリーマンが弁当を購入し、土・日は20~30代のファミリー層が訪れるなど、幅広い層のお客様に利用していただいているのが実情だ。
―― 都市型商業施設にも出店を果たしました。
黒田 3月に開店したあべのキューズモール店は、郊外の農家や大阪市内の飲食店などから商品が集まり、順調なスタートを切った。4月に出店したコレド室町3では「この立地でも成立するのか」と、デベロッパーから称賛の声を頂戴した。今後は東京23区、大阪市、京都市、福岡市などの都心にも出店し、各地域でドミナントを構築していく。
―― 神戸物産とFC契約を結ばれました。
黒田 既存の路面店を対象に売り場を有効活用するため、「業務スーパー」を展開する神戸物産とFC契約を締結した。業務スーパーは独自の商品や冷凍食品、わくわく広場は生鮮三品(野菜・魚・肉)に強みを持つ。開店時期は未定であるが、両店の強みを生かしたハイブリッド型店舗の出店を計画している。
―― 将来の展望をお聞かせください。
黒田 当社は今後も年間30店以上のペースで出店を考えており、最近は地下1階やグランドフロアだけでなく、2階やフードコート内への出店も果たすなど、出店場所はバリエーションに富む。23年に発表した中期経営計画では、積極的な出店を行い、最終期の27年9月期末に275店体制の構築を目指している。累計登録生産者数も24年9月期に3万人を超える見通しで、小売業ではなくプラットフォーマーとして、出店地域の農家や飲食店などの生産者を応援していきたい。
(聞き手・副編集長 岡田光)
商業施設新聞2549号(2024年6月1日)(5面)
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