(社医)財団 大和会(佐藤光史理事長)の東大和病院(大高弘稔院長、東京都東大和市南街1-13-12、Tel.042-562-1411)は、「東大和病院附属セントラルクリニック」(桑田雅雄院長)を9月1日にオープンした。これに先立ち8月23日に内覧会を開催した。
大和会では、先行して2013年7月に新しい本部棟(南街2-2-1)を完成させており、セントラルクリニックは、東大和病院の敷地南側、都道5号(青梅街道)を隔てた本部事務局跡地1129m²を利用して新設した。地下1階地上3階建て延べ2259m²の規模となっており、フロアは地下が画像診断検査、地上1階が総合受付、診察受付、診察室、処置室、採血室、2階が健診センター、婦人科、栄養相談室、検査室(内視鏡、超音波、心電図、生理機能)、3階が会議室。
大高院長は、セントラルクリニック新設の背景について、「急性期病院としての機能向上による、超音波検査、CT、DSA、内視鏡、特にMRIといった検査機器の増設の必要性、特に難易度の高い手術に伴う手術室不足解消のための増設の必要性、健診センターの利用者増加およびアメニティー低下の解消、高度医療を行うために剖検室と細菌検査室設置の必要性が高まっていたが、平成元年、9年、13年の増築により、東大和病院の敷地内では増築が不可能であり、病院の機能の分離、移動により解決することにした」と説明する。
「より一層の地域医療への貢献を果たすため、初期臨床研修病院と地域医療支援病院の承認を獲得する目標で、このためにも剖検室と細菌検査室は必須の設備だ。これらは、病院内に併設することが義務付づられているため、東大和病院からセントラルクリニックに移設した部門の跡を改修して整備する。救急受け入れ能力は満たしているため、今後、紹介率・逆紹介率のアップと2つの設備の整備により、承認が得られると見込んでいる」と大高院長は話し、さらに、承認による医師育成の強化や地域医療の砦としての役割の拡充に意気込む。
東大和病院ではここ数年来、外来診療は紹介、専門医療、救急、夜間の患者を優先しており、敷地は離れるものの、セントラルクリニック開業後もこの診療体制を継続し、地域の診療所で対応できる診療機能を増やすということはなく、病院と一体的に運営する。
両施設の外来について、「セントラルクリニックは『かかりつけ医療』を主体とする開業医の先生方と相互に補完できるような『専門医による専門外来を中心とした医療』を担う。クリニックのみ、婦人科と健診センターを備えている。東大和病院とクリニックの両方にある診療科は、消化器科、循環器科、心臓血管外科、神経内科、脳神経外科、糖尿病内分泌内科、放射線科で、クリニックには、紹介状を持たない患者を受け入れる。東大和病院には、このほか、呼吸器科、外科、整形外科、形成外科、泌尿器科を残した。これは、処置が多く人手をより必要とする診療科であること、また、整形外科は市内に診療機関が多いため、紹介患者のみを対象に絞る意味もある。地域の医療機関の先生方には、これまでと同様、紹介患者は病院の外来で対応するということをお知らせしている」(大高院長)。
主な設備は、3.0テスラMRI、320列マルチスライスCT、全自動血圧計、血圧脈波検査装置、スパイロメーター、自動視力計、オージオメーター、フルオート非接触眼圧計、無散瞳デジタル眼底カメラ、自動身長計付体組成計、超音波骨量測定装置、超音波診断装置、マンモグラフィー、消化管内視鏡などを備える。内視鏡は上部検査専用で検査装置は2台体制。
CTは、心臓や脳全体を1回転わずか0.275秒で撮影する高速スキャンが可能で、開口径78cmのワイドボアによって、装置の圧迫感を軽減する。高画質を保ったまま被曝量を最大75%削減可能である。MRIは、微細な脳血管の描出、肝臓や胆道、関節など全身の病変がこれまで以上に明瞭に検出できる。臓器の血流や脳の機能を調べることも可能である。
健診センターについては、13年度の大和会年報によると、東大和病院の健診センターの受診者が年々増加してきており、13年度に約3000人が受診した。完成したセントラルクリニックの健診センターは、広いスペースと最新機器の導入で、より多くの受診者の受け入れが可能となった。また、外来患者と健診受診者との動線や待ち合いロビーなどを区分してあり、健診センターには昼食などがとれるラウンジを設置し、快適な時間の提供に努めている。安らぎを演出するため、1階は東大和市の市木のケヤキ、2階は市花のツツジを基調とした色を外壁などにあしらっている。
東大和病院は、13年度の大和会年報では、04年度の1日平均外来患者数716人に対し、05年度からは500人台へと減少、11年度からは500人を割り、11年度469人、12年度434人、13年度428人まで減少した。紹介患者は、13年度の年間外来患者数12万5856人(再診含む)のうち8687人(新規)で、13年度の逆紹介件数は5770件。救急車による患者は、13年度に5892人を受け入れており、内訳は脳神経外科2325人、消化器科922人、整形外科802人、循環器科642人と続くが、脳神経外科が4割を占めている。
「外来が大幅に減少したものの、高度な診断・治療が求められる救急患者や紹介患者に報酬の高い医療を施すことで、医業収入は増加しており、また、医師と機器のリソースを効率的に配分でき、さらに、医師をはじめとする医療スタッフも高度医療に専念できることで、さらにスキルが上がる」(大高院長)。