ロイヤルホールディングス(株)(東京本部=東京都世田谷区)は、2013年に「天丼てんや」の海外1号店をオープンした。現地法人のフランチャイズとして、国や地域に合わせた店舗・メニュー開発を続けている。今後は主力のファミリーレストランチェーン「ロイヤルホスト」のシンガポール進出も控える。同社執行役員で海外事業担当の藤岡聡氏に聞いた。
―― 海外における店舗数と出店立地から伺います。
藤岡 9月末時点でタイに12店、フィリピンに11店、香港に6店、シンガポールに4店、中国に1店の計34店を展開している。立地としてはモール、つまり商業施設内がほとんどだ。特に東南アジアは年中気温が高く頻繁にスコールも起きるため、路面店よりもモールの方が適している。
―― 客層は。
藤岡 現地のミドルアッパー層がボリュームゾーンになっている。また、特にタイやフィリピンではファミリー層の利用が目立つ。そのため、日本の店舗よりもテーブル席を多く設けている。海外進出当初はカウンター席も一定程度設けていたが、実際にいらっしゃる層を見て配置を変更した。
―― 提供メニューは。
藤岡 マーケットごとにアレンジしてメニューを決めている。タイやフィリピンでは現地の食材を使った天ぷらが好評である一方、香港やシンガポールでは日本の食材が好まれる傾向にある。天丼のたれは、すべての国で日本から持って行ったものを使っている。
天丼単体でというより、麺とのセットやサイドメニュー、ドリンクも合わせて注文される方が多い。特にそば、うどん、そうめんなどの日本の麺はよく売れる。ファストフードというよりレストランとしての利用が多く、日本に比べて滞在時間も長くなっている。
―― 設備については。
藤岡 オートフライヤーをはじめ、日本で使っている厨房設備を海外店でも導入している。地域によっては人手が足りないところもあるため、機械化によって質の高い商品を誰でも調理ができるような環境を整えている。
海外事業を考え始めた時点で、てんやはすでに国内で100店以上を展開しており、オペレーションがパッケージ化されていた。その点もてんやを優先的に海外へ持っていく決め手になった。このほか、てんやを積極的に海外展開しているのは天ぷらという日本を代表する和食を展開している業態であることも大きかった。
―― 展開地域の拡大は。
藤岡 十分な市場調査を行い、現地のフランチャイジーとコミュニケーションを取りながら、新しい国や地域を開拓していきたい。既存店のある東南アジアや東アジアのみならず、欧米や中東も視野に入れている。大きな華人コミュニティのある欧米都市や中東での引き合いもあったが、コロナ禍で話し合いが中断してしまったことなどもあり、具体的な計画はこれからだ。
―― すでに出店されている中国はいかがですか。
藤岡 ロックダウンが一段落した矢先に処理水問題が起き、日本の食材を扱う業態のため苦戦している。出店の計画も滞っており先行き不透明な状況が続くだろう。
ただ、国内と同じくらいの店舗数を海外でも確立していきたいという思いは変わらない。次期中期経営計画にも海外事業の具体的な目標を盛り込むつもりで、現在案を練っている。
―― ロイヤルホストの海外進出も決まっています。
藤岡 双日(株)との合弁会社を通じて、シンガポール1号店を24年中に開業できるよう、現在準備を進めている。日本と同じように料理も店づくりも質を大切にするため、まずは直営での展開を想定している。日本の店舗の良さは持ち込むが、合わせて現地に受け入れてもらえる打ち出し方をする必要があり、その手法を模索している。
グローバルハブであるシンガポールの店舗をショーケースとすることで、こちらが予想していなかった国・地域からの引き合いもあるかもしれない。シンガポールでは複数業態を展開することで、他の国での事業機会にもつなげていきたい。
―― そのほかの業態の海外展開について教えてください。
藤岡 4~5業態はすでに引き合いがある。様々な業態を組み合わせてグループ全体で国ごとの事業基盤を構築する構想もある。それには少なくとも1つの国につき10店はあったほうが良い。いずれにしても、日本流をそのまま持っていくのではなく、メニューや考え方を現地に馴染む形でアレンジする必要がある。
日本のマーケットは縮小していくため、海外でどれだけ基盤を広げられるかを考える必要がある。複数業態のチェーン展開や運営受託など、当社グループが国内で得たあらゆるノウハウは、海外展開への足がかりとなるだろう。
(聞き手・編集長 高橋直也/安田遥香記者)
商業施設新聞2526号(2023年12月19日)(4面)