(株)青木商店(福島県郡山市)は、「果汁工房果琳」などのジューススタンドを展開している。健康志向の高まりなどにも後押しされ、現在ジューススタンド事業で店舗数は180店以上となっている。ジューススタンド事業の現状や将来について、同社代表取締役会長の青木信博氏に話を聞いた。
―― ジューススタンド事業の始まりから。
青木 卸売り中心だった我々が、ジューススタンド事業を始めたのは2002年からだ。そのころ、日本では果物があまり売れなくなっていた。理由を調べると、家庭で料理をする時間がなくなり、それで果物が買われなくなっていることが分かった。そこで手軽に調理済みの果物が食べられるジューススタンドという業態を考え、02年6月に郡山市で1号店を出店した。
―― SCへの出店を積極的に行っていますが、その背景について。
青木 このジューススタンド事業も、始めて6年くらいの間はあまりうまくいかなかった。転機になったのは、08年にSC内へ初出店してからだ。このSC内の店舗が予想以上の売り上げを見せ、09年からSC内への出店を本格化した。その後店舗網の拡大を進め、12年には1年で58店出店するほどに店舗を増やした。16年に180店となった後、現在まで店舗のスクラップ&ビルドに注力している。
ジューススタンド事業の売上高は、19年度には68億円にまで達した。その後コロナの影響があり、20年度は55億円に落ち込んだが、その後は回復し、22年度はコロナ前の水準に近い67億円になり、23年度は70億円を超えた。
―― 商業施設側からの反応は。
青木 とても良く、新しいSCができるとスペースを空けておいたと言われるほどに浸透し、集客面でも期待されている。
―― 競合と比べての強みは。
青木 まず、国内でこれだけの規模で多店舗展開しているジューススタンドは我々のほかにあまりない。現在全国でジューススタンドは1570店ほど営業しているが、我々は店舗数では約11%、売り上げでは38.8%を占めている。
そのうえで強みを挙げるならば、我々は全店直営でやってきており、ジューススタンドでとても重要になる果物の熟度管理を適切にできるのが強みだと考えている。このように、どの店舗でも良い品質のものが提供できるようにしたいので、今後の出店についてもフランチャイズは考えていない。
―― 新業態などの試みは。
青木 23年10月に、新業態「一果房」の1号店を自由が丘に出店した。季節ごとに旬の果物を使ったジュースを提供し、ジュースで「季節感を味わう」ことをコンセプトとした業態だ。今後は1年くらいをかけて業態をブラッシュアップし、多店舗化も検討していく。
既存の業態については、現在「果汁工房果琳」のほかに「フルーツバーAOKI」など複数あるが、これは将来的には「果汁工房果琳」へ集約していこうと思っている。
―― 今後の出店方針を。
青木 やはりSCを中心とした出店を続けていきたい。出店にあたってはSCの規模と、SC内の立地が重要だと思っている。過去フードコート内にも出店したことがあったが、フードコートが賑わう昼の時間帯はジュースへの需要が少なく、うまくいかないこともある。結果として、1階などで展開する食物販コーナーに隣接するような立地がベストだと思っており、そうした出店場所が確保できるかが重要だ。
店舗数については、今後また拡大していこうと考えており、出店のチャンスがあれば積極的に出店していく。10年くらいかかると思っているが、なるべく早く300店規模まで拡大したい。出店する業態は「果汁工房果琳」が中心になると考えているが、将来的には例えば郊外立地は「果汁工房果琳」、都心では「一果房」のようにすみ分けを図っていく可能性もある。
海外出店については、以前タイのバンコクに出店したこともあったが、コロナの影響などで撤退した。今後はまたチャンスがあればやりたいと思っているが、まずは伸びしろがある日本国内で丁寧に事業を展開していきたい。
―― 最後に抱負を。
青木 日本は世界的に見て、1人当たりの果物消費量が少ない。我々はジューススタンドを通じて日本人の果物消費を増やし、ひいては日本人の健康にも貢献していきたい。また我々も、長期計画として32年ごろまでに、全社の売り上げを現在の約3倍となる300億円程度まで増やしたい。
(聞き手・山田高裕記者)
商業施設新聞2546号(2024年5月21日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー