電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第97回

(株)堀場製作所 代表取締役会長兼社長 堀場厚氏


半導体ガス流量制御装置でシェア50%突破
滋賀と京都に新拠点を建設

2014/10/31

(株)堀場製作所 代表取締役会長兼社長 堀場厚氏
 1953年の創立から60周年を迎えた(株)堀場製作所(京都市南区吉祥院宮の東町2、Tel.075-313-8121)は、自動車、半導体、医用、環境・プロセスなどの分野に計測・分析機器を提供している。「おもしろおかしく」を社是に掲げる研究開発型企業で、積極的に新技術開発に取り組むチャレンジ・マインドを社風とする。代表取締役会長兼社長の堀場厚氏に話を聞いた。

―― 多様な分野に計測・分析機器を提供しています。
 堀場 当社は自動車向けを主力に、環境・プロセス、医用、半導体、科学の各分野に様々な計測ソリューションを提供している。自動車用は世界トップシェアのエンジン排ガス測定装置で世界の自動車メーカーのエンジン開発に貢献しており、半導体分野ではシリコン基板へのガス蒸着プロセスで欠かせない流体制御装置「マスフローコントローラー」で世界トップシェアを誇る。環境・プロセス用には工業用水質計や煙道排ガス分析装置など、医用では病気のスクリーニングや経過観察、健康診断向けに計測・分析機器を、科学用には最先端研究開発で用いる分析・解析装置などを提供している。

―― 足元の業績動向について。
 堀場 14年度上期(1~6月)の売上高は前年同期比13.8%増の679億3400万円、営業利益は同42.5%増の56億6100万円と増収増益だった。上期は全体的に好調に推移し、半導体用機器を扱う堀場エステックの需要動向も安定している。通期は売上高を前年比8.6%増の1500億円、営業利益を同9.2%増の150億円と予想している。

―― 自動車用計測装置事業の現状を。
 堀場 リーマンショック後、国内自動車メーカーの新規投資は低調だったが、欧米メーカーに対抗するために戻してきている。当社の次世代排ガス測定装置「MEXA-ONE」が採用を拡大しており、既存モデルからの更新需要も獲得している。また、欧州では9年前にドイツのMCT(自動車計測機器)事業を買収したが、これが欧米でのブランド価値向上につながり、既存製品においても相乗効果が出ている。

―― 半導体用機器事業について。
 堀場 近年、半導体市況の低迷によって厳しい状況が続いたが、その間にも投資を続けてきた効果が出てきた。12年度後半以降、業績は好調に推移している。13年に投入したマスフローコントローラーの新製品がデファクトスタンダードの地位を獲得し、13年度のシェアは前年の43%から48%に向上した。さらに、14年度上期には台湾、韓国メーカーへの採用が進んだため、シェア52%を獲得した。

―― 国内で相次いで開発、生産拠点を新設している。
 堀場 当社は海外での事業展開を拡大している一方で、研究開発型企業として国内における研究開発機能の強化は必須だと考えている。13年末には京都府福知山市で半導体マスフローコントローラーなどに用いる次世代の流体制御、気化技術の研究開発を行う拠点を稼働させた。当社として初めての防爆構造を持ち、本社工場から高精度ガス流量計測設備や製品開発用実験設備の一部を移設した。次世代ハイテク材料に対応した機器を開発している。
 また、(独)産業技術総合研究所(産総研)やアメリカ国立標準技術研究所(NIST)などの国プロ級研究機関における採用例も多く、研究開発型企業としての役割を果たしている。この拠点を新設したことがキーコンポーネントとしての信頼性向上につながり、半導体用機器事業の業績改善にも寄与している。
 14年2月には滋賀県大津市のびわ湖工場敷地内で新たな開発・生産拠点の建設に着手し、15年秋の完成を予定している。投資額は約100億円で、当社としてはこれまでで最大の規模となる。ガス計測技術の開発機能を京都本社から移管・集約し、技術革新を図る。具体的には、新たな生産方式の導入によって生産能力を2倍、納期を3分の1にすることを目指している。移管後の京都本社では、科学・医用・環境・プロセス分野における開発・生産の技術力向上に向けた設備投資を行う予定だ。
 半導体用機器では、堀場エステック本社工場(京都市南区)に半導体センサーの開発・生産拠点を建設しており、14年内の稼働を予定している。これまで3カ所に点在していたクリーンルームを集約し、マスフローコントローラーなどに用いるMEMSセンサーを生産する。MEMSから機器までの一貫生産体制を構築し、より小型・軽量で高性能な計測機器の開発を加速させる。移管後の本社工場のスペースは、水質・科学分析機器や医用機器の開発に用いる予定だ。

―― 中期的な目標について。
 堀場 売り上げ3000億円規模の会社を目指したい。ニッチ分野での世界一を獲得し、複合技術の開発も進める。規模に見合ったM&Aや他社との提携についても進めていきたい。

―― 10月30日から開催される「電子デバイスフォーラム京都」の組織委員会副委員長に就任されています。京都企業としてコメントを。
 堀場 京都でフォーラムイベントが開催されることは、非常に素晴らしいことだ。独自技術でグローバルに展開する京都企業の特色が複合的に評価されたものと考えている。テーマについても、将来性のある分野にフォーカスして選択されている。今後のビジネス発展につながる場として大いに期待したい。


(聞き手・特別編集委員 泉谷渉/中村剛記者)
(本紙2014年10月29日号6面 掲載)

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