名古屋でユニークな串揚げ店を展開する創作串揚げつだは1月16日、「創作串揚げ つだ 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー店」をオープンし、東京進出を果たした。代表の津田猛氏は、東京・大阪のミシュラン一つ星の串揚げ店「六覺燈」で料理人を10年務め、2013年に自身の出身地である名古屋市に「創作串揚げ つだ 本店」を開店。津田氏は東京でもオリジナリティ溢れる「つだ流」の創作串揚げを通じて、串揚げ文化の認知拡大を目指すという。津田氏に聞いた。
―― 串揚げに携わるきっかけは。
津田 大阪の料理学校を卒業後、フランス料理店で5年修行したが、六覺燈で食べた串揚げに衝撃を受けた。串揚げは、単に衣をつけて揚げて、ソースをつけて食べるだけと思っていたが違った。その時串揚げをやりたいと思い、24歳から始めて30年が経つ。
―― 串揚げの魅力とは。
津田 奥が深く、一つひとつの手仕事が大きい。仕事は和食の感覚で、うちの串は生でもいただける素材を使ったものが多い。大阪では串揚げの高級店も4割程度ある。ただ大衆のイメージが強く、全国的には料理における地位が低く見られる傾向にあり、このイメージを払拭したい。
―― 東京進出について。
津田 これまで13年に本店をオープンし、18年には名古屋市に「金シャチ横丁店」をオープンした。今回、森ビルから声がかかって東京に進出することになった。名古屋では名が知られていたが、東京では無名ということもあり、もっと有名なお店にお声掛けした方がいいのではと申し上げたが、「津田さんでお願いしたい」とのことだった。このまま名古屋でやっていけば安泰だが、名古屋で働く若いスタッフに東京で学べる場所をつくりたかった。また、うちが東京に進出して少しでも串揚げ業界全体を盛り上げる一助になればと考えたし、私が六覺燈の“おやっさん”から学んだ技術を残したい。串揚げはこんなこともする、こんな新鮮な素材を使うということを世に知らしめたい。
―― 具体的には。
津田 串揚げは“液体”以外揚げられる。以前カレーチェーンの社長が来店して、「うちのカレーとコラボしないか」と誘われたことがある。こうしたオファーが少なくない。1つ試しているのが日本酒。日本酒をアイスクリームにして揚げたり、日本酒でソースをつくったりしている。
―― それをこの店から発信していくのですね。
津田 ユニークなことを東京から発信していけば注目が集まる。名古屋の店舗ではメニューにシイタケとエビのミンチの串揚げがある。生姜と胡麻を載せると小籠包のような食感になる。東京でも提供したところ、名古屋以上に多くの反響があった。意外な食材との組み合わせが注目される。もちろん美味しくなければ意味がない。美味しくてかつ意外性。つだに行ったら、こんな串揚げが出てきた。他店にマネされてもいい。マネできないものをやっていくし、業界が盛り上がればいい。そこで注目されて、人が増えれば。串揚げは名古屋で料理人を募集しても人が来ない。東京で知られることで、この料理をやってみたいという人が出てきてくれれば色々なことができるし、店舗も増やせる。
―― 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー店を出店してどうですか。
「創作串揚げ つだ
虎ノ門ヒルズ ステーションタワー店」
津田 ハイクラスのお客さんが多い。オープン当初はどうなるかなと思っていたが、昼は2回転、夜も予約で埋まっていることが多いので、あとは客単価がついてくるようにしたい。初めてのお客さんはあまりお金を使わない。今は1万円弱だが、ワインが動きだすと客単価向上が期待できる。
―― リピーターに期待ですね。
津田 2回目の来店を大事にしたい。1回目は美味しいねといってくれるが、2回目が本当の勝負。1回目の感動を超えるか、最低限、前回の水準を維持しなければならない。気に入ってもらえれば3回目の来店が期待できる。3回目はさらにメニューに変化をつけて楽しませたい。
―― 今後の出店は。
津田 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー店で基盤をつくりながら、次の出店地候補となる東京の街を見ていく。虎ノ門ヒルズでしっかりできれば、どこからお声がかかっても大丈夫。同時に名古屋も強化することで、両方発信できる力をつけていかなければいけない。また、今54歳だが、60歳くらいまでに海外出店したい。そして64歳までにニューヨークに店を構えたい。
―― 本場の大阪へは。
津田 大阪への出店は最後になると思う。串の文化が強い大阪は、中途半端になると失敗する。十分な準備が必要だ。
―― 今後の抱負を。
津田 名古屋のスタッフを東京に呼び、色々学ばせたい。そして5月ごろから面白いことを始めたい。そのころになると1回目のお客さんのリピートが始まる。お客さんの会話の内容から、今食べたいものを先回りして食材を変えることもある。これは若いスタッフにはできない。お客さんの反応や会話を聞きながら、メニューを変更できるスタッフづくりをしていかなければならない。料理も人材育成もより高みを目指したい。
(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2540号(2024年4月2日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー