東京・浅草六区エリアにある商業施設「東京楽天地浅草ビル」は、コロナ禍の2021年6月から段階的に大規模リニューアルを行い、ユニクロを核に横丁などを導入した複合施設に生まれ変わった。運営する(株)東京楽天地の三橋洋太氏に、リニューアル後の状況や復活したインバウンドの動向などを聞いた。
―― コロナ前後の東京楽天地浅草ビルについて。
三橋 15年12月に開業した地下2階地上13階建ての複合商業施設。開業時は1~4階に地域の食や魅力を集めた「まるごとにっぽん」が出店し、高層階は「リッチモンドホテルプレミア浅草インターナショナル」を展開している。まるごとにっぽんは好評を博していた一方で、それぞれの地方の店舗が直接出店するという形態から店舗運営にかかる負担も大きいという問題があった。そうした中コロナにも見舞われ、結果全館を一度閉館しリニューアルすることとなった。
―― 21年6月にリニューアルしました。
三橋 核となるのは1~2階に出店したユニクロで、売り場は計700坪となっており、周辺では最大級の広さだ。これだけの規模、そして路面店で出店できるということで、テナントの出店意欲もかなり高かった。また「まるごとにっぽん」についても、生鮮や特産品、調味料などの食分野を扱う部分は残し、1階に出店している。食については需要が根強く、リピーターも多かったため継続して営業することにした。また3階には飲食テナントも導入し、スシローは特に好調だ。
―― 22年7月には4階もリニューアルしました。
三橋 「食と祭りの殿堂 浅草横町」が開業した。近年横丁は様々なメディアなどでも取り上げられ、話題になっていることから、苦戦していた空中階での集客を狙うために導入を決めた。浅草横町は運営会社が一体的に運営しており、店舗の入れ替えなどでもフレキシブルに対応できるのも魅力だった。エンターテインメント性溢れる内装が特徴で、導入後はメディアで取り上げられるなど話題にもなり、下町の浅草らしい空間が創出できたと思う。オープン当初よりは落ち着いているものの今も好調だ。
―― コロナからの平常化はかなり進みましたが、施設の集客は。
三橋 リニューアルオープン後、しばらくはやはり苦戦していたが、22年ごろから復活が始まり、冬ごろになると目に見えて来客が増えてきた。インバウンドの増加が主だが若い人も増えており、直近では施設全体の月次売上高は前年同月と比べて2~3割増となっている。リニューアルにあたっての目標は超えており、まだまだ伸びしろはあると考えている。
―― 上層のリッチモンドホテルの推移は。
三橋 コロナ禍では他のホテルと同様に厳しかったが、インバウンド受け入れ再開前からリッチモンドホテルはリピーターが多く、一定の数値で推移していた。インバウンドが復活した現在、客室稼働率はコロナ前の水準には少々及ばないものの、客室単価が上昇しており好調だ。
―― インバウンドが本格的に復活しましたが、浅草の様子は。また東京楽天地浅草ビルにはどう影響していますか。
三橋 浅草のインバウンドはかなり復活していると思う。まだ中国人観光客は完全に戻ってきていないが、欧米などからの観光客はかなり多く、コロナ前と遜色ない賑わいを見せている。
東京楽天地浅草ビルに関して言うと、元々浅草六区エリアはそれほどインバウンドが多いエリアではなく、影響は比較的限定されていたが、インバウンド受け入れ復活後はインバウンド比率はやはり上がっている。
―― 浅草と東京楽天地浅草ビルの今後について。
三橋 ここ10年で浅草という街はすごく変わった。インバウンドの増加という要素がとても大きいが、浅草はインバウンドだけの街ではなく、下町とも言われたころから地元の住民の方々も多くいる。我々もそういった地元の方々と、インバウンドの双方に訴求し、また周辺の色々な店舗などとも連携しながら良い施設を作っていきたい。
(聞き手・山田高裕記者)
商業施設新聞2517号(2023年10月17日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.421