商業施設として「Frespo(フレスポ)」「BiVi(ビビ)」「BRANCH(ブランチ)」の3ブランドを展開してきた大和リース(株)が、公園の活性化や商業施設の再生といった新たなフィールドに挑戦している。「既存のマーケットは壊さずに、新しい商環境を創出したほか、施設の見直しを行った」と語る同社 取締役常務執行役員の森内潤一氏に、現況や今後の開発方針について話を聞いた。
―― 2023年度(24年3月期)の動向からお願いします。
森内 コロナ禍の3年間は厳しかったが、23年度は客足も戻り、商業施設の売上高は19年度並みに回復している。ただ、ピーク時の18年度と比べると、お客様の消費行動はまだ少し戻っていない。そのコロナ禍を経てお客様の消費行動や価値観は大きく変わってきた。最近は商業施設のあり方そのものが問われており、今後はMD、環境、運営の3つを変えていきたい。
―― これまでの開発実績について。
森内 商業施設のデベロッパーを本格的に始めてから今日まで約30年が経過しており、近年の10年間で70施設/総延べ55万m²を開発し、1100億円を投資した。うち公共用地の利活用は26施設/総延べ14万m²を数え、610億円を充ててBiVi5施設、BRANCH7施設、公園4施設をオープンしている。
公園は17年の都市公園法改正を機に、主にカフェなどの収益施設の開発を中心として、総敷地16万m²に約40億円を投資してきた。新しい商環境が創出できる一番面白いエリアと捉え、すでに27公園が稼働中であり、建設中の12公園も含め、2年以内にすべての公園がオープンできるだろう。公園というフィールドは異なるものの、商業施設のエキスはノウハウとして適用できると考えている。23年度は、商業施設の中に室内公園を整備した「BiVi新さっぽろ」も開業した。
―― 直近の開発案件は。
森内 宇都宮市が公募を実施した「東部総合公園整備運営事業」のPark-PFI事業者に当社を代表とするグループが選定され、アーバンスポーツをテーマに、『公園』を作っている。ライトライン(次世代路面電車)の駅前に位置し、飲食店やカフェを設けるほか、スケートパークやBMXパークといったオリンピック競技にもなるようなスポーツ施設を開発する。商業施設としてはカフェ、介護施設、保育園のほか、インキュベーション施設やキッチンカーなど、多種多様な機能を集積している。
―― 23年度には「フレスポ三次(みよし)プラザ」も開業していますね。
森内 広島県三次市の旧CCプラザは、地域生活のインフラとして長年地元住民に親しまれてきたが、築50年と耐震性の問題などにより建て替えを行った。出店テナントはCCプラザから引き続き出店する店舗に加え、カテゴリーキラーとして「無印良品」や「フレスタ」などを新たに導入し、フレスポ三次プラザとして再生を図った。
こうした再生すべき施設は当社だけでも全国に30カ所以上ある。特に1995~2000年に開業した施設は再投資しなければならない機会が訪れている。当社はこの問題をチャンスと捉え、再生ビジネスをより本格化させる方針だ。将来に向けて、地域の「インフラ」として、施設のリニューアルも多くなるだろう。
―― 新規商業施設の開発方針について教えてください。
森内 ターミナルエリアや都心部エリアに展開するBiViの開発を強化し、BRANCHのコミュニティが生まれるようなBiViを作っていきたい。買い物の場と様々な機能を融合させる複合型商業施設を想定しており、市街地再開発事業への参画や、SPCの設立によるPFI事業への参入も視野に入れている。
―― 将来の抱負をお願いします。
森内 今後は商業施設の価値を数値化するため、SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)などの活用を検討していく。流通建築リース事業部の売上高は21年度に1000億円に到達し、デベロッパー事業はそのうちの6割を占めたが、将来はこのデベロッパー事業単独で売上高1000億円を狙いたい。
(聞き手・副編集長 岡田光)
商業施設新聞2537号(2024年3月12日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.430