電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第91回

(株)ジェイデバイス 代表取締役社長 仲谷善文氏


売上高 倍増の2000億円狙う
車載比率は45%に拡大
海外市場の開拓がカギに

2014/9/19

(株)ジェイデバイス 代表取締役社長 仲谷善文氏
 国内最大手のOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly&Test)企業である(株)ジェイデバイスは2012年以降、富士通グループならびにルネサス エレクトロニクスの国内後工程拠点を相次いで買収し、売り上げ規模が1000億円に迫っている。さらに、20年までに売上高2000億円を目指し、単独で世界トップ3入りを視野に入れている。旺盛な事業意欲を見せる仲谷善文社長に足元の事業環境や今後の事業展望を伺った。

―― 足元の事業環境から伺います。
 仲谷 最終製品によって強弱はあるが、総じて堅調に推移している。特に車載関連が良い。14年3月期は事業買収もあって前年同期比ほぼ倍増の900億円弱を売り上げた。営業利益も計上できた。

―― 下期の見通しはいかがですか。
 仲谷 ゲーム機器やデジタルスチルカメラ、白物家電などから構成される民生関連は季節要因もあって若干弱含むが、車載が引き続き好調に推移するため、全体では堅調だろう。
 なお、大株主の米アムコーに合わせて、当社の決算期も12月に変更する。14年は4~12月の変則決算となるため、売上高は前年同期に届かないが、12カ月累計に補正すると前年同期比約10%の成長となるだろう。

■車載で稼ぐ
―― 売上高に占めるアプリケーションで車載が増えているようですね。
 仲谷 数年かけて車載市場向けを強化してきている。前年度実績では全体の45%以上に上った。ナビゲーション向けを含むインフォテインメントからABSやエンジン周りの重要・保安部品向けなど、あらゆる分野のECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)に搭載される半導体の組立・テストを手がける。製品でいうとアプリケーションプロセッサー、マイコン、ASIC、アナログ、パワーなどのパッケージ&テストを行っている。車載用途以外では、家電向け3割弱、通信1割と続く。

―― 今後注力していく分野は。
 仲谷 車載用途を軸に強化する。アナログICやパワーも攻める。特に車載用IGBTに本格参入したい。また、現在の海外売り上げ比率が小さいため、積極的に海外顧客を開拓する。アムコーと協働して、米チャンドラーならびにフランスに営業スタッフを常駐させ、当社の製品を拡販する。中長期的には海外で20%を売り上げたい。また、現在の主要顧客である東芝、富士通、ルネサス以外の開拓も積極的に行う。

■PLP、低コスト・高信頼性を両立
―― 新型パッケージの拡販にも注力しています。
 仲谷 PLP(パネル・レベル・パッケージ)というパッケージで、従来WFOPと呼んでいたものだ。プリント基板の製造工程を活用して生産する。ワークサイズが500×400mmの大判となるため、製造コストを引き下げられる。金属板を使って放熱特性も改善できるため、既存のBGAやQFPよりも高信頼性が確保できる。現在、国内外の複数顧客と通信用途に展開しようとしている。15年春にも根上工場で量産を開始する。信頼性に優れるため、車載用途への展開も期待している。

―― 設備投資計画を教えて下さい。
 仲谷 常に年間売上高の10%を充てる。14年は装置の更新・維持や増産を検討する。特に新型パッケージであるPLPの量産設備を構築するほか、Cuワイヤー対応装置の導入などを計画している。買収したルネサスのシンガポール工場からの装置の移設も15年下期までには完了し、熊本工場を拠点として車載用マイコンの増産も実施する。

■M&Aも積極行使へ
―― 中長期的に2000億円を売り上げ、業界トップ3入りを経営目標に掲げています。
 仲谷 20年までに実現したい。現在の売り上げから約1000億円上積みしないといけないが、このうち半分の500億円は既存のビジネスの延長線上で稼ぐ。残りはM&Aを国内外で行使して成長したい。海外での売上高拡大には、海外拠点の買収が有効だ。当面の経営目標として、17年にはグロスマージンとして20%を目指す。

―― 国内に13カ所の生産拠点を運営しています。統廃合の可能性は。また、アムコー岩手を傘下に収めましたが、その狙いは。
 仲谷 常に最適生産を念頭に入れている。そのため、需要を見ながら組立装置やテスターの入れ替えなどを常時行っている。必要とあらば、さらなる工場の確保もあるだろうし、統合もあるかもしれない。ただし、現時点で決まっているものはない。
 アムコー岩手の子会社化は、大株主のアムコーの意向でもある。国内市場はジェイデバイスが担うというのが基本だ。近いうちにアムコー岩手の名称にも「ジェイデバイス」を冠することを考えている。他の製造拠点も「ジェイデバイス」に一本化することを検討している。

―― アムコーとの今後の資本関係は。
 仲谷 現在、当社の60%の株式を所有してもらっている。しかし、経営と資本はしっかりと分けており、現ジェイデバイスの経営のガバナンスは維持されている。15年度以降にアムコーは株式比率をさらに高めるオプションを持っているが、現状の経営方針および体制の変更はないことに同意している。今後もしっかりとジェイデバイスとして経営体制を維持しながら、日本のお客様をサポートしていく。それがジェイデバイスのミッションだ。


(聞き手・本紙編集部)
(本紙2014年9月17日号1面 掲載)

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