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日建設計の近藤彰宏氏が佐久総合病院の地域完結型医療体制を講演


開院した佐久医療センター、重粒子線センターなども視野に増築用地確保

2014/10/21

近藤彰宏氏
近藤彰宏氏
 (株)JPI(日本計画研究所、東京都港区南麻布5-2-32)は9月24日、「『地域完結型医療体制』を目指す分割再構築事業と佐久医療センターの建築計画」をテーマにセミナーを開催した。救急・専門医療を担う佐久医療センターの設計を担当した(株)日建設計の近藤彰宏氏(設計部門設計部長)を講師に招き、老朽化と高度医療へ対応するため、長野県厚生農業協同組合連合会(JA長野厚生連)佐久総合病院を2つの病院に分割する再編事業を紹介した。佐久医療センターは3月1日に開院し、患者に最も近い第一線医療や慢性期医療に対応する佐久総合病院本院は改修および一部新築を経て2016年度の完成を予定している。

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 佐久総合病院(長野県佐久市臼田197)は、全国21道県に111病院を運営するJA厚生連の前身である地域農業会が1944年に開設した。翌45年に同病院の礎を築くことになった若月俊一氏が外科医長として赴任し、院内に劇団部を結成。健康をテーマとした演劇や寸劇を地域で紹介し、医療サービスを享受する大切さや、人々との絆を育んできたという。
 50年には長野県厚生農業協同組合連合会が発足し、59年から八千穂村全村健康管理が始まった。82年には病床数1003床の巨大病院となり、83年に救命救急センターに、97年に災害拠点病院に指定され、05年から信州ドクターヘリの運行を開始した。その後、08年に長野県、佐久市、JA長野厚生連の3者協議で、佐久総合病院再構築に関する知事裁定に合意。これを受けて同病院の機能分割、施設整備が行われている。
 同病院は、佐久医療圏と上小医療圏で約7割の外来外科患者を受け入れており、隣接する上小医療圏からは全体の15.4%の救急搬送患者数がある。また、県内に配備されたドクターヘリは信州大学付属病院が中南信エリア、佐久総合病院が東北信エリアをそれぞれ担当しており、県内広域から患者を受け入れている。
◆「地域完結型医療体制」への転換
 最近の一般的な病院再編というと、複数ある基幹病院を統廃合するものだが、佐久市の場合は1つの病院を2つに分割することとした。これは「いつでも、どこでも、誰でも必要なときに必要なサービスを受けられる」ことを目標に医療を行ってきた結果、「二足のわらじ」に例えられるように第一線の医療から専門医療まで包括的に担ってきたが、医療の高度化、専門分化と診療圏拡大の流れの中で、従来の医療の提供が行き詰まり、「病院完結型医療体制」から、多施設連携による「地域完結型医療体制」への転換を余儀なくさせられた結果である。
 一方、佐久市においても、同病院を中心に市街地が門前町のように形成されたこともあり、全面移転や新築ではなく、佐久医療センターの新築と、すでに形成された街およびインフラを極力活用する佐久総合病院本院の改修・一部新築という、2つの病院への機能分化を選択した。
 再構築で特に問題点となったことは、既存病院の老朽化と、診療圏の拡大、一般医療と専門医療の混在、また病院・診療所の廃止やスタッフの高齢化による周辺医療の機能低下などが挙げられる。これを受けて病院の分割再構築では理念である「佐久病院は農民とともにの精神」を設計・施設整備に一貫・徹底して反映させた。
◆センターで救命救急/がん/脳・心臓/周産期
 佐久医療センター(佐久市中込3400-28)では、柱となる4つの診療機能を盛り込んだ。(1)救命救急医療機能は、重症および複数の診療領域にわたる重篤な救急患者に対して高度な救命救急医療を24時間体制で提供。(2)がん診療センター機能は、佐久圏域における地域がん診療連携拠点病院として、内科・外科・放射線科・緩和ケアなどの医療チームにより集学的治療を実施。(3)脳卒中・循環器病センター機能(血管治療機能)は、外科治療および薬物・カテーテル治療を含めた内科治療を速やかに安全に実施するとともに、リハビリ、栄養部門などとの連携による総合的な治療を実施。(4)周産期母子医療センター機能は、ハイリスクの母子を24時間体制で受け入れ、妊産婦・胎児・新生児の管理・治療を産科・小児科などのチームで実施するものである。
 一方、同センターと連携する本院には7つの特徴として、原因究明の総合診療と高齢者に配慮した診療連携、小児診療、こころのケアセンター、健康づくり活動、腎・糖尿病外来、回復期を担う地域包括ケアなどを導入する。これらをつなぐ支援機能として、総合相談センターと、リハビリ総合支援センター、テクノエイド支援室、臼田のまちづくりへの協力などを充実させるとしている。
◆センターはハイケアフロアを一直線上に配置
 佐久医療センターは、高度急性期医療を担い、病床数は450床、地域医療支援病院を目指す。敷地約12万9000m²の南側に正面門、北東側に進入路を設けている。施設はRC・S・SRC造り地下1階地上4階建て(高さ20m制限)延べ4万9843m²。南から北に向かって病棟、中央診療棟、外来棟、立体駐車場が配置されている。
 建物のコンセプトは、A.急性期病院にふさわしい明快な機能構成、B.広大で緑豊かな敷地の特性を活かした療養環境、C.医療の進歩や医療需要の変化に対応する成長する病院、D.スタッフが誇れる働きがいのある病院、E.佐久地方の気候に根ざしたエコホスピタル、F.様々なリスクへの備えを徹底した安心・安全な病院を挙げている。
 特に注目されるのは、急性期病院の明快な機能構成として、救命救急医療の対応・処置を横一直線につなげるハイケアフロアを地上2階に導入したことである。救急車両が到着する外来診療棟と救急病棟、中央診療棟の検査、手術、ICU・HCUなど、さらに分娩室のある周産期病棟まで横並びに配置する動線を採用した。また各病棟はナースステーションを中心に2方向にL字型で展開して見通しを確保。各フロアは3看護単位で構成、3フロア合計で、ICU、HCUと合わせ450床となる。
 1階はがん病棟2看護単位と将来の病棟1看護単位。さらに中央診療棟のがん化学療法、放射線治療、緩和ケアへとつながる。3階は循環器・脳疾患、内科・小児科・感染症、周産期の3看護単位の病棟、リハビリ、管理部門が配置されている。
 特に病棟については、L字型の外角部分にナースステーションを、内角部分は外光を取り入れるデイルームをそれぞれ配置し、中央から両側に伸びる通路、廊下を広めにとってナーシングホールやユーティリティスペースとして確保した。また各病室の窓側には曲面形状の斜壁を採用して隣室や向かい側病棟との干渉を防いでいる。
◆重粒子線なども視野に増築スペース確保
 医療の進歩や医療需要に対応した施設の増築計画では、外来棟や診療棟は各種ニーズに沿ったフレキシブルな使用が求められており、正四角形で柱を減らした大スパン構造、シャフトやダクトなどを当初に仕込み、配置する配慮がなされている。また、敷地北側の駐車場を拡張可能スペースとして、施設東側にも増築スペースを確保し、外来棟の増築や、診療棟における重粒子センターや放射線部門の増築に対応するとともにメディカルツーリズム対応病棟の用地も確保している。敷地中央を南北に結ぶ連携軸を設定して、既存施設の西側に外来、診療、病棟の建て替え用地を設けており、フレキシブルな敷地レイアウトを採用した。
 このほか佐久地方の機能に根ざした取り組みでは、病院施設の基本的な色彩は優しく、威厳のある、飽きのこない「アースカラー」を採用して、同地域で産出する鉄平石を建物の外装に使用した。また、シンボルツリーのヒマラヤスギを正面ゲート前に移植し、桜並木も配置した。スタッフらが森で拾った苗を植樹する「どんぐりからの森づくり」も行われた。さらに敷地内にはランニングコースも整備され、患者や病院関係者の憩い、ストレス発散、散策の場所となっている。
◆改修・増築の本院は309床で16年度竣工
 一方、佐久総合病院本院は、現地で既存施設の改修と病棟を一部新築する。病床数は309床で、診療科目は総合診療科、一般内科、地域ケア科、国際保健医療科、小児科外来診療、眼科、皮膚科、形成外科、精神科、心療内科、リハビリテーション科、歯科、口腔外科、人間ドック、健診、健康管理センターを標榜する。16年度の竣工を予定している。
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