商業施設新聞
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第407回

(株)ヤマト 取締役社長 清水一成氏


買参権生かした回転寿司を展開
3年後に売上高100億円へ

2023/11/21

(株)ヤマト 取締役社長 清水一成氏
 (株)ヤマト(千葉県鴨川市)は、魚介類を漁港から直接仕入れられる買参権を保有し、これを強みとして外食、卸売り、観光、小売りなど幅広い事業展開を行っている。主力の外食事業は回転寿司の「南房総やまと寿司」など複数業態を有し、高品質な魚介類を使った本格回転寿司や各種メニューを提供する。同社取締役社長の清水一成氏に聞いた。

―― 足元の状況は。
 清水 直近2年の売上高は2022年5月期が約54億円、23年5月期が約68億円で、23年5月期にはコロナ前の実績を大きく超え、大幅な成長ができた。23年5月期の事業別売上高構成比は外食が約37%、卸売り、観光、小売りが各約21%で、外食事業の構成比が高い。
 24年5月期も足元は堅調に推移している。新型コロナにより人々のライフスタイルが変化し、我々の店舗が主戦場とする郊外立地の飲食ニーズの高まりなどによって、お客様に支持をいただいているのも好業績の要因の一つだと思う。

―― 漁港の買参権を強みとした事業展開ですね。
 清水 売上高構成比は外食が高いものの、事業の軸は卸売りだ。当社の強みは6つの漁港に買参権を持ち、18の漁港をほぼ毎日チェックして、新鮮な魚介類を漁港から直接仕入れ、これを競争優位性として、外食、観光、小売りの各事業に卸している。その中でも活魚を扱い、生きた魚を水槽が積まれた活魚車に載せ、毎日豊洲に運んでおり、それらは料亭などの飲食店やホテルなどに渡っている。

―― 外食事業について。
 清水 業態別では回転寿司の南房総やまと寿司や「回転寿司やまと」、海鮮居酒屋「山傳丸」をメーンに展開しており、店舗数は回転寿司業態が13店、居酒屋業態が2店。回転寿司は千葉県を中心に東京都や茨城県にも進出している。

―― 回転寿司はリブランディングを進めています。
 清水 以前の店舗外観は、一目で寿司屋と分かりづらかったため、外観やロゴの変更などに特化したリブランディングを行っている。例えば、店名は地名を入れたほうがどこで生まれた店なのか分かりやすいと思う。当社の場合、千葉・南房総出身の会社なので、南房総を店名・ロゴに入れた。そのほかにも、メニューを書く魚札も手書きで毎日書き換えるようにするなど、店舗の空間づくりにも注力している。

―― 9月、千葉・館山に旗艦店を開業しました。
旗艦店である「館山本店」の店内
旗艦店である「館山本店」の店内
 清水 今回の旗艦店(館山本店)の周辺には、「回転寿司やまと館山店」「富浦店」の既存2店があるため、オーバーストアにならないかなど館山に出店するのは少し不安だったが、好調なスタートを切った。南房総やまと寿司という店名へ変更した際、南房総エリアに旗艦店・本店が必要だと思い、従来は1号店である「館山店」を本店扱いにしていたが、老朽化が進んでおり、今回、新店をオープンした。
 店内は95坪、席数135席で、カウンター席、テーブル席、個室など多様な座席を設け、大きな窓から海が一望できる。観光立地であるため、旅の食事で回転寿司屋に行くなら、普段と違う空間で食事を楽しんでほしいという想いで店舗を設計した。

―― 今後の出店について。
 清水 千葉県、東京都、神奈川県にまたがる東京湾岸エリアを重点エリアと位置づけ、年2店ほどのペースでしっかりと出店を行っていきたい。東京湾岸エリアを重点とするのは、物流の関係もある。当社は千葉県内に「千葉ロジスティクスセンター」(千葉市稲毛区)、「君津ロジスティクスセンター」(君津市)の2つのセンターを持ち、自社物流で行っているため出店可能なエリアも限られる。

―― 新ブランドや新業態の構想は。
 清水 個人的に考えているのは、今、JR海浜幕張駅前に回転寿司ではない「寿司やまと」があり、これをブラッシュアップした寿司居酒屋業態みたいなものに挑戦したい。当社には海鮮居酒屋の山傳丸があるが、山傳丸もリブランディングし好調に推移している。山傳丸より寿司屋に寄せた業態としてチャレンジしてみたい。
 また、観光事業で「房総の駅 とみうら」を運営しており、その中で丼業態の「とみうら亭」を展開しているのだが、このノウハウを生かし、1000円前後で食べられる丼店などをやっても面白い。

―― 店舗数や売上高の目標は。
 清水 店舗数は特に目標を定めておらず、前述したとおり年2店程度、旗艦店の南房総やまと寿司と派生業態として寿司居酒屋や丼店など、機敏な出店をプラスアルファとして出店していきたい。売上高は、23年5月期が68億円だったものを、3年後に100億円を目指したい。着実に店舗が増えていけば、他の事業とのシナジーも生かして十分狙える。

(聞き手・副編集長 若山智令)
商業施設新聞2551号(2023年11月14日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー

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