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日揮の金光 健氏、「海外医療事業展開と課題」を講演(1)


「北原茂実氏との出会いが海外病院事業参入の契機、政府の成長戦略が後押し」

2014/4/28

金光 健氏
金光 健氏
 JPI(日本計画研究所)主催の特別セミナーで、日揮(株)事業推進プロジェクト本部の理事・副本部長の金光 健氏が、「日本政府の成長戦略『医療パッケージ輸出』の先駆的事業に位置づけられた、日揮(株)の海外医療事業展開と課題、キーポイントの開示~カンボジア救命救急センター病院プロジェクトの概要~」と題する講演を行った。金光氏は、日揮に入社以来、一貫して医療・福祉プロジェクトを担当し、また、PFIの(株)メディカルマネジメント松沢の取締役でもある。国内において多くの病院開発事業を手がけた同社が、(医)社団 北原国際病院と展開する海外での新病院プロジェクトの詳細が聞けるとあって、多くの聴講者が集まった。

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◆安倍内閣の肝いりでカンボジアへ医療提供
 金光氏は、まず、「成長戦略としての海外医療事業展開と現状」の説明から入った。アベノミクスの第3の矢「新たな成長戦略」に位置づけられた「医療の国際展開」の一環で、2013年11月16日、安倍首相自らがカンボジアのフン・セン首相と会談し、日本の医療システムをカンボジアに提供する覚書を交わした。これにより、過去4年間にわたり現地で調査活動を続けてきた(医)社団KNI(北原国際病院)と、10年から事業参画を模索してきた日揮によるプロジェクトが大きくクローズアップされた。
 経済産業省は、日本式医療拠点の構築過程において、事業性調査(現地制度調査、実証調査、マーケティング調査)、次いで、案件形成(体制構築、事業計画立案、資金調達)から、さらに、事業化(現地法人設立、運営準備、運営開始、現地人材育成)の一部の段階に至るまで支援対象としている。対象とする地域の考え方として、日本が強みを有する先進医療(がん、生活習慣病、検診など)が未整備な地域、医療費を負担できる豊富な中間層が存在する地域、現地政府との良好な協力関係構築が可能な地域としており、主な地域はASEAN諸国、ロシア、中国、中東など。

◆3案件が事業化進展、13年度調査は29案件
 13年度の事業性調査事業における支援案件は、15カ国29件(12年度からの継続9件、13年度新規20件)に上っており、いずれの案件にも有力な医療法人や企業が参加している。12年度までの事業化調査事業の成果が事業化に結びついた事例としては、日揮と北原国際病院の「カンボジアにおける救急救命医療センター」のほか、「ロシア(ウラジオストク)における画像診断センター」、「インドネシアにおける日本式クリニック」がある。このほか、海外進出の事例として、セコム、豊田通商、現地法人の3者によるインドの病院計画を紹介した。
 医療のアウトバウンドに積極的な経済産業省に対し、厚生労働省は、13年11月に「医療法人の事業展開等に関する検討会」を開催し、医療法人が海外で病院を運営する事業について、(1)本来業務である、病院等の業務に支障がない範囲内で行われること、(2)海外においても、適正な内容の医療を行うことを条件に認めてはどうかといった議論がなされ、近く、医療法人が海外へ進出しやすくする施策が打ち出されるという。

◆実績と海外インフラをベースに海外病院へ進出
 金光氏は、続いて、日揮による「海外の病院事業参入の背景」について説明した。日揮のこれまでの医療・福祉分野のプロジェクト実績は250件に上り、主なものとして、神戸先端医療センター、北里研究所病院、岩内協会病院、東京都長寿医療センター(PM:プロジェクトマネジメント)、松岡病院、沖縄リハビリテーションセンター病院、旭中央病院(PM)、富良野協会病院、衣笠ホーム(特養ホーム)、加納病院(病院、サ高住)、進行中の慶應大学(PM)などがある。
 今回の海外病院事業参入の背景として、これまでの(1)EPCプロジェクト(設計・建設・機器調達)、(2)コンサルティング、(3)PMとCM(コンストラクションマネジメント)、(4)PFI事業といった実績をベースに、事業フィールドの多様化を進める企業理念・風土と、北原国際病院との出会いや政府の成長戦略があり、カンボジアプロジェクトが具体化した。
 日揮は、海外でのエネルギーの大規模開発で有名な国際企業であり、従業員9000人のうち、国内は5000人、海外が4000人、売り上げの9割を海外ビジネスが占める。一方で、病院PFI事業でも、病院事業のコアの「医療」は手がけられない。こうしたことから、13年12月に機関決定がなされ、海外での病院運営に踏み切った。
 事業フィールドの多様化において、医療施設/シルバー施設は、ライフサイエンスビジネス部に位置づけられており、このうち病院PFI事業では、SPC(特定目的会社)の(株)メディカルマネジメント松沢を設立し、東京都精神医療センター(診療14科、890床)の再整備運営事業を手がけている。事業内容は、09~13年に施設整備業務(新棟5万5143m²・690床、社会復帰棟9949m²・200床、職務住宅110戸)と、12~27年にわたる15年間の維持管理・エネルギー供給業務、運営業務(医療事務、検体検査、給食など)、調達業務(医療機器、薬品、診療材料)までで、総事業費は約700億円。ライフサイエンスビジネス部では、このPFI事業のほか、カンボジアに代表される新興国の病院経営の展開、中国の高齢者ケア施設の整備運営、さらに、重粒子線治療の輸出を検討している。
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